せ~じんしき。

 いつものバス停にて――


「イブキ!? イブキじゃない!!」

 イブキが朝の気怠い雰囲気を纏わせていると、隣にいた女性がそんな声を上げた。

「ん~?」

 視線のさきには――成人式だからだろうか? 着物をきこなし、黒髪を結い上げた晴れ着姿の女性は――綺麗な黒髪に体型をだしにくい着物であるにもかかわらず、あきらかに大きいとわかる胸、普段から着物をきこなしているのか無駄のない佇まい――イブキが寝ぼけて頭の回り悪い頭――いつもより頭の回りの悪い頭をフル回転させて辿り着いた人物。

「月夜?」

「なに? 気付いてなかったの?」

 そう返す仕草も大人の余裕のようなモノが感じられる。

「だって、そんなテッカテッカのグロスすきじゃなかったじゃん」

「そりゃ~成人式の日ぐらいは、気合いいれるわよ‼︎」

「せ〜じんしき?」

「もう! まだ子供のままなつもり今日から成人なんだからシャキッとしなさいよ」

「そんなコトいわれても……」

「全く身体は成長しても頭いつまでもイブキのままなんだから――」

「せ〜ちょ〜?」

ぜんぜん実感の共わない事を言われおもわず自身に視線を向け――

「なにこれっ‼︎」

イブキが仰天の声を上げる!

「あしもとみえないよっ⁉︎ なにこれ⁉︎ ど〜やってあるくのっ⁉︎ それにおもっ! おっぱいってフシギなちからでつねにムジュ〜リョクジョ〜タイでゆれまくりなんじゃないのっ⁉︎」

自分の姿を見ようと視線を下に向けた瞬間――見慣れない二つの物体が視線遮り、パニックになりかけるイブキ。

「それは男性の幻想、ファンタジ〜だから」

「そ〜なのっ⁉︎」

「まったく……努力しまくってオッパイおっきくしたんだから、ちょっとは喜びなさいよね」

「そうだった! イブキさんはたえまないドリョクによってキョニュ〜になったんだった‼︎」


――ちゅん、ちゅん、ばたばたばた――


外でスズメ鳴き、飛び立つ音で目を覚ますイブキ。

「…………なんか、イブキさんがキョニュ〜ってトコでそんなんじゃないかな〜っておもったよ」

低反発マクラをモミモミしながら、初夢から目覚めたイブキだった。

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