◇資格、手段、許可
ノムー、ウンディー、イフリー、シルキ、これら4つ───四大陸が
冥界と天界は思考から除外してもいい。存在はしているが安易に足を踏み入れる場所ではないし、踏み入れる事も難しく戻れる確率は予想値さえ出せない。
地界と外界は元々、区別される大陸ではなかった。同じ線の上にあった大陸が数千年前に起こった災厄により区別された大陸であり、今も同線に外界が存在している。
しかし地界から外界に無断で向かう事は禁忌とされている。
資格、許可、手段。
大きくわけて3つのものが必要であり、これらを持たず地界から外界へ行く事は許されない。
「例えそれが外界種族だとしても地界に足を踏み入れた以上、地界から外界へ戻る行為だとしても無許可ではどんな理由であろうとも、禁忌となります」
セッカはわたしとゆきち───後天性吸血鬼のマユキを見て言った。
なぜわたしとゆきちを見て言ったのか......そんな事は簡単だ。
わたしは琥珀の魔女と戦闘し勝利、他の魔女を探しに外界へ行く可能性があると踏んだのだろう。ゆきちはある
魔女も吸血鬼も......人間以外の種族は元々地界に生息しない外界の種族───外来種。そんな種族を探し求めている者は外界を視野に入れてもおかしくないという事だ。
「簡単に説明します。まず資格。これは皆様ならば冒険者ランクで解決するでしょう。Sランクからは外界調査隊のリストに含まれます。しかし明確な実力と実績が必要です。Sランクになったからといって外界に行けるワケではありませんし、たとえSSSだとしても実力と実績が好ましくなければ外界への資格は与えられません。冒険者生涯で一度でもSランクに昇格した者はAランクに降下したとしても、その名はリストに残り、Aランクでも明確な実績や実力、外界攻略にあたってプラスになると判断されれば特例でSランクを与えられる場合もあります。あとは......手段の話でもうひとつの資格を伝えます」
冒険者は冒険者ランク......騎士達もそういった形で可能性のある者を集め、そこから人材を選び抜くのだろう。資格については予想通りだった。
「続いては許可。これは資格の段階で許可半分得ていると思ってもらって構いません。三大陸......おそらく今後は四大陸で、どの者ならば外界へ向かわせても
これもまぁ予想通り。問題は次だ。
「最後が手段ですが、まず外界の存在を再認識していただきたい。外界と呼ばれていますが
そう、まずはここを理解しているかが問題だ。以前は外界についての記憶が曖昧だったが今ではハッキリとしている。けど、魅狐プンプンあたりは既に脳の容量が真っ赤だろう。クチをへの字に曲げ理解しようと必死だが、多分全然理解出来ていないだろう。猫人族のゆりぽよ───キティと 獅人族のしし───しし屋に至っては後で誰かわかりやすく教えて、のスタイルだ。
天使みよ───みょんはさすが天界種の天使、理解しているどころか当たり前の話題を前につまらなさそうな顔をしている。
「手段の話をする前にそちらをハッキリとさせた方がよろしいですね......皆様、お時間───急ぎ取り掛からなければならない
わたしは勿論ない。他の者も時限クエはなく、ユニオン広間でセツカの外界講義が始まる───前に、半妖精の
「外界の話は気になるけれど、まずは現実的な話を......爆発する人間達の件は?」
確かにわたし達の前にある現実は、今は外界よりも爆弾人間だ。
「その件につきましては調査を行っています。というより、イフリー大陸の調査を既に依頼してますので、報告待ちです。イフリーが何かしらの攻撃をしてきた、と断定するには今は材料が少なすぎます......しかしイフリーで何かが起こっているのは明確です。イフリーの現状調査の過程で様々な事が浮き彫りになると
「そう。わかったわ」
調査しているならいい、と言わんばかりに答えたハロルドはしし屋が入れてくれたお茶に手を伸ばした。
長話になる予感を察知したしし屋は集中力を高める効果のある紅茶を入れてくれた。どこかで見たロゴマークの袋だが......思い出せないし思い出した所でわたしの舌や鼻では全部同じ紅茶に思えるので何でもいい。
「では早速。外界を知るには地界を知る事が近道です。まず
キューレはセッカの話題に合わせワールドマップを
