なつやすみ。

 いつものバス停にて――


「う~ん……」

 炎天下の猛暑の中、『ミ~ンミ~ン』と蝉の声に悩まされながらイブキは険しい表情をしている。


「セケンはナツヤスミなのに……」


「そうね~」

 うっすらと汗を浮かせながらもそう答える月夜。


「ナツだよ! ナツ!! うみいったり、プ~ルいったりしたらウンメ~のヒトとであえるかもしんないんだよっ!!!」


「いや……でもテストで赤点……」


「そんなコトはど~でもいいんだよっ! セイセキよりもカレシだよ月夜!!」


「いや……赤点とったのアンタだけなんだけど……」

 と、いう呟きも耳に届かず。


「とくにキョ~はなんかハクバにのったオ~ジさまが――」


「もし、この日本で白馬に乗った男が話しかけてきたらウチがドロップキックすると思う」


「だからウミいこ! うみ!!」


「だから学校っ! 担任もウチも夏休み返上で付き合ってんだから少しは真面目に――」

 そういって丁度よくやってきたバスまでイブキを引き摺って行く月夜。


「はなせ~! はなしてくれタイサぁ!!」


「だれが大佐じゃ! お盆はさすがに休みにするからそれまでがんばろうね~」

 ズルズル引き摺った後「ふん!」と腰に力をいれてイブキをバスに放り込む月夜だった。

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