第2話 その名はベンジャミン
「ミナサン、ボウリョク、イケナイヨ、
(黒鬼、怖ぇーーー)
義経は心底ビビッていた。
内心、食われるイメージしか湧いてこない。
暗闇に浮かぶ、白いギョロ目と歯、黒い巨体にボロきれを適当に巻き付け、右手に血だらけの薙刀、恐れるなというほうが無理である。
そんな黒鬼が義経に
「ダイジョウブダヨ~コワクナイヨ~」
と近づいてくる。
泣いたっていいじゃない、こんな夜は。
茫然としていた平家の追手も、いつまでもボーッとはしていない。
「義経のクビを取り、悪鬼を討伐したとなれば、我らの名も上がろう、かかれ!」
「おう!」
あるものは嫌々、あるものは褒美を期待し、まぁとにかく一斉に斬りかかる。
「
神様がはぁ~っと溜息をついたような気がした。
薙刀一振り3人他界……。
あっという間に血の河原。
「
言いながら、刀やら粗末な鎧やらを剥ぎ取る黒鬼。
泣いているのか、笑っているのか、さっぱりわからない表情である。
一通り剥ぎ取り終わると、胸で十字を切り祈りを捧げると
クルッと義経のほうに振り返り
「
と義経をヒョイと肩に乗せズンズンと歩き始めた。
鼻歌なんぞ歌いながら、硬直した義経は大人しく肩で揺られてシクシク涙が止まりませんでした。
黒鬼はフンフ~ンとご機嫌で、時折Hey! Hey!と薙刀を振り回す始末。
都の外れで、火を起こし暖を取る黒鬼。
(あぁ~食われる……焼いて食われる……)
義経はすっかり思考がネガティブになっていた。
逃げようなんて気も起きないくらいだ。
「コレタベル
差し出したのは京の菓子である。
大人しく差し出された菓子を食べる。
「うまい」
「
嬉しそうに微笑む黒鬼。
月明かりに照らされる黒光りする筋肉、大きい目玉と白い歯。
「ネルトイイネ
(悪鬼ではないのか……)
「名は、黒鬼殿、名はなんと申すのか?」
「ン?ナ?
「
「ベン!
「べんけい……弁慶か」
「Yes、
「我は、牛若……いや、義経じゃ」
「ヨシツネ、OK!
(とりあえず、食われはしないのか)
義経は少し安心したのか、コテンと眠りに落ちた……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます