◆69




無駄に強い亜人モンスターとの戦闘後、このエリアの宝箱を根刮ぎ開き次のエリアへ降る階段を今まさに一段一段おりている。宝箱の中には消耗品とお金の他に武具の素材やアクセサリー等が入っていた。魔力消費を減少させるイヤリングと俊敏性を上昇させるリングは正直どっちも必要ないしブレスレットとネクタイでアクセサリーは2つ装備状態、これ以上装備しても効果はないし最悪アクセサリー全ての効果が発動しなくなる。

魔力消費減少イヤリングはワタポが、俊敏性上昇リングはハロルドが装備する事に。変わりと言ってはなんだがわたしとプーは宝箱から出た武具素材を少し多めに貰った。

てっきりワタポも俊敏性上昇を求めると思ったが魔力消費減少を求めた。魔術も治癒術も使えるがそれはハロルドも、プーも魔術は使えるだろう。魔術主体で戦う訳でもないのに魔力消費減少アクセサリーを選んだのは売ってお金にする為かと思ったが装備している。


「ワタポ、それスロあり?」


気になったので質問してみる事に。無駄に長い階段を降る時間潰しにもなるだろう。


「んーと、おぉ!空きスロ1」


確認しないで求めたのか...と少々呆れたが、この感じがワタポらしい。

スロは武具等にあるスキルを追加できる枠の事で、正式にはスロット。

ワタポが今言った、空きスロ1 はその枠に何のスキルも埋まっていないと言う事だ。

武具1つのスロット最大数は3。装備可能武具が全て最大数ならば合計21スロットになる。

今ワタポの持つイヤリングは魔力消費減少効果に空きスロ1。と言う事は最大スロットは2のイヤリングだ。

鍛冶屋にお願いして魔力消費減少効果を消して空き2にするもよし。空き1に別のスキルを埋めるもよし。

空きスロを使う場合はマテリアが必須になるので簡単にはいかないがスロあり武具は大きなアドバンテージがあるので売るにしてもナシとアリでは同じ武具でも値段は別物になる。


「お?やっと次のエリアだね」


黄金色の短髪をご機嫌に揺らしエリア3へ着地したプー。続いてハロルド、ワタポ、クゥがエリア3へ降り立ち停止。まさかまたオーガの様な待ち伏せモンスターが居たのかと少しビビりつつわたしもエリア3へ降り立った。

そこは小さな部屋になっていて通路はなくモンスターの気配も無い。10メートル程先に一際燃える...と言っても実際に炎が灯っている訳ではないが、辺りの壁とは比べ物にならない燃え方をする壁と二枚扉が見える。


無言で扉の前まで進むと、まず大きさに驚く。ドメイライト城やシケットの城に負けない程の幅、高さは両城の半分程だがそれでも2、3メートルはあるだろう。扉のデザインはコレと言った特徴のない平凡な押して開くタイプか...これは間違いなくボス部屋への扉。この先にはダンジョンの支配者が冒険者を待ち構えている。

今わたし達がいるこの部屋はセーフティエリア...安全地帯。モンスターも湧かずここで充分な回復や作戦を立ててボスへ挑める通称 安置。

ここで増援を待つのもいいがダンジョン内ではメッセージの送受信も通話機能も使えないので仲間を呼ぶ事は出来ない。それに今他の冒険者が安置に到着しても扉の先にいるボスの情報がなければ作戦も何もない。最低でもボスの姿くらいは確認しておかなければ攻略、対策も組めない。


「ダンジョンの支配者...ボスはその部屋から絶対に出ない。集会場でダンジョン攻略を済ませた冒険者が自慢気に話してたわ」


「なるほど...んなら少し覗いてヤババだったら退散しよ」


ハロルドの言葉にわたしが繋げると全員が頷く。わたしとワタポが左右の扉を押し開く。突然ボスが攻撃してくる事も考え、ハロルドとプーは抜刀し構える。軋む扉がゆっくり開きついにその部屋が露に。


薄暗く先が見えない程の奥行き。ボス部屋と呼ぶには充分すぎる広さと長さ、高さがある部屋。

半妖精と魅狐が部屋に侵入した途端、天井にあるシャンデリア風のオブジェクトに光が灯る。強すぎず弱すぎずの光がボス部屋を照らし四方八方見渡せる様に...


