アーネ組VSエルサレム2
超高等魔法『キメラ』。
使い魔数匹と融合し、強化する魔法。
これは大量の魔力の消費や主人と使い魔の心が通ないといけないなど色々条件がついているため、成功率はまだ六割ほど。
今回成功したのは幸運ね……多分エルサレムを倒したい気持ちが一つになった結果かしら。
だけど成功しても発動、そして攻撃する度に普段の何倍の魔力を消費してしまうから長くはもたない。
「一気に決めるわよ!」
((了解!))
「グルルルルルル……」
アーマーリザードはよだれを垂らし、私を睨み付ける。
理性を失っていても相手が急に強くなったことを本能的に察し、牽制しているようだ。
「まさかそのような魔法を隠し持っていたとはな。だが我が最強の兵の敵ではない! さぁ行けアーマーリザードよ!」
ビシッ!
「ギャオォォォォォォォォォ!!」
エルサレムがアーマーリザードに鞭を叩き、アーマーリザードを動かした。
というか刺激をして動かしたと言った方がいい。
アーマーリザードは私に向かって勢いよく拳を振り上げた。
その拳は振り上げたと思ったら、一瞬で私の目の前に振り降ろされる。
ドーーーーン!
アーマーリザードの目にも止まらないパンチは地面に穴を開け、その周辺を粉々にした。
「どこ殴ってんのよ」
私の言葉にアーマーリザードは声のした上を見上げた。
アーマーリザードは戸惑っているでしょう。
なぜなら殴ったはずの私がすぐ近くにある建物の屋根の上に立っているからだ。
「驚いた? 今の私はウルルンの素早さも兼ね備えてるから、あなたの動きなんか遅く感じるわ」
「ギャオォォォォォォォォォ!!」
アーマーリザードが手で建物をよじ登り、こっちに近づいてきた。
「さぁ、行くわよ」
私はジャンプした。
アーマーリザードに向かって落ちながら、私は右手を上げた。
「行くわよウルルン!」
(おうよ!)
「(炎よ燃えろ! 熱き魔獣の爪! 『フレイムネイル』)」
私とウルルンが揃えて呪文を唱えると、上げた手から大きな炎を出し、その炎は段々と形を変え、巨大な狼の手になった。
「はぁ!」
「グガァ!」
私は炎の狼の爪でアーマーリザードを引っ掻いた。
アーマーリザードの胸元に赤く光る爪痕を刻み、その爪痕から黒い煙と焦げた匂いがした。
「グ、グゴアァァァァァァ!」
傷を負って苦しそうにしているアーマーリザード。
これは効いている。
「くっ……! 光よ癒せ!『ヒール』」
だがエルサレムがヒールを使って傷を癒し、アーマーリザードは立ち上がった。
「ふ、驚きはしたが、回復を使えば大したことはない!」
「だったら回復も追い付かないくらいの攻撃をすればいい! スネーリア!」
(了解)
「(風を吹け! 荒ぶる嵐の双撃! 『ツインストーム』)」
今度は私は両手をかざし、蛇の尻尾を相手に向けると、手と蛇の口から竜巻を繰り出した。
「グォォォォォォォォォォォ!」
アーマーリザードは二つの竜巻によって吹き飛んだ。
「大地よ壁となれ! 『ロックガード』」
だが、エルサレムが地面からコンクリートの壁を出し、竜巻を防いだ。
「ちっ!」
アーマーリザードは転がりながら、体勢を整えて、私に向かって走りだし、途中で捨てた剣を拾った。
私は迎え撃とうとしたがーー。
「火よ降り注げ! 『ファイアレイン』」
エルサレムが唱えた火の雨が私を降り注ぎ、私は避けるのに必死だった。
「ギャオォォォォォォォォォ!」
その隙にアーマーリザードは私に剣を振り、私は避けた。
アーマーリザードの攻撃にエルサレムの魔法の援護……キメラが長くもたない分、これは思ったより面倒ね……。
だったらーー。
「ふん! 攻撃さえ当たらなければ何も意味はないわね!」
「ならば大地よ突き上げろ! 『ロックランス』」
エルサレムは今度は地面から岩のトゲを突き上げてきた。
私は必死に避けて、アーマーリザードの後ろに回り込み、エルサレムが後ろにいる状態になった。
「ふん!」
私はアーマーリザードの手に蹴りを入れ、持っていた剣が宙を舞った。
「食らえ!」
「させるか! 風よ捕縛せよ! 『ウインドバインド』」
私はアーマーリザードに続けて攻撃しようと思ったら、エルサレムの魔法で私は竜巻に縛られて動けなくなった。
「くっ……」
「ギャオォォォォォォォォォ!」
アーマーリザードは思いっきり拳を後ろに振り上げて、ものすごい速さのパンチを繰り出した。
「ぐっ……!」
私は手を交差させてパンチを防いだ。
ミシミシと骨が鳴り、ヒビが入るかもしれないくらいの衝撃で、私は吹っ飛んだ。
吹き飛んだ私はワイバーンに乗ったエルサレムの元に一直線に向かい、そのまま真横を通り過ぎた。
「さぁ、とどめをさそーー」
ギュウ!
