◇コネクト
何の対策もなく各大陸の地殻へ潜ると、一瞬で命を落とす。地殻が世界から長年切り離されていた理由がまさにそれであり、それが全て。
対策は数える程度しかなく、その中のひとつが【四大装飾】と呼ばれる馬鹿げた属性耐性や環境適応力を付与してくれる装飾品。
その【四大装飾】を装着した7名が地殻から地脈へと足をつける。
そして、否応なく知る。
「───!? なんか、今......」
銀髪に
「うん......言いたい事はわかる、けど......」
金色の髪を一本に太結びする義手の冒険者ワタポも同じように。
他の面々もワタポが言ったように「言いたい事はわかる、けど」の状態に陥っていた。
「何だ? ......この感じ」
「さぁな......でも、大丈夫だ。恐怖や不安じゃねぇ」
半狼化している大剣使いのカイトへトウヤが迷う事なく言い放ち、黒布で塞がれている視界を廻すように周囲をキョロキョロとする。
「地殻より過ごしやすいわね」
「ま、こんな所で過ごしたくないけどね」
薄桃色の髪をサイドで束ねる
『マナの循環も変換も簡単に出来る。これが四大の力だよお』
地脈に入った途端、雰囲気ががらりと変わったのは場所だけではなかった。
だっぷーも───ホムンクルスも雰囲気が一変し、四大の力とやらを淡々と語り始める。
口調こそ普段のだっぷーそのものだが......それこそ、
『四大精霊......イフリート、ノーム、ウンディーネ、シルフ。名前で解ると思うけど、それぞれの大陸の地脈に存在してるよお。存在してる理由は循環と変換』
数歩進みながら、だっぷーは語る。
『地脈を通してマナを循環させる。循環しているマナを様々なモノのマナに変換して、滲ませるように地上へ出す。すると、木が生えたり火山が出来たり、変換するモノによって時間はみんなバラバラだけど、そうやって何年も何百年も......もっともっと時間をかけて、地界は潤ったんだよお』
躊躇のない足取りで進むだっぷーを追うように全員が進む。すると壁などが赤橙に発光しているように明るくなり始めた。
『四大がいなくても、マナは循環する。でも、効率よくマナを循環させられるのは四大なんだよお。だから、四大は地脈で眠りながら大昔からずっと循環と変換をしてるよお。今回の気温上昇はきっと、地上で大きな何かが起こったって気付いたから循環と変換を早めちゃったんだねえ......そろそろ着くよ───っ』
語り終えると突然だっぷーは力が抜かれたように揺れ、倒れる。
カイトは咄嗟にだっぷーを受け止め、地面落下は阻止するものの、意識が無い状態に戸惑う。
「だっぷー!? おい、だっぷー! リピナ、だっぷーを診てくれ!」
すぐに診察するも、だっぷーに異変は無かった。傷は勿論、意識も失っているだけで息はあり、心拍も至って正常。瞳を確認しても原因となるものは掴めずリピナは憶測を言う。
「医学的にも治癒術師的にも原因は不明だけど、眠っている状態で間違いない。冒険者視点で今の原因をあげるなら......意識が抜かれた、または、意識が戻った、って所? あくまでも憶測ね」
口調は間違いなくだっぷーだったが気配......マナそのものが変わっていた。まるきり別人というワケではなく、だっぷーの元々のマナが濃くなったような変化をひぃたろ、リピナ、トウヤ、ワタポは察知していた。
「ボクはマナとか魔力を感知するのが苦手だから、よくわからなかったけど......今の感じって、ほら
わかんないけど! と付け足しつつもどこか納得出来る予想をクチにしたプンプン。
この発言が各々の思考を巡らせるものの、答えなど出るはずもなく。
「......とにかく、だっぷーを抱いて進むわよ」
「だねぇ。カイトくんよろしくね」
「もぉ! アンタらと居るとわかんない事ばっかり!」
ひぃたろ、ワタポ、リピナが先頭に立ち進む。
「カイト、だっぷー影に入れるか?」
「いや、大丈夫だ」
「その影の中ボク入ってみたい!」
「......なんか、エミーみたいな雰囲気感じるからお前は入れたくない」
「えぇー!? なんか......なんかイヤだなぁ! その言われ方! ボクとエミちゃんが似てるワケないよ! だってエミちゃんって......無茶苦茶じゃん」
「2人ともなにしでかすかわからないって事だ」
「えぇ!? ボクのイメージってそんなのなの!? ねぇ!?」
カイトは心配に染まる表情のままだっぷーを背負い、トウヤとプンプンは緊張感の無い会話を続けながら地脈を進んだ。
◆
日陰の席でトロピカルな飲みのもをがぶ飲みするボサボサの黒髪を持つグルグル眼鏡。
くたくたの襟とサイズオーバーの白衣で科学者を装うのは魔女フロー。
「むむむん! 今の感じ......あぷりこちゃんナリね。いいタイミングで意識接続が成功したっぽいナリねぇー!」
紅玉の魔女ラヴァイア、黝簾の魔女エミリオと戦闘を行った直後とは思えない余裕で地面へ視線を向け、
「早くおいでなさいな、あぷりこちゃん。グヒヒ」
何倍目かのトロピカルジュースを一気飲みした。
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