地界の80%が埋められたワールドマップはレア中のレアで、買うとなれば装備をフルオーダーするよりも高いだろう。
「これが噂の孤島じゃ」
アップにした孤島を全員が見て、その異様さに息を飲む。
教会のような建物がひとつ、教会周辺には木々のように十字架が生えていた。100を超えているだろう数の、様々な形状をした十字架。
「全て墓標です。資格、許可、手段、全て正規で外界へ向かい、命を落とした者達の墓ですが、あくまでも亡くなったと判明した者達の墓です」
死んだと確定された者達の墓であり、生死不明な者は生きているとし、墓を建てていないのか。98%の確率で死んでると思うけどな。
「......皆様、この墓標島が見えているという事でよろしいですか?」
意味不明なセッカの質問にとりあえず頷くと、不明だった点がすぐ明らかになる。
「この島は一定以上の精神力がなければ認識さえさせてもらえないのです」
この言葉にわたしはピンときた。
昔......冒険者になりたての頃マップを見てワタポに中心にある島について質問したハズだ。その時、気にする必要のない島、みたいな返事で話は終わった。ずっと不思議に思っていたが誰もその島について話題を掠らせもしなかったのでわたし自身も忘れていたが、何らかの方法により精神力が低い者には認識さえさせない、精神力がある程度ならば島自体は認識出来ても気を向けさせない、といった感じだろう。つまりこれが、
「もうひとつの資格、か」
「はい。エミリオが言った通り、この島を認識できるかどうかがもうひとつの資格であり、手段を話す場合必ず最初に島の存在を認識しているか確認するのです。皆様は大丈夫そうですね」
島を隠しているのは隠蔽系の魔術とは思えない......能力か? マテリアか? 不特定多数を一瞬にして精神誘導する干渉系......使い方が島の隠蔽で終わってるからいいが、その気になれば地界を一瞬で支配出来るだけのヤバさがある。
魔術でも能力でも魔結晶でも、使い方ひとつで大にも小にもなる。
この使い方は間違ってる......いや、正解だな。わたしが今考えた支配系に使うのは一般的に考えて間違った使い方になるか。
「って事はこの島に手段......外界へ行く方法があるって事だね?」
ショート寸前だったショートヘアの魅狐プンプンが何とか話題に食らいつき発言した。
隠す意味を考えればまず間違いなくこの島が外界と繋がっている。
「はい。この教会には大鏡があります。その鏡が外界と繋がっていて、信じられないと思いますが、鏡に入るとすぐ外界へ出るのです。
ばつが悪い顔でわたしを見る女王様。ここまで語っといて外界に行った事ないという事実に恥ずかしさみたいなモノを感じてるんだろう。
「鏡を通って外界に到着、は一番簡単な移動方法だ」
「デスデス。大きなメリットは一瞬で移動出来る事とリンクしている手鏡を持っていればどこからでも移動できる事デスが、どちらも手鏡なんて事は絶対にないデスし、手鏡は一度使えばその場に残ってしまうので消耗品デスが、まず入手できないデスねぇ。大きなデメリットは移動先が固定されているので待ち伏せなどの餌食デスかねぇ。どちらかの鏡が破壊されればその道は使えなくなるデス」
吸血鬼の
「この話題を出したって事は......ワタシ達も外界へ向かう許可が降りたって事?」
ずっと真面目に聞いていたワタポは、なぜ今外界の話をするのか、に視点を向けた。わたしもそれが気になっていた。まさか本当に外界許可が?
「ヒロ......ワタポが言った通りです。
上手く出来てるな。
“資格” を持つ者が外界へ向かう際は “許可” をもらうため “手段” を提示する。
資格、許可、手段、が上手に回っている。
「今回の外界の件は皆様に資格を与えるまでですので、これで終わりです。何か質問などがあれば今でも後程でもお答え出来る範囲でお答えしますが......
こうしてわたし達は外界への資格を入手した。
外界の種族であり外界で産まれ育ったわたしにとっては別に喜ぶ事でもないし、今はまだ外界に───魔女界に───向かう気はない。
まぁ、貰えるものは貰っておくけど。
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