まとめ

 俺達はそれぞれ情報を手に入れて、再び俺の家に集合した。

 浅羽さんは鳥の鳴き声に限界を感じたらしく、早めに帰った。

 歩美も岩下も宿題という行動に精神の限界を感じたのか二人は横になってダウンしている。

 二人は放っといて、金山がそれぞれの情報をまとめるとーー。


「集めた情報をまとめた結果、やっぱり宇宙人伝説の正体は、フクロダさんのいた世界の人ということだね」


「ああ、元々その次元の穴っていうのは大罪を犯した人の処刑場の役割をしてるみたいだから、薄汚れた服は囚人服で、翻訳魔法をかけられて、魔力を封じられて、この村に着き、どっかで暮らしているということだろうな」


 これで宇宙人伝説の宇宙人の正体はわかったんだが……。


「でも、色々謎が残ってるんだよね」


 金山の言うとおり、皆が集めた情報を聞いて色々疑問が残った。


 異世界の人はどうして俺達のいる世界のことを知っているのか?

 どうしてこの村に異世界人が来るのか?

 昔は一定の場所にワープして来たのに、どうして今はバラバラなのか? と色々ある。

 あとは昔は魔力を封じられたのに、フクロダさんは魔力を半減するだけっていうのも気になる。


「ニコさん、その辺のことについて何か知ってますか?」


「いえ、そこまで昔のことは……あのとき神主さんの家で言おうとしたんですが、私は人里離れた森でこもっていましたので世間のことはちょっと……」


「そうですか……」


 そういえば黒髪が理由で忌み子扱いされたからだっけ。

 じゃああとはーー。


「ただいま帰りました~」


 お、グッドタイミング。

 こうなったらフクロダさんに直接聞くしかないな。


「いや~すみません。飛鳥ちゃん達と双六やってたら遅くなりまして、おや? 皆さんお揃いで?」


「フクロダさん、ちょっと聞きたいことがあるんですけどーー」


 俺はフクロダさんに、今日インタビューをしてまとめたこととその思った疑問を話した。


「なるほど、そういうことですか」


「それで何で異世界人がこの世界のことを知ってるのか。何でこの村に異世界人がワープして来るのかとか、わかることがあったら色々教えて欲しいんですけど」


「んーわかりました。私も魔法の師匠に聞いた話なんですが、それでもいいのであればお話ししましょう」


 そう言ってフクロダさんは座布団を用意して俺達の前に座った。


「そうですね……この話を始めるには次元の穴について話すべきですね。そもそも次元の穴というのはとある魔術師の失敗から生まれた偶然の産物なのです」


「失敗?」


「はい、今から50年ほど前のこと、お金がない魔術師がタダで楽に引っ越しをしたいがために建物ごと転移する魔法の実験をしている時でした。それがどういうわけか、家の床に正体不明の大きな穴が空いてしまったそうです。それが次元の穴の誕生です」


 そんな節約的な理由で処刑場が出来上がったのかよ……。


「魔術師は友を集めて自分を縄で縛り、仲間に縄をもってもらい、穴の中を調べ始めました。するとそこにあったのが日本、つまりここなんだと思います」


 なるほど、それでこの村のことがわかったってことなのか。


「別世界と繋がったことに町中は驚きました。魔術師がいた町の偉い方々は何が起こるかわからない別世界を、大罪人を捨てるごみ箱として、今の処刑場の原型が出来上がりました」


 なんだそれ……この世界はごみ箱ってか。そんな罪人を放り出すなんて、ここに住んでる俺達はどうでもいいってか。

 いや、当時人が少ないこの辺だ。もしかしたら人は見てないかもしれない。


「ですが、それから約40年後、町で大きな戦争が起きました」


「ノーマル様、それって……」


「はい、ニコの父親が起こしたクーデターです」


「「え!?」」


 その言葉に俺と金山は驚き、ニコがうつむいた。

 ニコの父親はそんなヤバい人だったのか……。


「その戦争の影響で次元の穴にあった魔法陣が一部欠けてしまい、一時期次元の穴は機能しなくなりました。死んでしまった次元の穴を作った魔術師が残したメモを参考に修復はしましたが、完全ではない状態で復活しました。おそらくそれがワープする場所がバラバラになった理由だと思います」


