騒動中での意外な真実
目の前のワイバーンと骸骨がやられるという光景に俺達は唖然としていた。
爆音がおさまり、舞い散った土埃が晴れると、そこにはーー。
「シャーーーーッ」
「ガルルルルルル」
『……でっか!』
俺達の目の前には巨大な紫のヘビと赤い狼がそこにいて、そのデカさに叫んだ。
「まったく……せっかく人化解いたのにどんだけ時間かかってんのよ!」
(しゃあねぇだろ! マスターが人は殺すなって言ったんだから!)
(あちこち人がたくさんで少し時間がかかっちゃったわ)
頭の中から声が響いている。
この声といいアーネをマスターと呼ぶ……もしかして……。
「こいつらってスネーリアとウルルン?」
「そう。これがあいつらの本来の姿よ」
マジすか……こいつら普段はこんなでかかったんだ。
というか本来がこれであの力ってことは、人型だった今まではリミッターをかけてたってことか……こいつらもすごいがそれを従えているアーネもすごいなおい。
「貴様魔獣使いか……! おのれ我が下僕をよくも!」
「あんたらみたいな烏合の衆が私達に敵うわけないでしょ」
ワイバーンに乗りながらエルサレムが悔しがっている。
「こうなれば……いでよ! 我が契約に応えし者よ!」
エルサレムが呪文ようなのを唱えると、俺達のすぐ近くの地面が光り、魔法陣を出た。
「一体何が起こるんだ?」
「召喚魔法よ。契約したモンスターを魔法陣から出すつもりよ」
「この世界からでもか?」
「主と契約すれば魔法陣によってどこへでも召喚出来るわ」
俺がアーネと話していると、魔法陣から何か黒い影が現れた。
そして光が静まるとーー。
「グルルルルルルルル」
そこには大きな剣と盾を持ち、兜と軽装の鎧を着けて武装をした二本足のトカゲだった。
「アーマードリザード……少しやっかいね」
「そうなのか?」
たしかに強そうだが、背丈は俺達より少しデカいぐらいで、アーネが言うほどやっかいとは思えない。
「アーマードリザードはその力と身軽さで一匹で一つの軍隊を壊滅するほどの力を持ってるのよ」
「マジで……」
そんなに強いのかよ……アーネの言葉で一気に不安になって来た。
「それより、アンタ達は自分の家のこと心配しなさい」
「は?」
「こいつらは次元の穴から来た。だったらアンタと歩美の家の方から来たってことでしょ」
「「あ!」」
たしかに次元の穴を通った奴は皆、うちの方にに来る。だとしたらあっちが危ない……。
「一応、私が将太郎(歩美の父親)に言って住民をふれあい会館っていう所に避難させたけど、一応行った方がいいわよ」
「あ、ああ、わかった……歩美、ニコさん、行こう!」
「うん!」
「はい!」
「金山達はどうする?」
「僕も心配だから家族の所に行く。ユイ、浅羽さんを頼む」
「ああ、兵藤変われ」
歩美は岩下に浅羽さんを渡し、俺と歩美とニコ、金山と浅羽さんをおぶった岩下は二手に別れて自分の家に向かうことにした。
「じゃあアーネ……がんばれよ」
「言われなくても負けないわよ。私を誰だと思ってるの?」
「フクロダさんに負けっぱなしの自称ライバル(笑)」
「ぶっ飛ばすわよ! 早く行きなさい!」
俺は怒ったアーネを見たのを最後に、俺達は学校の駐輪場に戻った。
***
急いで学校に戻った俺達は鯵坂、兵藤、ニコは自転車で村の方に行って、俺とおぶった浅羽、そしてスズはその場に残った。
学校はもう放課後だから中には誰もいないみたいだ。
「ん……あれ? ここは……」
「目ぇ覚めたか浅羽」
気を失ってた浅羽が目を覚まし、俺は浅羽を下ろした。
「岩下君、金山君……一体どうして?」
「浅羽さん、いきなりで悪いんだけど今この町は危険なんだよ」
「え? 一体どういうーー」
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「「「!?」」」
学校から女性の悲鳴が聞こえた。
悲鳴は職員室辺りに聞こえた。
「……もしかして!」
「おいスズ」
女性の悲鳴が聞こえると、何かを感じたのか、スズがダッシュで学校の中に入っていった。
下駄箱のある入り口から入っていき、階段を上がって、声のした職員室に向かうとーー。
「あっ!」
「うおあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
そこには英語の長井や数学の坂本とかが、職員室のイスやらでっかい定規とか持って廊下で暴れている。
そのスズの担任の船橋が怯えてる数人の生徒の前にかばうように立っていた。
「先生怖いよ……」
「大丈夫だから! 先生方! 目を覚ましてください!」
「ぐがあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
先公達は聞く耳を持ってねぇ。
船橋も勇敢に立ち向かってるが、足が震えていた。
「きしぇぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
英語の長井が奇声をあげながら、船橋に向かってイスを振りかぶりながら歩き出した。
やべぇ、船橋は目をつぶってビビってる。
こうなりゃ行くしかーー。
「梨花!」
「……梨花?」
スズが叫びながら長井に向かって走り出し、腰に向かって突っ込んで一緒に倒れた。
その時に長井が持ったイスを離した。
俺はスズの梨花発言に驚いて、俺は遅れて走り出した。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
長井がジタバタと暴れて、スズは止めるのに必死だった。
俺は長井を起き上がらせてーー。
「うぉ……りあ!」
腰を抱えて逆さにするように上に上げて落とし、パワーボムを食らわした。
長井は動かなくなった。
「があぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「うおら!」
今度は暴れるかもしれないから、数学の坂本にラリアットを食らわした。
坂本は動かなくなった。
「岩下君、容赦ないんですけど……」
「あぁ? 被害をくわえてんだからいいだろ」
とりあえず安全になった。
俺は船橋達を見てみるとーー。
「梨花無事か!?」
「スー君!」
スズと教師の船橋が抱き合っている。
「「スー君?」」
この光景に俺と浅羽と船橋の後ろの生徒数人が見ていた。
「私怖かった……」
「大丈夫だから! 心配しないで!」
スズの胸の中で船橋が泣いている。
これはどういった状況なんだ?
