第四話 鍛治都市アラルス

盗賊の討伐から数日がたった。


盗賊の根城にいた囚われた人々と溜め込んでいた財宝を馬車に詰め込み移動した。


そして見えてきたのは灰色の高く堅固な城壁。そして城門から見える黒い領主邸とあちこちから立ち上る煙。


鍛治都市アラルス。


アラルス子爵が治める鍛治を主産業とする王国一の工業都市。


「アラルスにようこそ。」


そう兵士さん達にも声をかけられた。


俺はアラルスに入った。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「レオさんはまずどうしますか?」


「そうですね。冒険者ギルドにいこうかと思います。」


「なるほど。ではキークさん頼めますか?」


斥候をしていた男が軽く右手をあげる。


「あいよっ!頼まれました。」


「キークさんは兵士じゃないんですか?」


「俺は盗賊というクラスの冒険者だ。今回は臨時で斥候として雇われたんだ。」


数分してお目当ての建物が見えてくる。


レンガ造りの三階建て、三段程の石段の上には木製に金属の枠がはまり、銀色のドアノブがついた扉がある。


扉の上には大楯の上で杖と剣と槍を交差させたマークがあり、金色の文字で『冒険者ギルド』と書いてある。


「じゃあまた機会がありましたら。」


「またなレオ!」


「キーク宜しく頼むぞ。」


兵士さん達とカートが手を振って城の方へ去っていく。


「じゃあいきますか!」


キークがそう言うと、ともに冒険者ギルドに入っていった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



冒険者ギルドに入るとドアの音で一瞬こちらを向く人がいたがすぐに興味を失い元向いていた方を向くか、キークに話し掛ける。


「おーキーク。帰って来たのか?盗賊討伐どうだった。」


「おう。盗賊討伐は完了したぞ。」


「そっちの男は誰?フード被ってて顔が見れないんだけど。」


「また手、出すなよ。こいつ強いぞ。」


「尚いい!!」


何か目を輝かせている女の人がいる。怖い。


そのまま受け付けに向かう。


さすがに冒険者ギルドの顔というべき受付だけあって、顔立ちの整った者が揃っている。


数人いる受付嬢の中には犬耳や猫耳を持った獣人もいる。


ガルシア帝国では獣人は被支配階級として低い地位に甘んじていたが、エルドレア王国ではある程度の地位は保証されている。ただ獣人の貴族は存在しないが。


「キークさん。受付嬢は綺麗な人が多いんですか?」


「まあそうだな。でも小さな支部ではそうでないこともあるな。まあどこでも受付嬢は冒険者の憧れだ。」


……ということだ。


「すいません。盗賊討伐の援軍依頼の達成と彼の冒険者登録を。」


「わかりました。キークさんは隣のカウンターでお願いします。」


キークが話しかけたのは綺麗な茶髪をポニーテールにした人間の受付嬢だった。


そう言われるとキークは隣のカウンターに移る。

「まずは初めまして。受付嬢のアイナといいます。ギルドにご用があるならお声をお掛けください。」


「では最初に冒険者についての説明をします。」

促す様に頷く。


「冒険者とは魔物討伐、盗賊討伐から傭兵、果ては何でも屋の様なことまでする職業です。しかし、個人でそれをやろうとすると騙されたり、仕事が無い時期があったりと大変です。」


「それを解消するために冒険者ギルドがあるのです。」


そして受付嬢は一息吐くと再び喋り出す。


「次にクラスとランクというものを説明します。まずランクですが、これはS,A,B,C,D,E,F,G,H,I,J,K,L,M,Nと15個に分かれています。」


「S,A,Bは一級冒険者。C,D,Eは二級冒険者。F,G,Hは三級冒険者。I,J,Kは四級冒険者。L,M,Nは五級冒険者となっています。また級が上がるときはそれぞれテストがあります。」


「そしてクラスですがこれは端的にどんな戦闘スタイルなのかを示すもので、前衛で攻撃するのは戦士、前衛で敵の攻撃を受けるのは盾士、近接武器も弓も使いこなすのはレンジャー、弓を使うのは弓士、魔法を使うのは魔法士、回復を行うのはヒーラー、魔法も回復も行うのはプリースト、魔法を使う前衛を魔法戦士、回復を行う前衛をパラディン、罠の解除や斥候を行う盗賊などがあります。」