「なるほど……」


 それでそうなったのか。

 やっぱりそれぞれ理由があるんだな。


「それでどうして魔力を封じることから半減ってことになったんですか?」


「あれは元々魔力を封じることではなく、体の中にある魔力を蓄える器官を機能しなくする魔法なんです。我々の世界の人間にはこの世界にはない器官があるんです」


「よく知ってますね。そんな器官があるなんて」


「実はフクロウカフェの店長が体を悪くしてレントゲンを見たことがありまして、それで見つけたんです」


 病院はさぞかし驚いただろうねぇ。そんなフクロウ人間が一緒だと……。


「それでその魔法はあくまで人間の器官を封じます。私は半分フクロウなので効果も半分ということです」


「なるほど……」


 これで色々繋がった。

 それで今までの状況が作られたってことなんだな。


「あ、フクロダさん、これ。ユイが持ってきた異世界人が書いた日記みたいです」


 金山は岩下が駐在さんから借りたというノートを渡した。

 フクロダさんがそれをめくるとーー。


「たしかに私の世界の文字ですね。おそらく知られたくないようにここの文字で書かないようにしたようですね」


 知られたくないって、よほど赤裸々なことが書いてあるんだな。


「へぇ、どんなことが書いてあるんですか?」


 聞くのか金山!? 赤裸々かもしれない日記の内容を!


「そうですね、かいつまんで言うと『いきなり見ず知らずの人に話しかけてきて気持ち悪い』とか『世話してくれるのは嬉しいけど、近づきすぎ』とか『優しくするふりをして、隙を狙って殺して金を持って逃げよう』とかですね」


 ラナさんひどい!

 たしかに初対面の人相手だったら正しいかもしれない! でも優しくしてくれる人相手にそれはないんじゃない!

 駐在さん結婚も考えてたのに報われないじゃん!


「これで疑問は全部解決したね耀助。でも異世界に帰る方法はなかったね」


「ああ、フクロダさんとニコさんが帰れると思ったんだけどな……」


「「え?」」


「え?」


 俺の言葉にフクロダさんとニコが首をかしげた。


「えっと……二人は帰りたくないんですか?」


「あー……たしかに帰りたいとは思いましたよ。ですがここの居心地がよいので忘れてしまいますね」


「私は……帰りたくありません」


「え?」


「私は耀助さん達と一緒にいたいです。ここで普通の生活を送りたいです」


 そうか、フクロダさんはともかく、ニコは向こうで嫌な目にあってるからな……。


「あ、決してノーマル様との生活が嫌なわけではありません!」


「わかってますよ。ニコの過去のことはよく知ってますから。あ、でも、アーネ達は戻りたいですし、知りたくはありますね」


 そういえばアーネのことすっかり忘れてたわ……。

 でもアーネは正直どうでもいいけど、いなくなれば静かになるかな?


「そうですか。ならいいです」


 俺はフクロダさん達に笑顔でそう答えた。

 俺もフクロダさん達と一緒にいたいしな。


「さて、これで宇宙人伝説の真相はわかった。だけど耀助、一個問題が出来た」


 金山が突然何か言い出した。


「問題?」


「これ、どう説明するの?」


「……あ」


 そうだ……さすがに宇宙人の正体が異世界人だなんて自由研究にまとめても、おふざけとしか思われねぇ……。


「ハハハ……どうしよう……」


 結局、宇宙人伝説はインタビューした人の話を元に、歩美と岩下以外で作り話をでっち上げることとなってしまった。

 違和感のない作り話を作るのに数日かかってしまい、異世界人のことは皆の心の中に閉まっておくこととなった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る