◇炎塵の女帝 5
同種族を喰らう事で同種族のマナを体内に取り込む事が出来るが、いくら同種族と言っても他人。
他人のマナを体内に取り込む行為は危険に直結し、最悪の場合は崩壊を起こし死に至る。
しかし、崩壊を起こさず他人のマナを自分のマナが塗り替える個体も存在する。それが女帝種や皇帝種。
もちろんこの二種以外にも共喰いという過程を経て変化する個体は多数存在するが、人型種は基本、同種族を喰らう事で辿り着く先は女帝or皇帝か崩壊死かの二択。
自我や自制を7割以上失った個体───森の女帝や雨の女帝は結果的に崩壊となり、
【元種族状態】【半女帝状態】【覚醒状態】の3つに形態が分けられ、【元種族状態】は言わば通常状態。共喰いを行いナマ崩壊を免れた個体はこの形態となる。
次の【半女帝状態】だが、共喰いを行った個体が種族を越えた力を執行した際に【元種族状態】へと戻る事が出来た場合はなんらかのトリガーにより【半女帝状態】になる事が可能となる。が、この形態からは危険が大きく跳ね上がる。
ひぃたろは【元種族状態】と【半女帝状態】を持つ女帝種で【半女帝状態】には一度しか手を出した事がないうえ、それさえも形態変化まで至っていない。
単純に、危険なのだ。
【半女帝状態】は文字通り半分が女帝化する状態。半分でもその危険度は
ひぃたろか共喰いに手を染めたのは、
まだ
半妖精というだけで、好んで半妖精を選んで産まれたワケでもないのに、純妖精達からは忌み嫌われていた現実に嫌気......よりも、長年押し殺し溜め込んできた苛立ちが限界を迎えたのだろう。
ただ、圧倒的できる力を求め、ひぃたろは純妖精を捕食し、崩壊寸前の位置で【星霊の宝剣】に封印されていた元星霊王の悪意が隙間に滑り込み、結果的にひぃたろは戻れた。
つまり、何かしら未知の力が、予想だにしない事柄が起こらない限りは並以上程度の精神では簡単に染まってしまうのだ。
共喰いが持つ劇薬にも似た暴力的な快楽に。
───本物を見せてあげる。
イフリー大陸に現れた女性【ヨゾラ】は、崩壊せず女帝力を克服───支配している【炎塵の女帝】を前に、そう発言した。
「お前ら冒険者じゃ
ウンディー大陸のみならず、他大陸でも存在感を確立している
いくら強くなろうと、いくら個性的な力を持っていようと、このレベルの相手に必要なのは1に知識、2に理解、3で始めて実力となる。
女帝種への知識は圧倒的に少なく、現状を瞬時に理解するだけの引き出しや発想も低い問題児世代では【覚醒種】を相手にして勝利出来る確率は25パーセントもないだろう。実力が足りていても、他が足りなければ敗色は濃厚なものとなるのが
今ここにいる冒険者陣は何を選択しても、運が7〜8割、という目算にもならない浮いたものに命を預けるか、異形や異物などの理解を越えた対象と渡り合える戦闘のプロに任せるかしか選択肢はない。
『何が本物だ......貴様如きに何が出来る!? 喰らってやる......貴様のその自信諸共! 私の糧にしてやろう!』
「......はっ。化物や悪者を
『ッ───!』
「安心しなよ、お前程度なら一撃で終わる。メティとリヒトさんはそこの冒険者が下手に動かないよう注意して。邪魔にはならないけど巻き込んで殺しちゃうかもしれないから」
ヨゾラは何の詰まりもなく、スラスラと発言した。この化物【炎塵の女帝】を一撃で屠ると、邪魔にはならない───つまり自分の範囲に入り込んだ者は敵味方問わず躊躇なく巻き込み殺すと。
脅しや虚勢の類ではないと冒険者達は直感する。
あの女性は、ヨゾラは、自分達が今居る
強くなれば───そのジャンルで力をつけ名実共に上へと登れば、必然的に、同レベルの者と邂逅する。
それは仕方のない事であり、冒険者や騎士などはそういった出会いさえも飛び越え進む強い意思がなければ到底生き残れない。
実力がつき、今までよりも高みへ登った冒険者達は、ここでその高みに既に居た者と邂逅した。
強大な存在と言える【覚醒種】を前に “お前程度なら一撃で終わる” と強気だが決して強がりではない発言を飛ばした【ヨゾラ】こそが、今この場においての化物と言える。
上の世代───
容姿こそ知らぬとも、女性の存在を知らぬ者はいない。
ひとりは【
ひとりは【
世界は【
本人も女帝種、【
それが
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます