◇外界の侵略者⑧
それらを外来種という差別要素を含む言葉で括っていた。しかし今は差別的要素がほぼ無くなり、単純に “外界の種族” という認識で外来種という言葉が当てられている。
勿論コンテクストによっては含みや嫌味などが宿る言葉ではある。
このような言葉が、外来種という言葉が今も消えず使われている理由とも言えるのが、現在ウンディー大陸にて緊急クエストとして表示されているランク
数年単位で外界から地界へ侵略的意識を抱き現れる存在。
前回は約5年前だったと記録が残っている。
外界から地界へ、という括りでは外来種と言えるが、そう呼ばない理由は明確な敵意や侵略心を持っているからだ。外界でも屈指の力を持つ存在が己を中心に自由を作るため───己を中心とした領土を求め、外界から侵略してくる。
そういった思想を持つ存在、モンスターを
今回現れた
モンスター図鑑を随時更新しているギルドが数週間慎重に調査し、その実態が垣間見えた事により討伐クエストとして発注された。
クエスト【外界の侵略者⑧】との名で受注条件は冒険者ランク
こういったクエストは受注するには条件が必要だが参加するには受注者の許可さえ出ればEランクでも参加可能。勿論の事だが参加は自己責任となる。
滅多に出回らないSS-S2のクエストに心踊る冒険者は沢山存在するが、受注できるかどうかは別の話。そんな高ランク最高難度のクエストを即受注したのが、ギルド【ジルディア】【海竜の羅針盤】【アンティル エタニティ】と冒険者【ゴッドリヴレ】だ。
ギルド【アスクレピオス】のマスターは乗り気じゃないらしくユニオンの長椅子に座り行き交う女性へ声をかけては不審がられていた。
「みんな真面目だねぇ! 僕なんて小柄なサキュバスに釣られて死ぬかと思った事なんて一度や二度じゃないというのに!」
何の自慢にもならない言葉を吐き出し、ギルド【アスクレピオス】のマスター【ケセラセ】は懲りずに女性へ声をかけては無視される。
「ケセラセ! 今SS-S2のクエ受けてきたんだけど、
大剣を背負い、腰には剣を吊るしているTHE 剣士 なSSS-S3【ゴッドリヴレ】がニッと笑い隣に座った。
すると、
「あ、あの、トリプルの冒険者、ゴッドリヴレさんですよね!? よかった握手してください!」
と、ひとりの冒険者の声を皮切りに何人もの冒険者が群がる。強さ、実績、ルックス、性格、全てが最低でもSランクはあるであろうゴッドリヴレは流石の人気と言える。
「握手? そんなもんしてどうするんだよ? ってお前、その武器あれだろ!? 2万5000vで買えるやつ! 懐かしいなぁー俺も昔それ使ってたんだぜ!」
ゴッドリヴレは名も知らぬ冒険者へフレンドリーに対応し、「お互い無理だけはしないで頑張ろうぜ」と言い拳と拳をぶつけあう。どんな相手にも自分らしい対応をする点もゴッドリヴレの人気のひとつだろう。
「ケセラセ。残念だけど今回のタゲは結構厄介そうなんだ。
「へぇ......ノル君がそこまで言うって事は相当な相手なのかな? クエストを見せて貰ってもいいかい?」
トリプルの冒険者【ノールリクス】に続き【クレア】と【ゼリー】もユニオンに配置されている大型のソファーへ集まる。
昨夜、大集会場が壊滅状態となった事でユニオンには多くの冒険者が出入りしている。そんな中でトリプルが顔を揃えている光景は冒険者達にただならぬ圧力を本人達が意識せずとも与えてしまっている。
萎縮する冒険者達を気にかける様子もないトリプル達を見たひとりの冒険者が突然気配を消し───周囲に上手く溶け込ませ───
「どうだい? 報酬に惹かれないならこちらで何からしら用意......? ───ッ!?」
突風のように風を逆巻かせ、荒々しい気配を露にした瞬間には、雷撃纏うブーツでトリプルのひとりノールリクスを蹴り飛ばしていた。
「───よう、
ずれた帽子を手で押さえ、乱入してきた冒険者は悪戯な笑みを浮かべて言った。
◆
