第三話 盗賊狩り
「大丈夫でしたか?」
なるべく笑顔を心掛けて挨拶する。
「あっ。はい。えーっと。今のはあなたが?」
若い男の騎士がそう返してくる。
「ええ。まあ。」
「凄いですね。若いのに。」
自分も若いのだがまあ十五歳ほどの大人になったばかりの少年は20歳ほどの兵士の男からはやはりまだ子供に見えるだろう。
「助太刀感謝する。俺はカートという宜しく。」
そう言って手を差し出してきたのはフルプレートアーマにガードランスを持った男。
「どういたしまして。」
そう言って手を握り返す。
「まあ、魔法師なら見た目関係ないからな。それでお前はどうしてここに?」
「風竜の顎を越えてきたんだが……。」
「「「「風竜の顎!?」」」」
数名の兵士が驚きの声をあげる。
「お前さんは何で風竜の顎を越えた?王国に入るなら風竜の口でもいいだろうに。」
「風竜の口には関所があるでしょう。」
「お前さんも帝国から逃げてきた口か。」
「も?」
「おう。優秀な冒険者とか魔法師とかが逃げてくるんだよ。」
ちなみに冒険者とはモンスター討伐や物運び、傭兵をする職業だ。
「ああなるほど。」
貴族などの横暴だろうか。同じ貴族として恥ずかしい。
「ところで皆さんは何処へ?」
「盗賊の討伐に……な。せめて魔法師の一人位貸してくれればいいのに。これだから貴族は。」
「あー。お手伝いしましょうか?」
そう言うとカートは驚いた顔をした。
「いいのか?」
「はい。出来れば町に入る時と冒険者登録するときに身分を保証して欲しいです。」
「まあそれ位は構わんが……。向こうの身分証は無いのか?」
「はい。魔物との戦闘中に……。」
これは嘘だ。身分証はアイテムボックスの中に入っている。
「そうか災難だったな。ではお願いしよう。」
そして俺はカートさん達と共に盗賊の根城へと向かった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
盗賊の根城を叩くときは昼の方が望ましい。
何故なら盗賊は昼に拠点にいるからだ。
だからといって夜に拠点にいないということもないのだが。
「表の入り口に二人。裏の入り口に一人居ました。」
斥候兵の男がそう報告する。
「戦士五名と弓術士五名を裏口に。残りの戦士五名は俺とレオと共に表から。斥候は回りの警戒を頼む。」
兵士達も剣や槍、弓をとって立ち上がる。
「では出撃!!」
「「「応!!」」」
こんなに声出していいのだろうか?
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「先制頼む。」
「了解。」
気弾。
2つの圧搾空気の弾が男達の脳天に、直撃して意識を刈り取る。
「なんか手馴れてるな。」
「まあ帝国内でも似たようなやつはいたからな。」
実際。レオはその様なやからに十回近く襲撃された。
「ふーん。お前ら突撃。」
カートの指揮で五人の戦士が突撃していく。
「じゃあ俺もいきますか?」
そうしてアイテムボックスから
これは最近作った手軽に使える長剣だ。
そのためにJランクモンスター《レッドブル》の魔石から作ったのだ。
「お前剣使えたのか?」
「まあ。軟流剣術の6級ですね。」
この世界には大きく分けて二つの武術の流派がある。
甲流と軟流。
甲流は光の如き速さで切りつける攻撃かたの武術。
軟流は全ての技をいなし、回避し、カウンターをしたり無力化したりする武術だ。
極めるとドラゴンのブレスでさえもいなすことができるらしい。
「六級!?その年でそれだけの腕前とか剣の道目指すレベルだぞ。」
軟流にも甲流にも1から15級まであり五級からは本山でしか認定してもらえない。
「まあともかく突入しましょうか。」
そう言って根城内に突入する。
真っ直ぐと廊下を抜け階段をかけ上がる。
途中には盗賊の死体が落ちている。
二階に上がるとそこでは戦闘が行われていた。
盗賊達は酒を飲んでいたのか繰り出す攻撃はフラフラとしている。
そこに戦士達の槍が剣が突き込まれ盗賊の命を刈り取っていく。
しかし……。
「これでも食らえ!!」
放たれた赤い炎の斬撃が二人の戦士の命を刈り取る。
「「なっ!!」」
俺とカートから洩れる驚きの声。
但しカートは何が起こったのか解らないという驚き。
俺のは何故俺が造った霊器があるのかという驚き。
でもとりあえず……。
「見せてやるよ本当の霊器を!!」
俺はアイテムボックスから黒と白の鉈を取り出した。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「死ネェェェェェェ!!」
そう言って盗賊の頭は霊器を振るう。
「白蛇よ。食い尽くせ。」
白い鉈から白い蛇の様な触手が現れ炎の斬撃に絡み付き霧散させる。
さらに近づいてきた敵を斬り倒していく。
「なんで聞かないんだよ!!」
「白蛇よ。食い尽くせ。」
また放ってきた炎の斬撃を霧散させる。
一歩一歩と近づいていく。
一歩進む度に周りの盗賊も一歩下がる。
すると……。
「糞がァァァァァァ!」
反転して逃げ出すが……。
ブスッ
ドサッ
数秒間根城のなかが沈黙に支配される。
「うわーー!お頭が!」
「この野郎!!」
大混乱に陥った。
面倒臭いので雷の魔法で気絶さして縛り上げた。
その作業が終わったら日が暮れていたことだけは記しておこう。
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