どいツ。

 いつものバス停にて――


「二〇一〇年にあった、幻のメニュ~牛キムチクッパが再開?」

 月夜がグルメ系アプリの中にあった、そんな記事を読んでいた。


「約一〇年前にあった、メニュ~を再開か~……そんなのあったかしら?」

 月夜がカウンタ~席に背がとどくかど~かといった幼女の頃の記憶を思い起こす。


「ダメ! 思い脱せないわ。出てくるのは肉のおいし~コトとキツネ色のタマネギ、汁を吸ったゴハン……」

 中年男性や部活帰りの高校生にまじって牛丼をがっつく幼女の月夜。


「幼かったからね~……ほかのメニュ~を知ろうともしない頃だったわ~」

 そんな十代後半のセリフとは思えない事を言っている月夜の隣では、


「はぁ~……あっちゅい~……」

 梅雨があけ、日差しの強い空を見上げ苦しそうに洩らす。


「まいにちまいにち、トンデモナクあっついぉ~……ヒトがカツド~していいオンドじゃないって……こんなヒはスズシィ~へやでコ~ラのみながらゲ~ムするのがいいんだよぉ~」


「まだ、マシなほうよ。フランスでは四五度越えたって」


「うわぁ~……さっすがおフランスはミライにいきてんなぁ~」


「ドイツでも42度だって」


「へェ~……」

 力なくそんな返事をする。


「しかもドイツってほとんど冷房ついてるトコないって」


「でも、ドイツってシゴトをホ~キするケンリとかあるんでしょ?」


「そなのっ!?」


「そ~そ~。ガッコ~も25どこえたらかえされるって、ドイツいいなぁ~……」


「でも、家とかでも一部商業施設いがいは冷房ついてないらし~わよ」


「ドイツいくない。やっぱしニホンかぁ~……ナツヤスミ10ガツまでにしてくんないかなぁ~……」

 強い日差しにそういうイブキだった。

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