ライバル現れる
ある日の深夜、ある場所から「次元の穴」が現れ、そこから三つの影が出てきた。
「ここにあいつがいるのかマスター?」
「間違いないでしょ、次元の穴に通ってきたんだから」
「フフフフ……待ってなさいよ……ノーマルディア!」
***
学校の帰り道、俺は買い物のために歩美とスーパーにいる。
「耀助、ニコちゃんに変なことしてないわよね?」
「してないよ。たしかに美人だし、胸でかいし、お前は足太いし、胸あんまないし、全く女っ気がなくても」
「後半アタシの悪口じゃん!」
「玉ねぎ痛っ!」
店の商品の玉ねぎを投げるな! ちゃんと買えよそれ!
「してないならいいけど……そういえばさ、金山が船ちゃん先生に『フクロダさんの妹も同棲してる』って喋ったら『今度の休みに抜き打ち家庭訪問をします!』って言ってたよ」
「へえ…………はあ!?」
何でそんな大事なことをこんな買い物の途中で話すの!?
そして何チクってんの金山!?
家庭訪問って! どうしよう、フクロダさんのをうやむやにしたのに、ニコのことも質問されたら、どうなるかわからないぞ!
「あ、でも先生方向音痴だから行くのは難しいーー」
「金山が案内するって」
HEYスズキ!
あの名字野郎、絶対面白がってるだろう!
「ちなみにいつ来るかって聞いてるか!?」
「今週の土曜だって」
今週の土曜って……明日じゃん!?
ヤバいよ! 買い物してる場合じゃないぞ!
「じゃあ俺帰るわ!」
「え、耀助!?」
結局今日はレトルトカレーだけを買って急いで帰ることにした。
そして翌日……。
俺は家をうろうろしながら悩んでいる。
「どうしよう、どうすればいいんだ……」
「落ち着いてください耀助さん。ここに先生が来たら『ちゃんとニコのことは見張ってます』って言えば大丈夫かとーー」
「問題はそこじゃないですよ。もしこのことを父に話をする流れになったら、父に許可をもらってると思ってた先生に問題にされたらヤバいですよ。もしかしたらフクロダさん達が出てく形になりますよ」
「え、それは……困ります……」
フクロダさんとニコもどうしようか困ってる。
どうすればいいんだ……。
ガンガンガンガンガンガン!
ヤバい先生が来た!
何故かインターホンを鳴らさずにドアを叩いてる。
相当怒ってるのか……。
「はいはい!」
俺はすぐにドアを開けるとーー。
「ここにノーマルディアがいるわね」
そこには赤いドレスみたいな服を着たポニーテール版金髪縦ロールの小柄な少女。
その後ろに紫の長髪の女性、赤い髪の目付きの悪い男性が立っていた。
……なんだ間違いか。
「すみませんがそんな人はいません」
俺はすぐにドアを閉めた。
全くこんな時に間違いとは…………ん? ノーマルディアってなんだっけ?
「ちょっと嘘ついてんじゃないわよ!」
「うぉ!?」
いきなり少女が庭に現れた。
「ちょっと何ですか!?」
「あんたがノーマルディアを隠すからでしょ!」
えー……ノーマルディアって誰だっけ? 明らかに外人の名前だし、先生の家庭訪問で頭が一杯で混乱してる。
「聞いたことがある声だと思えばあなたでしたか、アーネ」
俺の後ろからフクロダさんが腕を組んで現れた。
「久々ねノーマルディア、やっぱりまだフクロウの化物の格好なのね」
あ、そうか! ノーマルディアってフクロダさんの本名だった!
見た目アブノーマルなのにノーマルって思ってたっけ。
「どうしてあなたがっと言うのは愚問ですね……」
「当然よ! 今度こそあなたに勝つ!」
なんか少女がフクロダさんに火花を散らしてるけど……。
「あの、誰ですかあの子?」
「彼女はアーネ・フォン・モルト。元いた世界で私のライバル(自称)です」
「(自称)言うな!」
「貴族出身で魔法学校主席合格、13歳でありながら最年少で『王都名誉魔法士』という称号を持っている実力者です」
つまり金持ち天才魔法少女ってことか。
「そして何かと私にちょっかいを出してきます」
「忘れないわ……私に依頼してきたドラゴン退治をあなた一人で倒して、その栄誉をいらないと言って私にあげたのよ! その他にも色々と……これ以上の屈辱はないわ!」
プライドが高い子だな……ていうかフクロダさんすごいな。
「それから彼女は私に何かと勝負を仕掛けてくるのです。まあ、天才と言ってもあのときはまだ子供、敵うわけがありません」
「ふん! あれから私も特訓を重ねたし、禁術を使った罰で魔力も半減してると聞いてるし、今なら勝てるわ!」
どうしよう……フクロダさんの危機もあるし、これから船橋先生(ついでに金山)が来るんだぞ。
関係ない人を巻き込む+この辺りで魔法バトル=色々損害がひどい!
