きょ~ぼ~カ。

 いつものバス停にて――


「各社いろいろ発表を始めたわね」

 月夜がグルメ系アプリの中にチラホラと出始めた肉関係の記事を見ながら、


「ステ~キハウスはなぜかこのタイミングで食べ放題? きっとこれはきたる肉の日へのテストをしていると見た! 二九日には全店で食べ放題を実行しようとしている違いないわっ!」

 一部店舗限定で行われているサ~ビスをそんな曲解する。


「メガビックに『にくカツにく』ハンバ~ガ~業界も動き出したわね……」

 グルメ系アプリ内の多数をしめるバレンタイン企画には目もくれず、肉情報ばかりを見ながら、そんあ事をいう月夜の隣では、


「ナラこ~えんのシカさんがキョ~ボ~かしてるっ!?」

 イブキがそんな記事を読んでいた。


「あれが……」

 イブキは青い顔したまま昔、鹿の大群に追い回され、ツノでつかれ、タックルをくらい、草の上に『スベシ!』と仰向けのまま転がされたヒドイ記憶が蘇る。


「コロナウィイルスのエ~キョ~でチュ~ゴクのヒトがゲキゲン! シカにセンベ~をあげるヒトがいなくなり――あ~……そんなエ~キョ~でてんだぁ~」


「シカたちがうえている……そ、それはキケンだよぉ……」

 イブキは瞳を爛々と輝かせ、口から荒い息を吐きながらにじり寄ってくる鹿をイメ~ジする。


「いつもはひとなっつこく、オジギをするようにクビをふりながらよってくるシカが――いまではヒトをみるとトツゲキしてくるほどヨユ~がないほどうえているとゆ~……シカさん……」

 記事を読みながら、


「月夜カしちゃったんだねぇ~」

 隣で殺気を纏いながら肉の情報を漁ってる月夜と飢えた鹿を重ねるイブキだった。

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