「なぁスズ……」
「あ……」
「え? ……きゃあ! 浅羽さんと岩下君! うああ! 後ろにもいるの忘れてた!」
俺達に気づいたスズは気まずそうな顔をして、我に帰った船橋が慌てふためいていた。
「あの、船橋先生と金山君ってどういったご関係ですか?」
「……あ」
俺はあることを思い出した。
「……なぁスズ、もしかしてなんだが、前に言ってた年上の彼女って……船橋」
「…………(コクン)」
『ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!』
俺は前にスズから「年上の彼女」に聞いたことがあった。
もしかしてそれについて聞いてみると、スズが首を縦に振ると俺以外の奴等が声をあげて驚いた。
俺は驚き過ぎて声が出なかった。
まさかスズの彼女が教師だったとは……。
「マジか……」
「いやあの、先生と生徒ですよね!? そんな禁断の恋路が許されるとお思いですか!?」
浅羽が混乱しながら二人に指摘した。
「大丈夫! 梨花と付き合いだしたのは教師になる前だからギリギリセーフ!」
「いやアウトだろ……ギリギリってことは少なくともスズが中学生で、少なくとも船橋20代だよな?」
「う……」
スズは何も言えず黙りこんだ。
「スー君、もういいの……」
船橋が全てを諦めたような顔で立ち上がった。
「白状します。私、船橋 梨花は金山 涼樹君と交際しています」
いやこんな状況でカミングアウトされてもな……。
「出会いは私が高校生の頃でした」
そして語りだした!? この状況で!
「私と金山君の親同士が仲がよく、その縁でこの町の高校に通うことになった私は、金山君の家で一時お世話になってました。それでその時に当時小学生だった金山君に…………一目惚れしました」
「いやいやいやいや待て待て待て待て、おかしいだろ。何で小学生のスズに惚れんだよ」
「私昔はショタコンなの! 小学生の男の子とか見てると興奮しちゃうのよ! だから小学生のスー君がなついてくると、襲いたい欲求で爆発しそうになるのよ!」
『うわー……』
顔を両手で押さえながら暴露した船橋に俺達は引いた……。
どうしてこんな状況で教師の性癖聞かなきゃいけないんだよ。
「なんとかスー君が中学生になるまでは理性を保ったわ。それでスー君がーー」
「僕の方から梨花に恋愛的に好きになって告白したんだよ。それで……梨花の方から」
「あぁ、ヤったんだ」
「……うん、思いの他激しかった……」
もう俺達は何も言えなかった。
何でこんな状況で教師の性癖と幼なじみの童貞卒業の話を聞かなきゃいけないんだよ。
「それで梨花が他県の大学に行って今年からお互い高校に来て、正式に付き合いだしたんだ」
「もう……町の危機と今の姿を見せつけちゃって、もうやけになってたわ……今冷静に考えると私は生徒の前で何を言ってるのかしら……」
いや今更冷静になっても……。
バリン! バリン!
「!?」
そんな下らない話をしていると、後ろからガラスの割れる音がした。
『あぁぁぁぁぁぁぁぁ~』
後ろには長井や坂本みたいに武器を持って暴れている二高の連中が窓を割って侵入してきた。
まるでゾンビ映画だな。
「ちっ! 来やがった!」
俺は長井が持ってた職員室のイスを持った。
「スズ、浅羽、船橋連れて逃げろ」
「何言ってんだよユイ! 今のこいつらは手加減を知らない! もしかしたら死ぬかもしれないんだよ!」
「心配すんな。こんな大勢の喧嘩なんて慣れてる。それに喧嘩の経験がねぇお前らがいても足手まといになるだけだ」
「くっ……! …………わかった、梨花、浅羽さん行こう」
「いいんですか!?」
「行こう!」
「……はい」
スズの必死の眼差しにによって浅羽を説得し、全員どっかに行った。
「うし!」
『あぁぁぁぁぁぁぁぁ~』
俺はスズ達を逃がすために、こいつらを何とかしなくちゃな!
「うぉらあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
俺はヤケクソなのか心の中で諦めてるのか、顔をにやつかせながらあいつらに向かって突っ込んだ。
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