月夜の知恵袋。

 いつものバス停にて――


「きの~さ――」

 イブキがふと思い出したようかに話題を振る。


「ん~?」


 月夜がスマホの自撮り機能で身だしなみを整えながら応える。


「きの~さ、おと~さんとおか~さんがいなかったから、ゆ~しょくをインスタントにしたんだケドさ~」


「インスタンってカレ~とか?」


「ううん。カップラ~メン」


「あぁ~」


「それで、それでね――あっ! カップラ~メンじゃなくってカップヤキソバだった」

 イブキが細かい修正をしながら、


「あれってさ~ラ~メンとちがって、おゆ→タレのじゅんなんだね」


「そ~だよ。じゃないと麺と一緒にソ~スまで流れちゃうからね――って、まさか」

 月夜がだいたい先の展開が読めたといった表情になり。


「うん。イブキさんヤキソバつくるのはじめてだったから、さいしょにぜんぶいれちゃって……」


「あ~……それはやっちゃった系だね」


「でしょ? もっとシンセツにフタのウラにはりつけておおきく『おゆをいれたあとにソ~スをいれてください』とかかいておいてほし~よね」

 イブキがプリプリと怒りを顕わにしながらそんな事を言う。


「まあ……そんな事するとコストかかちゃって値段あがちゃうから――って、そのヤキソバど~したの?」


「ん?」

 イブキが一瞬、不思議そうな顔をした後に、


「そんなのすてちゃうにきまってるじゃん!」

 イブキがなんでそんな事聞くの? ってゆ~ような表情をしながら言う。


「えぇ~!!」

 月夜が信じられないといった表情で声を上げる。


「そこからまだ復活可能なのにっ!!」


「えぇ~!? ムリだよっ! ぜったいムリっ!!」


「それがいけるんだよ! 中のお湯と入れちゃったソ~スと麺を普通の鍋に移して、10分ぐらい煮込むと良い感じにできあがるのにっ!」


「そ、そうなんだ?」


「ちょっと伸びてるケドそれが、また良い感じになるんだよ」


「よくそんなコトおもいついたね」

 イブキの言葉につらそうな表情を浮かべ、


「何回かやってしまうと、なんとか復活できないか、いろいろ試行錯誤するようになちゃったのさ……」

 自嘲気味そう呟く月夜だった。

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