「んぐ!?...やっば」


部屋を見渡していると突然、圧がわたしを押す。反発する様に押し返し声を漏らすとワタポは足りない言葉を足した。


「扉が...閉まる」


扉を全力で押し返そうとするもただ体力を奪われるだけで扉は止まらない。

フェアリーパンプキンの2人もすぐに扉押しへ参加したその時、クゥが唸りをあげ部屋の奥を睨む。

巨大羽音と突風がわたし達の身体を軽々と浮かせ床に転倒、扉は隙間なく閉じられ閉鎖されたボス部屋の床に全員残った。


冷たい床とサヨナラし部屋の奥へ眼を向けると2メートルはあろうサイズの亜人...なのか妖精なのか、両腕が翼になっているデミヒューマンモンスターを瞳が捉えた。

青白い女性の顔で青紫の長髪、腕は翼で足の先は前3本後ろ1本の太く鋭い爪...鳥と人間のデミヒューマンがボスで間違いないだろう。そして、そのボスの近くを飛ぶ人間と同サイズの鳥人間は取り巻き。素早くフォンを向けモンスター図鑑を使う。



[ハルピュイア]

人面の怪鳥人。

筋力、魔力共に上位クラスのデミヒューマン。翼は堅く爪は鋭い。デバフを使い獲物を弱らせ子供である[ハーピィ]に狩りをさせる。

ハルピュイア A+。

ハーピィ C。



ボスがハルピュイアで取り巻きがハーピィ。ここに記入されているランクは外でのランクなので今までのダンジョンモンスターから考えて...ハルピュイアはS+、ハーピィはB程だろう。

バリアリバルの冒険者、ギルドがレイドを組んで討伐したゲリュオーンを越えるランクのモンスターを4人と1匹、それも逃げ場ない空間で戦わなければならない。

ハーピィの数は4...同数での戦闘だ。


「ひぃちゃはハルピ、他はハピをターゲットにして、ひぃちゃはハルピの魔術を必ず潰して。対で無理なら合図で集合」


「「「了解」」」


迷わず指示を出し1対1の戦闘を選んだワタポ。わたし達はそれに従うだけでいい。ここで「それは~」等とクチを挟むバカはこのメンバーには居ない。

わたし達の表情、雰囲気の変化を感知したハルピ...ハルピュイアは高い声を反響させた。それを合図にお互い一気に距離を詰める。




初撃を譲るつもりはわたし達に無い。迫るハーピィに合わせて武器を振るとハーピィも翼を振り接触、相手は翼だが羽とは思えない鋼鉄音がボス部屋にいくつも響き、怪鳥は鳴いた。

今の一撃、初撃で各々ターゲットが定まった。ここで全員が距離を取り1対1で戦えるスペースへ移動。

バカ広いボス部屋やフィールドで使える戦闘手段、iso《アイソレーション》。

柱などの障害物もなく見通しのいい部屋だからこそ離れていてもメンバーを確認出来る。勿論カバーに入るのは遅れるがisoで戦闘する場合はお互い邪魔にならない距離が最も大切になる。素早くターゲットを討伐し合流する事だけに集中するんだ。


ホバリングする怪鳥人は翼を横払いし羽を飛ばす攻撃。矢の様に鋭く尖る羽が複数...1ヶ所狙いでは意味がない。サイドステップで難なく回避し細剣に無色光を纏わせる。

右斜め上からスピードを乗せて振り下ろす単発剣術スラスト。ハーピィは斬撃を両翼でガードし剣術後のディレイを狙ってくる。小さく笑った怪鳥人へわたしも笑い返す。

剣術後には隙が生まれる。それはモンスターでも知っている事。それじゃ...これは知っているか? “ディレイを先延ばしにできる” って事を。


星霊界でハロルドが使った剣術ディレイが発生する前に次の剣術を使うスキル。ハロルドが派手に使う前からその存在に気づき密かに練習していた時、3つのルールにわたしは気付いた。


