さっそくバレた
私の名はフクロダ。
元魔法使いで、禁忌の魔法に失敗の末、フクロウと混ざった姿に、そして禁忌の魔法を使った罰でこの世界に飛ばされました。
今、私は鯵坂 耀助さんという人と契約(強制)をし、彼の使い魔として一緒に住んでおります。
私は耀助さんの部屋の一室を借りて寝ているとーー。
「フクロダさん、起きましたか?」
耀助さんの声が聞こえたので起きて、部屋を出ると、耀助さんがそこにいた。
「おはようございます」
「ハア……おはようございます。朝食出来たので居間にどうぞ」
耀助さんは深いため息をついた。
当然です。このような見ず知らずのフクロウ人間と暮らすのですから。
居間に行くと、テーブルの上にはご飯、味噌汁、納豆と純和風の朝食が並んであった。
異世界育ちで箸を扱えない私に耀助さんはフォークをくれました。
なんだかんだ言って、耀助さんは優しい方です。
朝食を食べてる最中、耀助さんはこんなことを言った。
「フクロダさん、昼食は作ってあるのでお昼になったら食べてください。あと絶っ対に人に見られないようにしてください」
「もちろんです。耀助さんの迷惑になることは一切いたしません」
「それならいいです。あ、フクロダさん、契約で離れたら死ぬって言ってましたよね? 正確にはどうなったら死ぬんですか?」
「私達が1キロ以上離れたら1日以内にその範囲に近づかないと死にます」
「そんなに長いならまあ安心ですね……じゃあ俺は学校に行きますので」
「わかりました」
耀助さんは学生のようなので朝食を食べ終えてすぐに学校に行きました。
さて、どうしますか……。
とりあえず食器を洗いーー。
「ん?」
台所に弁当箱が、まさか! 耀助さんの忘れ物! これは一大事! 早速届けにいかねば!
私は今、空を飛んで学校に向かっている。
上空にいればバレないし、この辺りは人も少ない。
だが、私は耀助さんを見失ってしまい、学校の場所も知らない。
「一体どうすれば……ん?」
あそこに立ち止まっている女性がいる。
フクロウになってから目が良くなったからよく見える。よし、聞いてみますか。
私は空から下りて、そこの女性に聞くことにした。
「失礼お嬢さん、お聞きしたいことがあるのですが」
「え? ……きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
***
俺は丸々第一高校に在学している。
都会側にあり、家から自転車で30分。
俺は昨日のフクロダさんの件で正直精神的に参っているため1年1組の教室に入ってすぐ、席に座って机に突っ伏した。
「おはよー耀助! どしたの、元気ないみたいだけど?」
俺に話しかけて来た茶髪のショートカットの女子は
農家の娘で俺とは幼稚園からの幼馴染み。その辺の男子より活発で元気だ。
「いや、ちょっとフクロウがね……」
「フクロウ? 家にでも浸入してきたの? だったら災難だねー」
普通のフクロウだったらいいよ……相手は八頭身のフクロウ人間で家に住んでますからね……。
「フクロウがいるなんて田舎側ってすごいんだね」
「おお……おはよう金山」
俺に話しかけて来た金髪のイケメンは金山。都会側の人間で結構モテる。中学の頃に仲良くなった。
「金山、それ田舎側をバカにしてる?」
「いやいや、うらやましいんだよ。僕は動物好きだけどマンション暮らしだから飼えなくてね」
「ふ~ん」
「おーいスズキ! 女子が呼んでるぞ!」
「そ、その名前で呼ぶな!!」
クラスの男子が金山を「スズキ」と呼び、金山はその呼び名に怒りながら男子の方に向かった。
なぜ金山なのにスズキと呼ばれているのかというとフルネームが
下の名前で呼ばれるのを嫌っているため、俺達は名字で呼んでいる。
「相変わらずモテるね金山は、あ、そういえば
「そうじゃない」
船ちゃん先生というのは今年から来た
若くて美人で男子から人気があるが、極度の方向音痴で他県から来たため未だにこの町に慣れず、いつもギリギリの登校である。
「おい! 何だあれ!?」
急に窓側にいた男子が叫んだ。
皆がグラウンドに注目している。
「何あれキモっ!」
「あれフクロウ?」
「おい、あれ船ちゃん先生じゃね!?」
ん? フクロウ? 先生?