どうする……そうだ、俺、部外者だし先に先生を探して足止めすれば被害にあわずに済む。そうと決まればーー。
「耀助! 先生連れて来たよ!」
「こんちは」
「こんにちは」
もう来ちゃったよ! しかも何で歩美まで!?
「あれ耀助、あの人達誰よ?」
「もしかしてフクロダさんの親戚?」
「鯵坂君! まさか妹さんだけじゃなく、その子にも!?」
先生俺にどんな想像してんすか!?
俺、そんな性欲強くないっすよ!
「あんた達! 私達を無視してんじゃないわよ!」
「あ、忘れてた。すみません先約あるんで今日の所はお引き取りください」
「いやよ! だいたいあんた誰よ!」
「えっと……鯵坂 耀助です。訳あってフク……ノーマルさんと一緒に住んでます」
「そうです。今の私は耀助さんの使い魔、フクロダとして生きております」
「フクロダ……プフッ! 何それ、変な名前!」
適当とはいえ、名付け親として少しムカつくな。
「あの……どうしました? ……あ」
俺らの騒ぎが気になったのか、今度はニコが現れた。
アーネという子を見ると、こっちに来て俺の後ろに隠れた。
「あら、誰かと思えば弟子の忌み子じゃない。相変わらず気持ち悪い黒い髪ね」
「…………」
ニコが涙目になって握る力が強くなった。
俺はなんだか苛立ってきた。
「あんたもいたのね、まさかノーマルディアを追いかけて来たの? ま、あんたみたいな忌み子、誰も関わろうとしないわ痛たたたたたた!」
俺はアーネに近づき、両手でほっぺをつねった。
「おい子供、ニコの悪口を言うな」
「何すんのよ黒髪! あんたも忌み子な痛たたたたたたた!」
今度はくるくるしてるポニーテールを引っ張った。
ロールされてるから伸ばすとめっちゃ長い。
「誰が忌み子だ、この世界には黒髪は普通なんだよ。見てみろ、周りの連中をーー」
俺→黒
フクロダさん→白と茶(羽毛)
ニコ→黒
歩美→茶
金山→金
船橋先生→茶(焦げ茶)
アーネ→金
女付き人→紫
男付き人→赤
「……黒率低っ!!」
驚いた……俺の周りはこんなにも黒髪がいないとは思わなかった!
どうなってるんだ日本人! なんかさっき言った自分が恥ずかしい!
「いないじゃない」
「……いないけど! ここにはニコさんを蔑むやつはいない!」
「耀助さん……」
ニコが顔を赤くし笑顔になり、歩美はなぜかムスっとしている。
「ていうかあんた達、ボーっとしてないで助けなさいよ! 主のピンチなのよ!」
そう言えば髪引っ張ったままだ。
付き人の男女全然動かないな……。
「いやあ、命の危険がないしな……」
「そうね、ただいじられてるだけだし」
「それでもピンチなのよ! もういいわ! 火よ放て『ファイアボール』!」
「うぉっ!」
いきなりアーネの手から火の玉が放たれ、
アーネの髪を放してギリギリ避けた。
「え、何今の!? 手品!?」
「そんな様子じゃないけど、もしかして本当に魔法使い……ねえ先生……先生?」
歩美が混乱し、金山が先生を呼んでも返事がない、なぜなら……。
プスプスプスプス……。
船橋先生にファイアボールが当たり、顔が黒こげアフロになりその場に倒れた。
「「「先生ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」」」
なんか避けてごめんなさい! まさか当たるとは思わなかったから!
「大丈夫! 死んでないみたい!」
「金山! 先生を家に寝かせてきて!」
「わかった!」
金山が先生をおぶって避難させた。
「アーネ! 部外者を巻き込まないでください!」
「うるさい! あんたを倒すためならなんでもするわ! 他人に構ってる暇はないわ!」
「相変わらずのわがまま……少しお灸が必要ですね」
「さあ行くわよ二人とも!」
「「了解、マスター」」
付き添いの二人が前に出てきた。
「さあ行くわ! 野生よ、解放せよ!『ハーフワイルド』!」
アーネが呪文を唱えると、二人が光始めた。
赤髪の男の犬歯が伸びて牙になり、犬のような耳を生やし、手の爪がすごく伸びた。
紫の髪の女も同じように牙が生え、下の部分が長くしなやかな蛇になった。
「さあ行くわよ! ノーマルディア!」
アーネ達三人が迫ってくる。
相手は天才魔法少女と化物二人、こっちは魔力半減のフクロウ人間とビビりの薬専門の弟子……。
どうしよう……敵わない気がしてきた。
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