しゅぎョ~。

 いつものバス停にて――


「暑いわね~」

 月夜が四〇度に迫る気温の中でそう洩らす。


「こんなヒにガッコ~なんてゴ~モンだよね! ゴ~モンっ!!」


「いや。アンタが――まあいいケド……」

 月夜が暑さのあまり途中であきらめる。


「こんなカコクなヒにはレイボ~ついたクルマでむかえにきて、そのままレ~ボ~のきいたヘヤでマスクなんかしなくてもいいクリ~ンル~ムでゲ~ムしたいよねぇ~」


「いや勉強と宿題しなさいよっ!」

 今度はそう言う月夜。


「それにお坊さん比べたらこんなの全然あまいほうみたいよ」


「ん?」


「だって、この暑さの中でマスクしながらお経あげるんだよ! なんか意識が遠のく時があるって……」


「なにそれ?」

 イブキが月夜のスマホを指しながら、


「盆時期の坊さんあるある二〇二〇年」


「そんなのあるのっ!?」


「今年は今年ならではのネタ満載よ」


「ヘェ~……どんな?」


「手作りのマスクをもらうケド、花柄や水玉だったりで袈裟や法衣に合わせにくい」


「なるほど……ホ~イとかにあいそ~なのってキンのイトでシシュ~したホ~オ~とかだよね!」


「贅沢ね。あとは湯飲みとかで冷たいお茶をだされるケド、ペットボトルのほうが、もち帰ったり自分の好きなタイミングで飲めるからありがたい」


「なんかあわないね」

 真っ黒の法衣に金糸などで彩られた横にペットボトルがさがってるのをイメ~ジしながら、


「もっと合わないのあるわよ。ハンディファン持参の坊さんとかいるんだって」


「あのネイルとかかわかしたり、あっついときにカオにカゼを『ぶぉぉぉぉぉ』ってするアレ?」


「それ」


「ふ~みゅ……そこはシント~ヲメッキャクしてほし~とかだよねぇ~」


「ほら、これに比べたらちょこっと学校いって宿題やるなんて軽いわ軽い。牛丼の前の紅ショウガよっ!」

 そんなよくわからに事をいう月夜。


「いや。イブキさんボ~さんじゃないし、シュギョ~もしてないから」

 坊さんの苦労が心に届かないイブキだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る