まくら。

 いつものバス停にて――


「ふんふんふんふんふ~ん♪」

 イブキが背表紙がリング状になっているノ~トを持って上機嫌に鼻歌を奏でていた。

 いや、見ると、上機嫌とは違うようだ。短髪の髪はところどころハネ、朝の陽光の中ではやや疲れた髪質が露呈し、うっすらと目の下にクマのようなものもある。


「どうしちゃったの? ノ~トみてニヤニヤして」

 月夜がボロボロの姿に反し機嫌の良いイブキに問いかける。


「うん? これね~」

 イブキが持っているノ~トを左右にフリフリと動かしながら、


「これね~ノ~トがマクラになるんだよ~」

 イブキがメイクでも隠しきれない疲労の濃い顔でニッコリと微笑みながら、


「マクラ? マクラって、寝る時に頭の下に敷くあの枕?」

 月夜がどうみてもペラペラで枕としては厚みが足りない、ノ~トを見て小首を傾げる。


「そうなんだよ。このヒョ~シのトコからク~キをおくるとプク~ってふくらむんだよ! しかも、ヒョ~シもハダざわりのイイそざいだし、きょ~はコレつかってジュギョ~チュ~にねるタメにきのうは、てつやでゲ~ムしたんだ!」


「……いや、授業中に寝るなよ」

 あきれ顔でそう突っ込む月夜だった。

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