第12話 マナ
コロニーネビラが、病院船として、てんてこ舞いになったのを受けてユーナスとミーシャは、結婚式の延期を表明した。アリスは、また、それを知り合いに、連絡しまくった。しかし、この戦争は、半年しか続かない。今は負けているが、バーム軍が勝ったら、二人の自由が無くなるとバックナーに宣言されているアリスにとっては、結婚式を急ぎたいところだ。
たしか、ナオミは、お茶うけのパンを焼いているのよね
疲れたアリスは、ナオミの所で一休みすることにした。
「ナオミ、パン焼けた? お茶にしない」
「アリスさん! ミーシャさんの結婚式延期の連絡終わったんですか」
「やっとね」
「今、ジェシーさん直伝のパンケーキを焼いているところです」
「おいしいよね、それ。じゃあ、私がお茶を入れるね。紅茶でいい?」
「もうすぐ焼けるから、ニーナさんも呼ぼうよ」
あゆみもお茶に賛成だ。
「今日もいい出来よ」
「ニーナも来るのね。全部で4つね」
ニーナが作業の手を休めて、お茶しにやって来た。やはり、話題は、パラス航路戦になった。
あゆみは、けが人を心配し、ナオミは、戦争そのものを心配した。
「けが人は、まだ増えるそうです」
「もっと、負傷した人が来るのね。スープの製造機も作る?」
「賛成です」
「ゼニスを使うなんて、ケレスの人、どうかしてるわ。ストロング少将の暗殺に、かかわっていたかもしれないのに」
「たぶんそうね。エレン中将は、手段を選ばないのよ」
「パラスには、イオリさんがいるんでしたよね」
「バックナーのお守よ。エレン中将と一緒にノクターンが来ているのよ。ずっと、テレパシーブロックしているわ」
「ノクターンって、私たちのコロニー船を襲った人ですよね」
あゆみは、ケレスに襲われたコロニー船の難民。
あゆみとナオミは、ケレスの方が悪く見える。
「二人とも、戦争そのものが悪いのよ。片方だけを悪く見ないで。絶対悪なんてないのよ」
「でも、パラス戦は、二人に賛成。バックナーが敗れると、宇宙の均衡が保てなくなるわ」
ニーナは、二人を諌めたが、アリスは、二人に賛成した。
「バックナーさん、軍師なのに、なんで、前線に行っちゃうの?」
「イオリさんが可哀そう」
「イオリは大丈夫よ。でも、バックナーは嫌な予感がするわ」
「私、イオリさんをテレパシーブロックする」
「魔女が、魔女をテレパシーブロックするの?聞いたことない」
ナオミとアリスは、ガイア人がいなかったら、ケレスからも、バームからも、魔女と呼ばれていた。現在、アリスは、ガイア人の神官で、ナオミはガイア人の巫女と呼ばれている。
「私、アリスさんもしたいぐらいです。マージの話し相手になってもらいたいんです」
「それでー、だったらいいわよ」
テレパシーブロックには、共感覚という相乗効果がある。考えていることが、テレパシーで共有される。ナオミのパートナーであるマークとは、見ているものも共有できる。アリスもそうだが、ナオミは、一度に大勢の人をテレパシーブロックできる。
「じゃあ、マージを呼ぶの?」ニーナは、あまりマージと話していない。
「ベル君も呼んで」あゆみは、ベルと、ちょくちょく話している。リンの持ち主のスーが、とっても料理がうまいので、ベルと、リンをはさんで、スーと話すのが日課だ。
「ナオミが言い出したんだから、みんなをテレパシーで包んでね。その代り、イオリを呼んであげる」
「了解です」
マージがやって来た。
なあに
「こんにちわ、ニーナよ」
わたし、ニーナと始めて話した
「最初から、マージのことに関わっていたのに、ごめんね」
嬉しい。ちょっとだけナオミを見直した
「ちょっとだけ?あゆみもいるわよ。アリスさんとも初めてでしょう。アリスさんは、今、イオリさんを呼び出しているから待ってね」
どうしたの、何か、大切なこと?
「お茶会よ。マークは忙しいんでしょう」
ファイターの話ばかり。まだ、フォンファンよ
「ごめんね、マージはマークがお茶してくれないと、お茶を味わえないのよね」
我慢する
あゆみは、ベルと話し出した。ベルと繋がれば、リンとも、キーンとも繋がる。
「ベル君、久しぶり」
久しぶりって、昨日も話したでしょ
「ふふん、お姉さんが恋しかった?」
普通 (ベルは、8歳の男の子の意識で話す) そうだ、リンがスーから、イーシュタット家特製のアップルパイの作り方を聞いてくれたよ。今呼び出す?
「嬉しい」
アリスは、イオリと話している。パラスの地上戦がとても危険なことになっていて、お茶会に参加できそうに無かった。
「ごめんね、イオリは忙しいみたい。バックナーが、ブレーメンに出向きそうなのよ。地上戦が大変なことになっているんですって。心配だから、後で、連絡する。まだ戦艦にいるから、引き留めているところですって。ナオミいいわよ。テレパシーで包んでみて」
マージよ。神官様なんでしょ
「アリスよ。そうだけど、マージは、宇宙の宝石なのに、宇宙の宝石をまとめる人なんでしょう。同じ仕事になるかも。よろしくね」
う~ん、そうなるのかな。実感ないけど
「マージったら、みんなの前で、オバテア様の意識で話したんです」
言わないで、落ち込むから
「聞いたわよ。宇宙の宝石も、ガイア人も、ひれ伏したんだって」
本当は、友達になってもらいたかったんだけど、モイが悪いの!懐かしかったから、つい、言うことを聞いてしまったのよ
「ふふ、みんなの女王様になったのよね」と、ニーナがかぶる。
だから、落ち込むから言わないで
オバテアは、魔法時代の王妃。
「アリスさん?」
「あれ? どうしたのかしら?」
アリスがマージと話していて、笑いながら涙を流しだした。ベルと、リンと話しているあゆみまで心配してアリスを覗き込んだ。
「ごめんなさい、寝ている時は、たまにあるんだけど・・・」
「ネクロかしら」
ネクロよ
ネクロだよ
ベルと、マージと、ナオミの意見が一致した。ナオミが、ネクロに話しかける。
「あなた、あなたネクロなんでしょ」
・・ちがう、私は、マナよ
そう、か細い声が聞こえたと思ったら、ズドンと、とても重くなり、ナオミは、アリスをテレパシーで支え切れなくなった。
「ごめんなさい。急に重くなったわ」
ナオミは、ぷふぁーと、アリスにしていたテレパシーブロックを解いた。
ここにいる全員が、ネクロの声を聴いた。ネクロは、宇宙の宝石で、能力としては、時空間移動をするアイテムだ。しかし、ネクロを通してそれができるのはアリスだけで、他の者が、ここを通ろうとすると死んでしまう。それに能力者が、ネクロに触るだけで、やはり死んでしまうので、恐れられて、ネクロという名前が付けられた。今まで、持ち主のアリスでさえネクロと話したことはなかった。
「今、マナって言わなかった?」
マナって言った
「ネクロの声よね」
女の子の声だった
「女の子だったんだ」
アリス以外、みんな興奮して早口になってしまった。
「マナ!・・・・・」
アリスは、この名前を聞いて黙り込んでしまった。その名前は、先日の健康診断で、ゴウが、学習ポットの中で呟いていた名前だったからだ。
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