思わず「おぉ」と声を出してしまう程、綺麗な緑色で茹で上がった大きなエビを前にわたしは眼を
時間的には昼を過ぎた所だが、昼食を食べずクエスト攻略していたのでちょっと遅めの昼食を取る事に。街で出会ったお金持ち【ジュジュ】を絶世の美女エミリオさんの底知れぬ色気で誘惑し、ご馳走になる作戦は見事成功。普段なら行かないであろう良さげな店に凸ったのはものの15分前だ。
普段ならば───自分の金ならば───絶対に注文しないであろう高級かつ希少なエビを高らかとオーダーし、届いたコイツにビックリ仰天。誘惑色として名高い───知らんけど───マスカット色でわたしをこれまでかと誘惑してくる巨大エビ。最早わたしの耳に周囲の雑音は届かず、見るだけでも嫌になる雑魚共の姿は映らない。そう、わたしは今、このエビに全てを集中......いや、魅了されているのだ。悪魔種族が使う誘惑術、魅了術よりも強く本能を掴み離さない罪深いエビに。
......ハサミがあるからカニかもしれない。でもフォルムタイプはエビ。ロブスター系の種と見て間違いなさそうだが、そんな事はどうでもいい。エビだろうとカニだろうと突然変異のダンゴムシだろうと、関係ない。今わたしは眼の前の皿で無防備になっているコイツを食いたいんだ、いや、食うんだ。
「エミリオ」
「あん? なんだ
突然わたしの世界に侵入してきた半妖精からマスカットシュリンプ───正式名は知らん───を守るべく手で掴み引き寄せる。
「それ早く食べなさい、ユニオンへ行くわよ」
「え? えぇ!? みんなご飯食わねーの!?」
「今さっき新しいクエストが追加されたと通知が来たんじゃよ。自分のフォン見てみるのじゃ」
半妖精の次は情報屋がプレッシャーをかけるように言ってくる。そもそも新しいクエストが追加された程度でフォンに通知が届いていてはうるさくて夜も眠れないだろうに......、
「まぢかよ」
半信半疑、いや、雑魚い嘘つきやがって、と思いつつフォンを確認した所、確かに通知は届いていてそれは【SS-S2ランク緊急クエスト】という件名だった。
このタイミングで緊急クエストとして新たなSS-S2......しかも【
「この、ストレンジャーってのは?」
初見ワードが持つ意味を質問しつつエビの殻を豪快に剥がす。
「私もそれがわからないのよね」
「ワタシも初耳かも」
「2人が知らないのにボクとエミちゃんが知ってるワケないよねー」
プンプンの言う通りだ。
今この場───ちょっといいレストラン───には、いつもの4名以外にキューレ、アスラン、アクロス、
このメンツで噂の “ストレンジャー” を知ってるのはおそらく上の代......つまり───
「外界から来た
「じゃの」
「それじゃユニオンいくか?」
「行った方いいぞ、手が足りないだろうし俺も商売のチャンスだ」
───アスラン、キューレ、アクロス、
同じ感覚で行動しているがわたし達より上の世代だ。わたし達の代が知らない事を知っていても不思議はないし、むしろ知っていないと今まで何をやっていたんだ? と思ってしまう。
「手が足りないって事は大型討伐か? んならしし屋とだっぷーの存在は大きいな」
しし屋は治癒術師としても錬金術師としても優秀。だっぷーは錬金銃師という肩書があるくらいだ。中衛と後衛の層を厚くするには心強いうえに、得た情報から瞬時にレシピを組み立て薬を調合する技術はどんな場面でも安心感を醸してくれる。
「みんなで行くのじゃよ。ウチの勘じゃと上の世代も参加するじゃろうし、丁度良い機会じゃろ」
上の世代、というワードで、強引にでも参加してやる、というわたしの中に眠る強行性が沸騰し強引性が固まる。
「丁度いいな色々と! リピナにメッセ送ってわたし達もユニオン行こうぜ!」
フォンを左手に、エビを右手に持ちわたしは一番に店を出る。店にいた客達が「応援してるよ
悪い気はしなかった。
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