そのあと細々とした利用規約を説明される。


「ではここに名前と歳、クラス、武器と特技をお書き下さい。」


差し出された紙に羽ペンで文字を記入していく。


「終わりました。」


「届け出を受理しました。しばらくお待ちください。」


そう言って受付嬢は奥に引っ込む。


少しすると……。


「お待たせしました。レオ様は盗賊討伐の助力によりLランクスタートです。」



ランク:L

名前:レオ

年齢:15

クラス:魔法戦士

武器:剣、槍

特技:軟流剣術長級

   軟流槍術長級

   雷魔法術将級

   風魔法術将級

地魔法術将級

炎魔法術将級

   水魔法術長級

   氷魔法術長級

   光魔法術士級

   空間魔法術士級

   治療魔法術番級


この世界では武術、魔法術は同じ階位名が用いられており、神級、帝級、聖級、王級で上級者。公級、将級、長級、士級が中級者。番級、夫級、徒級、丁級が下級者。また、始めたばかりの者を子級。武術に限って言えば、もっとも強い者を元級と呼ぶ。


「クラスによって会員料金が変わります。また二級冒険者以上になると得点がつきますので頑張ってください。」


「ランクアップは上の級に挑むのに依頼達成回数は関係無いんでしたよね?」


「はい、そうですね。」


「ではランクアップの申請お願いします。」


「承りました。後日、連絡いたします。」


「後、この街で一番サービスが良い宿は何処ですか?」


「それなら蹄鉄亭が一番ですね。高級というわけではないのですが、主人が元冒険者なので冒険者に嬉しい気遣いがされているんですよ。」


手続きが終わるときちんと今夜の宿候補を聞き出し、受付を離れる。


「そっちも終わったか。」


「さっさとその獲……新人を紹介しなさいよ。」


「今とても不穏な単語が聞こえたんだが。こいつは帝国から逃げてきた魔法戦士。」


「レオと言う宜しく。」


「OK.レオ。私はイリア。Gランク冒険者よ。クラスは拳士。」


「俺はガーランド。Hランク冒険者だ。クラスは盾士だな。」


「レオはこれから予定あるのか?」


そうキークが聞いてくる。


「ああ。宿を取りに行く。」


「そうか。何かあったら連絡してくれ。俺達はパーティーランクHの黒衣の宴だ。」


「わかった。」


「おう。今度手合わせ頼む。」


「自重しろ、新人食いが!」


少し後ろが五月蝿かったり、不穏な単語が聞こえたが、こうしてギルドを後にした。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



「ここか……。」


黒い蹄鉄のマークが描かれた看板が釣り下がっている。


宿の大きさは他の宿の二倍ほどある。


ギィッと扉を開けると、そこにはまだ日が暮れていないというのもあってほとんど人の姿がなかった。幾つかの机でポツポツと軽食のようなものを食べている者達がいるくらいだ。


「いらっしゃい。食事ですか?泊まりですか?」


宿に入ったレオを見た恰幅の良い中年の女性が声をかけてくる。


「泊まりでお願いします。」


レオの言葉を聞いた女はニコリと人好きのする笑顔を浮かべながら頷く。


「はい、ありがとうございます。個室か雑魚寝部屋、個室なら一級~三級の部屋まで有りますが?」


「二級の部屋にしてください。」


「承知しました。宿泊料は前払いで朝と夜の食事がついて一泊銀貨五枚です。一週間以上の先払いで銀貨三枚です。」


「一週間でお願いします。」


そう言って大銀貨二枚と銀貨一枚を渡す。


「丁度お預かりしました。では部屋まで案内しますね。申し遅れました、蹄鉄亭の女将をやっていますラエといいます。」


「レオと言います。暫く宜しくお願いします。」


そして部屋まで案内された後、食堂で夕食をとりその日は早く寝た。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



魔法術の種類


・炎魔法術:火に関する魔法術のこと。強化は筋力。魔石の色は赤。


・水魔法術:水に関する魔法術のこと。強化は器用さ。魔石の色は青。


・風魔法術:風に関する魔法術のこと。強化は敏捷。魔石の色は緑色。


・地魔法術:地に関する魔法術のこと。強化は硬化。魔石の色は黄色。


・雷魔法術:雷に関する魔法術のこと。強化は処理。魔石の色は紫。


・氷魔法術:氷に関する魔法術のこと。強化は胆力。魔石の色は水色。


・光魔法術:光に関する魔法術のこと。強化は免疫。魔石の色は白。


・空間魔法術:空間を操る魔法術。魔石の色は黒。


・幻魔法術:幻を作り出す魔法術。魔石の色は暗褐色。


・治療魔法術:癒しの魔法術。魔石の色は桃色。


・召喚魔術:魔法術ではない。モンスターを使役する。


・精霊魔術:精霊と契約する術。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



貨幣の価値目安


真鍮貨:一円

白石貨:十円

鉄貨 :百円

銅貨 :千円

大銅貨:五千円

銀貨 :一万円

大銀貨:五万円

金貨 :十万円

大金貨:五十万円

白金貨:百万円

竜金貨:一千万円


竜金:竜の鱗から採った金属。魔法金属を除けばもっとも価値が高い金属。

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