「ぐうっ!?」
エルサレムが突然苦しんだ。
なぜならエルサレムの腹に、私の蛇の尻尾が巻き、引っ張られたからだ。
エルサレムはワイバーンに捕まって、私はエルサレムに引っつき、ぶら下がった。
これはエルサレムが厄介だから、まずは奴に近づく作戦だ。
近づくために、違和感を無くすためにアーマーリザードを利用したけど、腕がすっごく痛い……。
それにエルサレムに近づいた理由はそれだけじゃない。
「スネーリア!」
(わかってるわ)
カブ!
「ぐあっ!」
スネーリアの精神が入った尻尾の蛇が、牙を立ててエルサレムの脇腹を噛んだ。
「(魔力を吸い尽くせ! 『マジックドレイン』)」
「ぐおぉぉぉあぁぁぁ……」
他人の魔力を吸って自分の魔力にする「マジックドレイン」。
私はエルサレムの魔力をスネーリアが噛みついた蛇の口経由で吸っている。
エルサレムを狙ったのは魔力を大量消費した「キメラ」の回復のためもあった。
蛇の牙のダメージに魔力の吸引。エルサレムにとってそれはダメージになってるはず。
「ぐ……力が……」
魔力不足で力尽きたエルサレムは、ワイバーンから落ちた。
「ぐぅ!」
エルサレムは頭から落ちて、大きなたんこぶを出来て、そのまま動かなくなった。
ワイバーンはそんなに高く飛んでなかったから、死んではないと思うけど、あっけない倒され方ね。
「さて……」
「グルルルルルルルル……」
残るはアーマーリザードだけ。
エルサレムを倒したし、エルサレムの魔力を吸ったからまだ大分もつ。
「大技決めるわよ」
((了解!))
「ギャオォォォォォォォォォ!!」
アーマーリザードは私に向かって突進してきた。
落ちた剣を再び拾い、ブンブンと振り回しながら走って来た。
私は両手を前に突き出し、尻尾の蛇の顔を私の頭上に構えて、口を開けた。
「((炎よ燃えろ!))」
私達が合わせて炎の呪文を唱えると、両手、蛇の口から三つの炎を出し、その中心に自分の体以上に大きな火の玉を出した。
「((炎を一つとなりて、紅蓮の大砲を解き放て! フレイムバスター!))」
ドーーーーーーーーーーーン!!
全魔力を注いで炎の光線を放つ大技「フレイムバスター」。
火の玉ほどの大きさのある赤い光線は、アーマーリザードに命中した。
「グゴアァァァァァァァァァ……」
アーマーリザードはフレイムバスターにより焼き付くされ、そのまま灰となって散っていった。
放ち終えると、フレイムバスターの放たれた方向は地面がえぐれて黒く焦げていた。
「はぁ……はぁ……」
私は倒れた。
そして「キメラ」も解かれて、私は元に戻り、すぐそばにスネーリアとウルルンが同じように倒れた。
(ったく、相当消費したぞ……)
(とりあえず今は動けそうにないわね……)
魔力を限界まで使ったから、もう私達全員は動けそうにない。
まだノーマルディアが戦っているのに……倒したら加勢するって言ったのに……。
動きたくても体は言うことを聞かない。
「ノーマルディア、死ぬんじゃないわよ……」
私は魔力不足と疲労による強い眠気に誘われ、ボロボロの地面を最後に意識を失った。
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