フクロダVSアーネ

 アーネが呪文を唱えると、付き添いの二人が変身して、この状況に俺達は唖然としている。


「フクロダさん! あれ何なんですか!?」


「あのお付きの二人は人間ではなく、人間の姿をした動物、使い魔です。『契獣魔法』といって契約した使い魔を強化させる魔法。アーネの得意な魔法ですね」


 マジか……あの紫の女性はヘビ、あの赤い髪の男性は……狼ってとこか?


「さあ行きなさい! スネーリア!」


「はいはい」


「ウルルン!」


「おう!」


 アーネが名前を呼ぶと二人は返事をした。

 女性の方はいいとして、男性のウルルンって……。


「プッ! ウルルンって可愛い名前だな……」


「笑うなあ! マスター! いつもこの名前で笑われてるんだけど!」


「仕方ないでしょ! 最初チ○ポ小さいからメスだと思ったのよ!」


「ぐふっ!」


 おいおい女の子が口にしちゃいけない単語が出てきたぞ。

 そして味方が精神的ダメージ受けてるぞ。


「とにかく行きなさい! 私は魔法で援護するわ!」


「おう……」


「さて、行くわよ」


 二人はフクロダさんに迫ってきた。

 まずはスネーリアがフクロダさんに巻き付き身動きをとれなくした。


「ウルルン今よ!」


「うおら!」


 そしてウルルンが伸びた爪でフクロダさんの顔に襲いかかるもーー。


「ぬ!」


「何!?」


 巻き付かれた片足を強引に振りほどき、足でウルルンの腹を掴んだ。


「なっ!?」


 爪はギリギリ顔に当たらず、攻撃を防ぐことができた。


「ふん!」


 そしてフクロダさんはウルルンを腹を蹴り、吹っ飛ばした。


「なんてバカ力だ! スネーリア! ちゃんと縛っとけよ!」


「ごめんね、思った以上にパワーがすごいからこれで……ね!」


 ガブ!


「ぐっ!?」


 スネーリアの鋭い牙でフクロダさんの首筋に噛みついた。

 スネーリアがほどくとフクロダさんが倒れた。


「フクロダさん!」


「体……が……」


「安心して、私は毒蛇だけど、死ぬようなことはないわ。しばらく麻痺するくらいよ」


 フクロダさんが起きようとしているが、体に力が入らないのか横になったままだ。


「あら? 私が出ることはなかったわね、つまんないの。ウルルン、とどめはあんたがやっていいわ」


「うーす、マスター」


 やばい! フクロダさんがピンチだなんとかしないと!

 歩美は混乱して放心状態で動かない。

 金山は先生を連れて家に……。

 ニコは俺の後ろ……あれいない!? いつの間にかいなくなってる!

 くそ! こうなったら……。


「待て!」


 俺はフクロダさんの前に立ちはだかった。


「どけガキ、邪魔だ」


「耀助さん……私のことは気にせず逃げてください……」


「嫌です! たとえ半ば強引でも俺はフクロダさんの主です。見捨てるなんてできません!」


 ……とは言ったものの……ぶっちゃけノープランだ。足の震えが止まらない。

 相手は獣人、こっちはただの高校生、勝てるわけがない。

 この獣人に少しでも情があるなら、この雑魚めを見逃したりはーー。


「ちっ! もういい、ミンチにしてやる」


 しなかったぁぁぁぁ! ミンチ嫌ぁぁぁぁ!

 ウルルンの伸びた爪が俺に襲いかかる。

 あ……死んだかも……。


 パン!


「!?」


「がぁぁぁぁぁ!目がぁぁぁ目がぁぁぁ!」


 突然ウルルンが目を押さえて悶えている。

 近くにはBB弾が落ちてあった。


「お、当たった!」


 声の方を振り向くと、そこにはエアガンを持った金山がいた。


「金山!? それ父のエアガンじゃん!」


 持っていたのは父の趣味であるエアガンコレクションの一つであった。


「やばげな雰囲気だから、先生連れてくついでに持ってきた。役に立ったみたいだね」


 まあおかげで助かったけど……。


「……ハッ! 耀助!」


 放心状態だった歩美が我に返り、金山と一緒に急いでこっちに来た。


「ねえ何なの!? 何が起こってるの!? いきなり火の玉とかヘビとか!」


「落ち着いて兵藤、信じられないと思うけどフクロダさんとニコさんは異世界の魔法使いで、あいつらはフクロダさんを倒しにきたんだよ」


「そうだ……ちょっと待て、何で金山が知ってるんだ?」


「ここに初めて来たときフクロダさんが話してくれたよ」


 あの時の駄弁ったときか! フクロダさんめちゃめちゃおしゃべりじゃん! 隠す気ないじゃん!


「えい」


「がっ!?」


 いきなりフクロダさんが声をあげると、背中に見覚えのある注射器が刺さっていた。

 縁側の方からニコが薬を投げたようだ。


「ニコさん!」


「ど……毒消しの薬、持ってきました」


 フクロダさんが背中の注射器を抜くと、毒が抜けたのかすぐに立ち上がった。


「ありがとうございますニコ、ですがこれは私の問題です。早くお逃げください」


「何言ってるんですか。耀助が立ち向かうのに逃げるわけにはいかないじゃないですか」


「アタシも何が何だかまだわからないけど、耀助傷つけようとしたあいつらを許せない!」


「私も……がんばります」


 3人はヤル気満々だ。

 

「ふん! 魔法使いじゃないあんた達に勝てるわけがないでしょ!」


 たしかに数はこっちが有利だが、こっちは魔力半減のフクロウ人間に薬使いの弟子。

 そして魔法が使えない普通の人間3人。勝てる見込みがない。……。


「ちっ! ぞろぞろと、さっさと済ませるぞ!」


 ウルルンがこっちめがけて走りだした。

 目にも止まらぬ速さで、鋭い爪が俺達に襲いかかーー。


「邪魔!!」


「ぐふあ!?」


「「「「ええええええええ!?」」」」


 ーーろうとしたが、歩美がウルルンに足が見えないほどの速さでハイキックをくりだした。

 その光景に異世界人の四人は声を出して驚いた。


「なっ!? なんで狼のウルルンがただの人間に負けるのよ!」


「……耀助さん、歩美さんは何者なんですか?」


「人間ですよ。ただ両親が格闘マニアでその両親からありとあらゆる格闘技を習ったんです」


 小さい頃よく技の練習台にされたっけ……。


「そのおかげで男よりも男らしく、女っ気のなびふっ!」


「誰が女っ気がないって~」


 腹パンされた……。

 歩美よ、敵はあっちじゃないぞ!


「まあいいわ、最近ストレスたまってたから強いやつと戦いたかったし、あんたは私を楽しませるのかしら」


 歩美が不気味な笑みを浮かべながら、腕をポキポキ鳴らして戦闘態勢は万全だ。

 その動作とセリフ、まるで悪人だ。

 あとストレスって何?


「どうやら勝機が見えてきたな」


 こうしてフクロダ軍団VSアーネ軍団の戦いin俺んちの庭が始まろうとしているのだった。

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