か。

いつものバス停にて――


「ウナギの蒲焼き天ぷら?」

月夜がグルメ系アプリの中にあった、天丼屋チェ〜ンの新メニュ〜を見ながら、


「へぇ〜……こんなん出るのね〜……」

皿に盛られた商品画像を見ながら、


「ウナギの蒲焼き……タレの味ばっかり思い出されて、ウナギの味が〜……うぅ〜……」

月夜がウナギの味を思い出そうとしている隣では、


パチン!


「はっ!」

イブキがやたらキレのある動きで何かを捕まえたり、自身の身体を叩いたりしていた。


「うぅ〜……カがぁ〜……」


「なにしてんの?」


「カ! カがいっぱいイブキさんのチを……」

言いながら腕を『ペチンっ!』と叩く。


「ほら」

仕留めた蚊と吸われた血がついた手を見せながら、


「アカイエカね。夜間から明け方まで吸血活動する日本三大蚊のひとつよ。昨日の夜からがんばって吸血活動してたみたいね」

潰れた蚊を見てそういう月夜。


「もうイッピキっ!」

今度は飛んでいる蚊を掴む。


「ヒトスジマカね。本来は夕方に活動するのだケド……珍しいわね〜」


「あぁ……またすってるよっ‼︎」

イブキの腕にとまって吸血する蚊。


「ふんすっ!」

腕に力をこめて筋肉を硬直させ刺した口を抜けなくしてから、指でつまむ。


「つかまえたっ!」


「チカエイカね。どこにでもいる人間ともっとも近い蚊」


「かいせつしてないで、タイショほ〜おしえてよっ!」


「そ〜ね〜……」

月夜は少し考えてから、


「刺されやすい人の近くにいる事?」

集中砲火を浴びるイブキを見ながら、そういう月夜だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る