1つは...剣術終了後に大きく武器位置を変更すると繋がらずディレイに襲われる。剣術終了時の構えに剣術初撃の構えが近ければ無色光が完全に消える前、ディレイに襲われる前に次の剣術を立ち上げる発動する事が出来る。


2つめは剣術中にわざとファンブルさせファンブルディレイに襲われる前に別の剣術を発動出来る。剣術中に次の剣術初動を入れファンブル、しかし初動に入っている為素早くその剣術が発動される。


3つめは一番重要だとわたしは思った。 “ディレイを先延ばしにできる” これは使った剣術全ての蓄積ディレイではなく、最初に使った剣術のディレイを先延ばしに出来ると言う事だ。第一剣術から第二剣術へ繋げる事で第二、第三...のディレイは消滅。連繋後に襲い来るディレイは第一剣術のモノだけと言う事だ。

第一剣術にディレイが弱い、軽いものを選び連繋させれば恐ろしい連撃、威力の剣術を使えてディレイも僅か数秒で済む。使い慣れた剣術を第一に選ぶのもアリだろう。


剣術と魔術は反復する事で威力やディレイタイムが大きく変化する。わたしが今選び使ったのは基本系の中の基本、単発剣術スラスト。人生で一番最初に覚えた剣術で恐らく一番使っている剣術であろうスラストをハーピィに叩き込み素早く剣先を怪鳥人へ向け姿勢を極限まで低く下げる。すると弱くなっていた無色光が強く輝き剣術が繋がる。

素早く左、ハーピィの右肩を狙い射ち出される突き。ここでハーピィの防御は崩れた。しかしこの剣術はまだ終わってない。次はがら空きの胸へひと突き、そして右へひと突き。鶏肉集めのクエストでも使った 三連突き剣術 スパイクスリールを余さずハーピィへ射ち込み腕を引き戻し更に剣術を繋げる。単発突き剣術 ラントでハーピィの胸を一気に貫く。突進系でもあるラントでハーピィの胸を剣が貫通、無色光が弾ける様に消えここで先延ばしにしていたスラストのディレイに襲われる。

ハーピィは耳障りな悲鳴を残し爆散。溜め止めていた息をゆっくり大きく吐き出し戦闘は終了した。


剣術から剣術へ繋ぐこのスキルは想像を遥かに越える集中力が要求される。便利だが毎回使えるスキルではない。

ディレイから解放されたわたしは休憩したい気持ちを圧し殺し素早く他のメンバーのハーピィ排除に参加する為、足を動かす。が、もう既に討伐を終えボスであるハルピュイア戦を始めていた。


「ごめ、寝坊した」


わたしは一言いい戦闘へ参加。ここである事に気付く。

ハルピュイアは無傷、メンバーは全員傷がありポーションを飲みつつ戦闘している。


「エミちゃん!こいつヤバイよ..」


長刀を肩で担ぐ様にしポーションの小瓶を一気に飲み干すプーは薬品の苦味よりもハルピュイアへ苦戦している現状に苦い表情を浮かべる。

プーが前衛へ戻ると次はワタポが下がりポーチから小瓶を素早く2つ取り出し1つはクゥ、もう1つは自分で使う。

いつまでも見ている訳にはいかない。わたしはすぐに戦闘へ参加するべく剣を構えるとワタポが肩を叩き戦闘参加を阻止、小瓶の中を綺麗にして言った。


「魔術連発お願い、前衛は4人でやる」


そう言い残しワタポとクゥは前衛へ向かった。


連発、ね。


「おーけー...ぶっぱなすよー」


細剣と短剣を納刀しクチを素早く、正確に動かす。

ハルピュイアの後方に赤の巨大魔方陣が展開、前衛隊の前には橙色の魔方陣。


炎の渦がハルピュイアを後方から襲うと同時に前衛隊とハルピュイアの間に岩の壁が現れる。

魔方陣を空中展開させ発動したのは広範囲炎風複合魔法 フレアストーム。炎の渦から前衛隊を守ると同時にハルピュイアの気を引く為の中級土魔法 ストーンウォール。

わたしが持つディア多重魔法と魔女の高速省略詠唱、そしてこの天才的頭脳を持つエミリオ様の神的発想で実現できたスーパーコンボ。

これで焼鳥の出来上が...


