第39話 異世界にて思わぬ伏兵
「ふはははは! システィナを倒したくらいでいい気になるなよー! まだお互いに二対二! 勝負はここから! 気を取り直していくぞー!」
そう言って高らかに笑うとディアーナは手に持ったボールに炎を込める。
「ふふふ! いかにお前の筋力が高くなろうともこの燃える魔球ファイアーボールを受け止めることは不可能! たとえ受け止めてもあまりの熱さに火傷し、ボールを落とすこと間違いなし! では、いくぞー!」
叫ぶと同時にディアーナも炎に包まれた魔球ファイアーボールがオレへ向かう。
今のオレならあの速度のボールなら受け止めることは可能だが、あれを正面から受け止めればディアーナの言うとおり、熱さで火傷しボールを落としていまう。
となれば、あまり使いたくはないがあれしかない……。
オレはその場にすぐさま上着を脱ぐ。
「こ、これはどうしたことだー!? 人族代表の天士選手がいきなり上着を脱いで上半身裸になったー!?」
「おー、やっぱりそこそこいい体だなー。お前ー」
「な、なななな、何をしてるんだー!? お前ー!?」
「きゃー! て、てててて天士様の裸ー!」
見るとドラコ三姉妹の三女メルティナは興味津々な様子でオレの体を見て、長女のディアーナは顔を赤くして目を押さえ、また後方ではなぜかミーティアの興奮した叫び声が聞こえている。
とはいえ、服を脱いだのは別に上半身を晒すためではない。
オレはそのまま服を両手に包むようにまとわせると、そのまま炎纏うボールを受け止める。
かなりの威力に両手がズッシリとするが受け止められる。
そして、受け止めた瞬間、両手にかなりの熱さが来るが手に纏ったシャツのおかげで直接皮膚が炎に焼けることはなかった。
そのままシャツの中でボールを受け止めると炎は自然となくなり、オレは無事ディアーナが投げたボールをキャッチした。
「な、なんとこれはー!? 天士選手、服で炎の熱さを緩和して受け止めたぞー!」
「な、なんだとー!?」
「まさかあのディアーナ様の必殺技を正面から受けるだと!?」
「今まであの魔球を受け止めれらた種族など一人もいなかったはず!? や、やつは一体!?」
さすがにこれにはディアーナだけではなく会場中が驚きに沸き立つ。
オレは服を左手にまとわせたまま、右手でボールを掴む。
「さて、今度はこっちの反撃だ」
「くっ!?」
オレの攻撃に身構えるディアーナ。
だが、その前にメルティナがぴょんぴょん飛び跳ねる。まるで自分に当ててみろという挑発だ。
面白い。オレはあえて、その挑発に乗りメルティナ目掛けてボールを投げるが、
「スキル『跳躍』」
メルティナがそう呟くとまるでウサギのように先ほどまでいた場所から瞬時にとなりへぴょーんとジャンプして移動する。
オレが投げたボールはそのまま空を切り、後ろにいたディアーナの頬を掠める。
その瞬間ディアーナが「ひっ!?」と言ったような気がするが、今はそれどころではない。
ボールはそのまま外野に移動し、そこで待機していたセルゲイが受け止める。
「確かにかなりの速さだが、後ろを向いている今ならどうだ!」
と、セルゲイもまた回避をしたメルティナの背後めがけてボールを投げる。
が、メルティナはまるで後ろにも目があるようにその場でジャンプをすると、セルゲイの投げたボールを見事に回避する。
「なっ!?」
そのままボールをなんとかキャッチするオレであったが、これは驚いた。
確かに回避に関してはこの子は天才的かもしれない。というよりも、オレがこれまで見てきた選手の中で運動神経で言えば一番かもしれない。
そう思えるほどメルティナの動きは柔軟であり、捉えるのが困難に思えた。
「ふはははは! 見たか! これぞ我らの秘密兵器! いかにお前が剛速球を投げようともこちらの選手を全員アウトにしなければ勝利はないぞ! そして、お前が投げ疲れた時が私達の勝利の時!」
高らかに笑うディアーナであったが、だが案外これはバカにできない。
これはディアーナよりも先にメルティナをなんとかアウトにしなければ厄介だ。
仮にディアーナをアウトにしても先ほどのようにメルティナに避けられ続け、そのボールが外野にいるディアーナ、システィナに渡ればそのまま体力を削られたオレやリーシャも危ない。
さて、どうしたものか。
思わぬ伏兵の登場に、しかしオレは久しぶりの燃えるスポーツ勝負に沸き立つのだった。
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