◇◆シンシアと十二の邪神◆◇



 むかし、むかし、ひとりの魔女まじょがいました。

 名前なまえはシンシア。魔女全体まじょぜんたいなかではつよ魔女まじょでしたが、つよ魔女まじょなかでは一番弱いちばんよわく、派手はでさもない魔女まじょでした。

 それでもシンシアはにしません。自分じぶんがどんな魔女まじょなのか、自分じぶんなにをしたい魔女まじょなのか、わかっているからです。

 なに目指めざし、なにもとめ、なにねがおもっているのか自分じぶんでわかってるひとまわりの言葉ことばなんかにまよわされない。

 シンシアは自分じぶんがしたいことをするとめていました。


 自由じゆうにすると責任せきにん自分じぶんかえってくる。だからシンシアは責任せきにん無視むしして、勝手かってにすることにしました。

 勝手かってちかられるため、シンシアは十二じゅうに邪神かみ四大精霊しだいのノーム、ウンディーネ、イフリート、シルフを自分じぶんのモノにすることにしました。


 シンシアの勝手かって責任せきにん世界せかいけられるのです。


 様々さまざま種族しゅぞくきました。ながしました。大切たいせつひとくしたひとかぞれません。

 みんながかなしみ、いかり、さけんでも、シンシアはにしません。シンシアは自分じぶん一番強いちばんつよいとわかっているからです。


 よわひとねがいをかなえられない。

 よわひとなにかをしがってはいけない。

 よわひとつよひとことくしかない。


 つよいひと自分じぶんで、自分以外じぶんいがいはみんなよわひと


 シンシアはそうおもうたがいませんでした。しかし、四大精霊しだいのウンディーネがべつだれかと契約けいやくしてしまい、シンシアがにすること出来できませんでした。

 それでも、シンシアはつよひとわりはありません。


 そんなシンシアのまえに、魔女まじょ人間にんげん獣人じゅうじん妖精ようせいあらわれました。


 魔女まじょはシンシアへ、十二じゅうに邪神かみのうちひとつをかえすよういました。

 人間にんげんは、勝手かって責任せきにんをとれといました。

 獣人じゅうじんは、大切たいせつ家族かぞくかえせといました。

 妖精ようせいは、四大精霊しだいかえせといました。


 しかし、シンシアはこういました。


 自分じぶんのやりたいことをやって、なにわるい。ひと顔色かおいろばかり態度たいどえてきるのは、んでいるのとおなじ。

 自分じぶんらしくきられないのは自分じぶんわるいのではなく、世界せかいわるい。




 シンシアはほめられたかった。

 自分じぶん努力どりょくを。

 他人たにん努力どりょくくらべるのではなく、自分じぶん努力どりょくしかった。

 でもみんな、シンシアの努力どりょくではなく結果けっかばかりて、ほめてはくれなかった。

 シンシアが努力どりょくしているころ、シンシア以外いがい魔女まじょいまシンシアが努力どりょくしている部分ぶぶん何年なんねんまえわらせてしまっていた。

 だから、シンシアがいくら努力どりょくして結果けっかしても、それはもうみんなってる結果けっかだれもほめてくれない。それどころか、あきれられたり、わらわれたり、馬鹿ばかにされる。



 どうすればいいのかシンシアはかんがえて、わかった。

 だれもしたことのないことをすればいいんだ。

 そして、自分じぶんやさしい世界せかいつくればいいんだ。



 ひとえるのはひとであり、どうわるかは、その人次第ひとしだいでもあり、そのひとおも人次第ひとしだい


 シンシアには、自分じぶんおもってくれるひとがいませんでした。


 だれにもたよらず、だれにも相談そうだんせず、自分じぶんだけでせま世界せかい結果けっか、シンシアはわることわることだと判断はんだん出来できませんでした。


 シンシアは十二じゅうに邪神かみ四大精霊しだいのノーム、イフリート、シルフをあつめ、自分じぶんおもえが世界せかいつくるために、


 沢山たくさんたくさん、ひとかなしませました。

 自分じぶんをちゃんとてくれなかった人達ひとたちおなじように、自分じぶん相手あいてことようともせず、たくさんかなしませました。


 勝手かって責任せきにん無視むし出来できる。


 でも、勝手かってかならほろぼす。


 最後さいごたよれるひともいなかったシンシアは、いままでしてきた自分じぶん勝手かってに、ころされてしまいました。



 自分じぶんてほしかったのに、自分じぶんしかてなかったシンシア。


 ひとりだけがつよひとでも、かずはひとり。


 かぞえきれないよわ人達ひとたちがおたがいをて、おたがいを尊敬そんけいして、つなぎあったら、つよひとよりもつよおおきな、やさしい世界せかいになることを、シンシアは最後さいごりました。


 もっとはやくっていれば、とシンシアはかんがえてましたが、そのためには自分じぶん最初さいしょわる必要ひつようがあると気付きづき、後悔こうかいわらった。





 シンシアが勝手かってをした責任せきにんで、手をつなぎあった世界せかいはバラバラになるしかありませんでした。


 四大精霊しだいよっつの大陸に眠り、地界ちかいとなって、

 いままでの世界せかい外界がいかいとなって、

 この世界せかいまれた。


 バラバラで、はなればなれになった世界せかい。でもそれはやさしい人達ひとたちがおたがいを大切たいせつおもめたこと



 ひとおも気持きもちが、どんなものよりもやさしくてつよい。



 そんな世界せかいつづきますように。


 そんな世界せかいつづきますように。




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