俺も歩美も窓からグラウンドを見ると……そこには船橋先生を抱えたフクロダさんがいた。
何やってんのフクロダァァァァァァァ!?
人前に見せるなって言ったじゃん!?
「ちょっと! 何をしてるんですか!?」
先生達が一大事と思い、グラウンドに集まってきた。
「失礼する! この学校にいる耀助さんに用があります!」
おいぃぃぃぃ! 何名前出してんの!? もうバレバレじゃん!
「ねぇ? ヨウスケって誰のことだろうね? あんたじゃないよね?」
あれ? ……そうか、ヨウスケって名前この学校に結構いるのか。
これならなんとかやり過ごすこともーー。
「鯵坂 耀助君! お願いだから出て来てください! 殺される!」
先生ぇぇぇぇぇぇぇ!? フルネームカミングアウトしちゃった! 先生必死で涙目だし!
うわ~教室の皆が俺に注目してるよ……視線が痛い!
「耀助?」
「……行ってくる」
俺はすぐに教室を出てグラウンドに向かった。
そこには船橋先生を抱えたフクロダさんと先生達が俺に注目している。
「おう耀助さん! お弁当お忘れですよ!」
フクロダさんの右手には弁当箱を持っていたがーー。
「それ……フクロダさん用ですよ。俺のはあります」
「へ?」
「フクロダさん、人前に出るなって言ったよね」
「……………………あ」
「フクロダさん、先生を離せ」
フクロダさんは船橋先生を離して、先生はすぐに逃げ出した。そしてーー。
「何しとんじゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ぐふっ!」
俺はフクロダさんに思いっきり腹パンし、フクロダさんは膝から崩れ落ちた。
「す……みません……」
「もう帰れ」
そう言うとフクロダさんは一礼し、何も言わず学校から出た。
終わった……俺の学校生活どころかこの町の生活も終わった。
この一日が終わったら退学届を出して、父に頼んで外国に行こう……そう思いながら俺は教室に帰っていった。
教室に戻った俺は皆の注目を浴びながら、席につき、歩美と金山が俺に話しかけてきた。
「ねえ耀助、あのフクロウなんだけどーー」
どうしよう、聞きたくないな……。
「あの人と知り合いなの?」
……WHAT? 人? HUMAN?
歩美があのフクロウを人に見えたのか?
「歩美、知ってるのか?」
「アタシは知らないけど、金山が見たことあるって」
「うん、つい最近できたフクロウカフェの人でしょ。ビラ配りしてるのをよく見かけるし、ほら写真も」
金山がスマホを操作して俺に画面を見せた。
そこには町中でビラ配りしてるフクロダさんが写っていた。
あいつバイトしてたのかよ!? じゃあもうすでにバレバレじゃん! 俺隠した意味無かったじゃん!
ハア、あとで謝っとくか……。
その後俺は歩美達にフクロダさんを父の仕事仲間の息子で外人と嘘をつき、この件は事なきを得た。
そして夜、夕飯の時のことーー。
「フクロダさん、フクロウカフェで働いてるなら先に言ってくださいよ」
「すみません。こっちの世界に来て間もない頃、その店長に気に入られてなぜか私の姿が評判らしく、カフェが大盛況になりました」
「まあその姿なら注目浴びますよね、すみませんね、そうとは知らず殴ってしまって」
「いえ、私も約束を忘れていたので殴られて当然です。仕事もありますし給料も生活費の足しにしてください」
「それは助かります。それじゃ飯にしますか」
「「いただきます」」
まあこの町に馴染んでいるならそれでいい。
俺はフクロダさんの隠蔽の件が解決して少し胸が軽くなった。
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