「りィ!?」


突風が吹き荒れストーンウォールは風化し砂に、炎は掻き消された。風属性の攻撃をしたからストーンウォールが消えた。これは理解できるが炎は?炎に風をぶつけると炎が更に激しく燃えるハズだが...消された?


「あれがさっきから厄介なんだよね...剣術も相殺させられちゃうし」


「ハルピュイアの風は万能。全属性に対して有効なのよ」


「ボクさっきモロに浴びたから気持ち悪くて...毒かも」



わたし達の会話を止める様に空中にシルエットが浮かび上がり、小さな粒子を弾けさせハーピィが先程よりも多くリポップした。

全員がハーピィに気を取られているとハルピュイアは巨大な翼を強く凪ぎ払い突風がわたし達を叩く。


「おえぇ、やぱ毒だよこれぇ~」


「私は、麻痺っぽい」


「おわぁ~回る~」


「プンちゃ毒でひぃちゃ麻痺でエミちゃは...混乱?」



頭の中で無数のグルグル眼鏡が回る様な感覚がわたしを襲った。

歩きたい方向に歩けず、左手をポーチへ動かしたいのに右手が空気を掴み、無意識に詠唱しファイアボールを誰も居ない壁へ放ってしまった。



「んげぇ~めんごめんん~」



産まれて初めての状態異常 混乱。

ここまで恐ろしく迷惑なものだったとは...。



「やば!」


ワタポが声をあげた瞬間、わたしの身体に重く強い衝撃が。何が起こったかも解らず吹き飛ばされ地面を擦った。



「いって...なに?」



ダメージで混乱から解放され顔をあげると全員同じ様に倒れ、近くにはハーピィがホバリングしている。ハルピュイアは高く耳障りな声で笑い左右の翼を交互に扇ぐ。鋭利な突風がわたし達を斬り浮かべ、飛ばす。

壁に強く身体を打ち付け全身が重くなる中でも必死に起き上がりハーピィの爪攻撃はギリギリ回避する事が出来た。



「今のは効いたわー」



痺れる左腕をおさえハルピュイアとハーピィを視界に入れる。しかし思いの外ダメージ量も疲労も蓄積されているのか、身体が重い。プーは顔色最悪だが何とか立ち上がっているがハロルドは膝立ちが精一杯。



「わたしとワタポで戦うから2人は状態異常治してて」



逃げる事も出来ないダンジョンのボス部屋。戦う以外に選択肢はない。

近くのハーピィへ細剣で攻撃し、後ろから攻め来るハーピィには短剣でパリィ、詠唱が終了した魔術をハルピュイアへ放つも別のハーピィが盾になる。子供を盾にし攻撃を防いだハルピュイアへマナが集まり魔力と濃く混ざる感じをわたしの肌が感知した。


