◆218
「だーかーらー、頭で考えるんでなくて、温度を感じるみたいにするんだってば! こう......ほら!」
「そんな事言われたって、魔力の温度なんてボクわかんないよ!」
この.....バカ狐は何度同じ事をこのわたし、魔力感知の天才エミリオ様に言わせるんだ。そもそも魔女の魔力を感知したいって考えがアホすぎる。魔女は魔女界から出る時は800パーセントの確率で魔力隠蔽魔術【マナ サプレーション】で自分達の魔力を包み隠しているというのに。
まぁわたしもその隠蔽魔術を最近まで知らなかったけども。
「エミちゃんは魔女なのに説明が下手くそだ! だからわからなくなるんだ! バカ!」
「あーん? なんっだその魔女は説明がお上手です的な考え! じゃあ
「そんなのボクに聞かれても知らないよ!」
「こっちも説明下手言われても知らねーよ!」
ガルル、と声が出そうなほど睨み合うわたしとプンプン。激しくぶつかる視線を割るように、ワタポが間に入り、このタイミングでハロルドが発言する。
「魔女の魔力は感知センスがなくても感じるわよ。魔女だけじゃなく、異質な魔力や異常に濃い魔力は嫌でも感知出来る。プンちゃんが知りたいのは多分、魔力の質や変化.....魔女語が詠唱なのか否か。それを判断出来るようになりたいんじゃない?」
「え.....っと、なんか難しくてよくわかんないけど.....魔女語を覚えるより、魔力の変化を感知出来るようになった方がいいかなってボクは思ったんだ。それで───」
わたしを見るプンプンの眼は、なんとなく、や、あれば便利だからではなく.....真面目な色だった。
確かに魔女語を今から理解するのは絶望的に効率が悪い。魔力の微変化を感知するのは正直いって不可能だが.....大きな変化や質.....雰囲気の変化は感知可能だ。プンプンは元々魔術タイプではないが、ひとつだけ、それもプンプンにしか出来ない方法なら───もしかしたら出来る。
「......出来るかわからないけど、ひとつ思い付いた。でもタダでは教えねーよ?」
「げっ.....お金とるの!?」
「んやんや、体術か剣術を教えてくれよ。わたしはプンプンなら出来るかもって方法を今思い付いたからそれ先にやろうぜ」
「ボクなら.....ボク専用の魔力感知方法?」
「そ。まだ絶対出来るかは謎だから、何度か試したりしなきゃだけど多分出来る。どする?」
「お願い」
「おけ、んじゃ夜まで暇だし、そーだな.....とりあえず外出ようぜ」
わたしはプンプンに魔力感知方法を、プンプンはわたしに体術や剣術を教えてくれる事になった。夜までの時間潰しにはちょうどいいし、これがお互いのプラスになるなら続けていけばいい。
◆
ご機嫌な鼻唄を奏で、お湯に浸かる魔女フローはお腹を撫でてクスクスと笑う。
「四大精霊を食べたら属性も濃くなりそう.....でもあの子達はまだ出て来てくれないし。ひとつ目の
◆
───消滅しない悪魔.....この悪魔は心臓がない。私には理解できない現象だが、今起こっているこの現象は......もしかすると。
ナナミはエミリオから受け取った悪魔瓶を眺め、様々な本をめくるも消滅しない悪魔の死体について書かれている本は無かった。
「.....ドメイライトのシンディ、あと後天性吸血鬼のマユキ。他にも外来種に詳しい者を探して一緒に調べた方がいいか........いや、限界までひとりで調べるべきか?」
ナナミが知りたいのは悪魔の死体がなぜ消滅しないのか───ではなく、その先。
心臓を持たない悪魔、つまり心臓を使って召喚された悪魔ではないか? ならば【悪魔の心臓】を使えば自分にもできるのではないか? という、悪魔召喚の可能性。
「─── リーズ......」
ナナミは |悪魔の心臓(リーズハート) をポーチから取り出し、切れそうな声と震える手で悪魔の心臓を撫でた。
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