◇四大装飾
そのうちのひとつ、イフリーに厳重保管されている四大装飾を今まさに、このわたし魔女エミリオが受け取りに向かっているのだ。
どんなモノか全然知らないが、ウルトラレアとなれば高値で売れる事間違いなし......だが国宝となれば犯罪レベルは一瞬で真っ赤になるだろう。
パクりたい衝動を必死に抑え、とにかくまずはどんなモノなのかを拝見すべきだ。
ボロ神殿を進んでいるメンバーは久しぶりのお馴染み4名、わたし、ワタポ、プンプン、
そこに、カイト、トウヤ、だっぷー、リピナ。
合計8名。
このメンバーがそのまま地殻探索部隊となった。
もっと大勢で行けばいいだろ、と思ったのだがどうやら噂の四大装飾が無ければ秒で焼ける温度で、問題の四大装飾は8個しかないというクソ仕様。他の大陸も同数らしく、二度と四大装飾の出番が来ない事を祈りながら進んでいると行き止まりに。
謎の絵が描かれた───というか彫られている岩の壁。
大きな犬が1匹、小さな犬が沢山、その下に火の彫刻......あんまり格好良くないな。
「この奥に四大装飾があって、地脈へ降りる道もある。準備はいいか?」
アグニの声にわたし達が頷くと岩壁に手を伸したアグニは───、
「
その壁を破壊した。
誰もが思っただろう、それ破壊する必要あんの? そもそも破壊していいの? と。しかしアグニにとっては道が開ければどうでもいいらしく、瓦礫を足蹴にするように進む。
壊したのはわたし達ではなくアグニだ。そこ間違えないでくれよ。と誰かもわからないが破壊行為に天罰を与えるであろう存在に強い意思を送り、わたし達も進む。すると、
「あれが四大装飾だ」
8本の石柱の上に乗せられている、赤いチャームが。
近付いて見ると赤はマテリアで、装飾パーツは独特な鉱石......とも言えない何か。
「それは火や熱に強い耐性を持ち、肺が焼ける程の熱波の中でも普段と変わらず呼吸出来る。防御型の性能ゆえ俺様は全く興味も必要もないが、貴様等には必要不可欠だろう? ありがたく使え」
みんな無言で手に取ったのでわたしも無言で。
ピンのように衣服に装着できて、アクセサリーのように武器に装着も、首から下げる事も出来るのか。さてどこに装着しようか、と考えるもみんな首から下げたのでわたしも。
装備直後からうだる暑さが遠くなり、快適な温度へと変わったのでいよいよ欲しくなる。勿論貰えないしパクれないが。
「壁に穴があるだろう? そこを滑り落ちれば地殻だ。地殻を進めば地脈がある炎の神殿に辿り着く」
「うわ、まんまな名前かよダセェ」
ついに黙っていられず発言してしまったが、誰も何も言わないのでよしとしよう。そもそも空気が無駄に重いのが意味不明なんだよな......まぁカイトがアグニに怒っているからだろうけど。
わたしの発言を皮切りに次は
「炎の神殿にイフリートが?」
「そうだ」
それだけで会話は終了し、滑り穴へ近付く。
「うわぁ......結構深いよこれ......」
プンプンが覗き混んだので、もうこの重い空気がうざったく思えていたわたしは、
「先頭よろしくな!」
「はぇ───うわあぁぁぁぁ!!」
プンプンを押した。
響く悲鳴が止まり、下から微かに苦情が聞こえるのを確認し、カイトはアグニに何か言いたげだったが何も言わず飛び降り、わたし達も続く。
「───いぃぃぃぃ!!」
想像以上の速度にわたしは声を我慢出来ず、加速する中で「これ着地は?」と考えた所で身体が宙へ投げ出される。
今度は声も出せないまま宙を浮き、落下。
下には大きな湖らしきフィールドが広がっていたので落下死は免れたにせよ、
「......ぶはぁ、水面に鼻打ったぞ! 水あるよって言えよなプンプン!」
水面から顔を出すと同時にプンプンへ苦情を飛ばすわたしは鼻から流れる血に眉を寄せながら陸へ上がると、
「......あ?」
わたしの前に影が。見上げて見るとそこには中々に大きな───
「───ゴーレム!?」
赤茶色で燃えるゴーレムが腕を振り上げていた。
全力で回避───湖へ飛び込んだわたしは陸から少し離れた位置で顔を出す。
素早く周囲を確認。
落下した穴は天井高くにあり、陸は火山洞窟と言ってもいい程赤く、ゴーレムの数は4体。
わたしとリピナ以外は既にゴーレムとの戦闘を始めている。
「見た事ないタイプのゴーレムよ......まず魔力やマナを感じない」
隣でリピナが炎上ゴーレムへ感知を飛ばし呟いた。
気配に気付けなかったのは魔力もマナも持たないからであり、温度は四大装飾が遮断してしまっていたからか、と納得しつつ陸へ向かう。
「何だか知らねーけど、まともに相手する事ねーだろ」
文字通り投げ出された環境について色々と知っておきたい。そのための時間が欲しい。
あんな岩人形と遊んでいる時間はわたし達にはない。
「合図で全員下がれよ!」
そう叫び、わたしは詠唱へ入る。
まだ未知の環境だが地面があるなら地属性魔術は使える。
「───下がれ!」
声に素早く反応し、全員が大きく下がった瞬間に拘束系魔術でゴーレムを岩のドームで包む。
すぐにわたしは岩ドームを縫うように駆け、ゴーレムの相手なんてしてられないぜ! の意思を見せる。
そのまま全員で進み、周囲の安全確認を済ませた所で一息つく。
「突然すぎんだろ」
「ホントだよ、びっくりしたぁー」
装備こそ完全に整えていたが気持ち的な面が追いつかず、わたしとワタポは深い呼吸で落ち着く。
「私も驚いたあ! ゴーレムなんて久しぶりに見たよお!」
「それにしては楽しそうね、だっぷー」
楽しげに言うホムンクルスのだっぷーと呆れるリピナ。
トウヤは岩の隙間に指を当て、おそらく影を使って周囲の地形把握をしている。
プンプンは倒れるように休憩し、
「なんの情報もなしに来る場所じゃねーだろ絶対......」
既に帰りたい気持ちが沸騰するわたしは、とりあえず水をひとクチ飲み、溜息を飲み込んだ。
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