「魔術がくる!2人は!?」


叫び振り向くとポーションを飲み終えた様子のハロルドとプー、しかし状態異常ポーションに即効性はない。

歯噛みしハルピュイアへ視線を送った時、濃い緑色の巨大な魔方陣が怪鳥人達の前に展開されていた。


上級風魔法にも負けない範囲と威力を持つ巨大な竜巻がわたし達を呑み込み切り裂き、自由も効かない中で地面に叩き付けられた。

怪鳥人達がわたし達を見て口角をゆるりと上げ、太く鋭い爪で切り裂こうとした瞬間。

震動が地面を走り倒れるわたし達を揺らした。

隙間無く閉じられていた扉が、ゆっくり開かれそこに浮かぶ人影。



「ボス部屋じゃにゃいにょ...えぇぇぇ!?みんにゃ にゃにしてるニャ!?」



ピンクの髪を可愛らしいお団子ヘアーにしている女性がなぜか笑い言った。


言葉の中に混ざる猫感と語尾。これは猫人族ケットシーの口調。

濃いピンクの髪を持つ猫人族をわたし達は知っているし、みんな と言った事からその猫で間違いないだろう。

なぜここに猫人族が現れたのか解らない。しかしこれはチャンスだ。残る力を搾り出しわたしは言葉を吐き出した。



「ごめ、キティ。ここからわたし達を出して」



するとプーは地面とこんにちは状態でブイサインを送り、ハロルドは手を軽くあげる。ワタポは苦笑いしクゥは ほら早く助けろ。と言わんばかりの顔。



「よくわからにゃいけど...」


そう言葉を漏らすと黄金色の鎧を装備した猫人族と謎のヒーローマスクがボス部屋に突撃。残る二匹の猫人族がわたし達へ謎のポーションをかけると突然身体が軽く。

リンゴでも持ち上げるかの様にひょいっとわたし達を持ち上げ全力で走った。黄金鎧とヒーローマスクも走り後ろからはハーピィ達が。


爪に捕らえられるギリギリで部屋を出る事に成功、ハーピィ達は見えない壁に衝突し部屋からは出られない様子。

ゆっくり扉が動き、ハルピュイアの妖艶な笑顔が閉ざされた。




「助かっ...た-、ありがとキティ」


餌にされるかと思ったあの状態から安置まで生還できるとは...猫人族に感謝しとりあえずポーションで回復する。


「さっきのがボスかニャ?」


黄金色の鎧を装備している猫人族の重剣士が両眼を輝かせて言う。

まさかこの猫、戦闘狂か?


「ボスっぽいニャ」


隣にいたヒーローマスクは緑色に鼓動する瞳を揺らし研ぎ澄まされたオーラを放ちボス部屋の扉を睨み...その場にダラリと寝転がる。


「お団子だと頭爆発しそうにゃるニャ」


よく解らない事を言い放ちお団子ヘアをその場で解除、フォンから色々と取り出しヘアセットを始めるピンクと床に正座しどこから取り出したのか解らないが熱々の湯飲みをフーフーする黒髪の猫。




「(ゆりぽよと...るーさんと...だれ?)」


「(ヒーローと黄金蝉?あっワタポ ポーション分けて)」


「(なんかさ...ゆりぽよ、あの和國のイベント...ひぃちゃんなんだっけ?あの)」


「(七五三?)」


「(そうそう!それみたいで可愛いねー!)」






ついさっきまでボス戦で死にかけていたとは思えない程わたし達は元気だった。


ダメージ等は回復していないが、緊張、息詰まる空気を変えてくれたのは自由すぎる猫人族達だ。


なぜウンディー大陸まで来たのかは解らないが、ダンジョンに来た理由は解る。ダンジョン攻略だ。それはボスを討伐する事でもある。ならばここは猫人族達に声をかけ一緒にボス討伐へ挑むのが理想。



「ここのボスクソモンスなんだよね。でさ、一緒にボス倒さない?」


猫人族達へ言うとこちらのメンバーは全員頷いた。安全に確実に倒すならば人数は必要だ。

返事を待っていると予想外な声が猫人族よりも濃い口調で安置に響く。


「それはウチらも参加してええんじゃろな?」


上のエリアへ登る階段を睨むと突然姿を表すフードローブ。神出鬼没の情報屋キューレだ。ニヤリと笑い階段へ親指をさすと安置まで届く大勢の声。



「ダンジョンへ向かったとビビから連絡があってのぉ。ウチらも助けに来てやったのじゃが...ケットシーに会えるとは思っとらんかったわぃ。よろしくのぉ」



自分達よりもズバ抜けた隠蔽術を持つ人間にキャッズは一瞬驚くもすぐにこの...ダラダラした空気を出す。


上のエリアには多くの冒険者がいる。他の冒険者が安置に到着次第、ボス情報を話し作戦会議だ。



殺されかけたハズなのに、わたし達には怒りや憎しみの感情は微塵もなく不思議な気持ちが胸を焼いた。






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