しんねん。

 いつものバス停にて――


「おは〜あけおめ〜ことよろ」

いつもの制服姿ではなく晴着姿のイブキが同じく私服姿の月夜に朝と新年のW挨拶をする。


「ことよろ〜。じゃ行こっか」

私服に茶色の地味な紙袋を提げた月夜がそういって向きを変えた時――


かさ……


わずかに妙な音ととに、


「つ、月夜なななな、なにこれ?」

イブキがトンデモない物を見たかのよ〜な反応をする。


「ち、ちが……こ、これは……」

月夜が持っていた紙袋を背に隠すようにしながら慌てる。


「ミコふくだったよっ⁉︎ 月夜ミコさんになるのっ⁉︎」


「ちが……こ、これはアルバイトで……」


「アルバイトで、きるのっ⁉︎ そんなイカガワシイアルバイトしてんのっ⁉︎」


「ちが、ちがうったらぁ!!」

 月夜は「あうあうあうあうあう――」と取り乱しながら、


「これは――これは……その……お店の正月スペシャル衣装よっ!」


「――って、よくかんがえたらミコさんのイショ~ってそんなにイカガワしくないかぁ~……かくゲ~のエイキョ~でミコ服=やぶけるってイメ~ジが……」


「う、ウチだってこんなの着るの恥ずかしいんだから……」


「う~ん……」

 と、少し思案した後、


「すこし、やぶけてるほ~がミセもハンジョ~するんじゃない?」


「しないわよっ!」

 そう言いながらそ~っと手を伸ばしてきたイブキからさらに遠ざかる月夜だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る