第10話 アラン

 アランは、現在火星にいる。アランは、マークの相棒で、宮本流剣術の師範である。しかし、アランは、人魚族の族長、海人に、剣術で遠く及ばなかった。そこで、火星にある、人魚族の街で、しばらく修行をしていた。人魚族の街は、巨大な宇宙クラゲの中にある。ここでは、外部からの通信が通じない。唯一、姉のテレパシーで、外部の様子を聞いていただけだった。


 今回の戦争に、ガイア人は関与しない。それに、ケレス軍も、バーム軍も、火星に戦火を広げないと約束している。安心して、剣術修行していたのだが、何でも屋の仕事が入って来た。マーク達と一緒に炎の遺跡をこれから探査することになっている。


 人魚の住まいは、クラゲの中にあるトルポの街にある。そこは、エーテルドームで仕切られ、中に水中で生活する人魚がいっぱい住んでいる。その、エーテルドームの中に、更に内包された空間があり、そこには、空気がある。地上と変わらない環境で生活できる魚人達が住んでいる。アランは、ここで、族長の海人から、剣術の指南を受けていた。


 この空気がある空間の中心に神殿がある。ここは、魔法時代の神官が住んでいたところなのだが、現在トルポの街に神官はいない。この神殿前の広場は、広い。ここで、海人としかできない修行をずっとしていた。それというのも、魔法時代の至宝の光剣を使えるのが、海人と、アランしかこの場にいないからだ。それ以外で光剣が使えるのは、ケレス連邦のケエル総督だけだ。ケエル総督は、戦時下のため、ここに来ることはできない。


 二人は、光剣で修業していた。

 アランが使用しているクリスタルソードは、形体変化する剣だ。柄の所に、クリスタルをはめる穴があって、ここにクリスタルをはめると、攻撃の仕様が変わる。全部で4つ孔があり、それぞれ、水、風、土、炎のクリスタルをはめることが出来る。今、柄の部分にはまっているのは、水のクリスタル。光剣は、水が対流しているようなレリーフが浮かんでいるクリスタルソードになっている。


 ガシュイーーーン


「まったく変化なしか」

「すいません」


「おかしいな、たぶん、盾のような幅広の剣にも、なるはずなんだ。アランの剣が、クリスタルソードと言われて、他の形態変化した剣の名前を総称しているのは、クリスタルの光剣が一番優れていたからなんだ」


「サーヤさんに当時の映像を見せてもらったので、それは間違いないと思います。わるいのは、使い手のせいです」

 サーヤは、海人の娘。時期神官候補。


「そう言うな。気合で、光剣を出しているんだ、盾のようなディープベースも出せるはずだぞ。そうなれば、大剣も出せるようになるはずだ」

 ディープベースは、オーバーブレイドして大剣となる。

「きっかけはあるはずだ。その時、ディープベースのことを覚えていたら、そうなるさ」 


「いなせないほどの打ち込みを受けた時、そうなる気がします。海人さんにそうしてもらっていますが、やはり、グリーン達に手伝って貰わないと、海人さんが本気を出せないということですよね」


「加減したものだと、ディープベースが出ないのだから、そうなのだろうな」

 魚人は、人間の何倍もの身体能力を持っている。

「そろそろ、仕事に行かなくてはいけないのだろ。やれることをやろう」


「お願いします」


 二人は、実践に近い模擬戦を永遠とやっていた。海人の門下生は、人がここまで強くなれるのかと、黙って見ることしかできない。技の多彩さは、アランの方が上なのだ。



「足場がない水中で、練習したいです」

「自分で足場を作る技術を工房に施してもらえ。体力で出来ない事は、科学技術で補えばよい」

「ガンゾに頼んでみます」


 二人は、打ちあいながら世間話をしている。それも、門下生たちには信じられないことの一つだ。


「水撃が打てるようになったんだ。今回は、ここまでで良しとするか」

「風のクリスタルをはめていないのに、すごいです」

「水の斬撃の方が威力あると思うが、風も試したいぞ。ケエルに言って早く取り寄せろ」

「戦争の最中ですよ。マークなら、いい加減にケレスに訪問できますが、自分は、ちょっと厳しいです」


「マークの奴、ファイターにかまけて、遺跡探査の修業をさぼっているんだって」

「一応、何でも屋の仕事ということで」


「バーンは、宇宙の宝石の中でも、10の指に入る。気を引き締めろと言ってくれ」

「了解です」


 ガシュイーーーン


「やっぱりダメか」

「すいません」 


 そこに、姉のアリスから連絡が入った。


 ごめん、修行中だった?

「姉貴から連絡です」

「神官様か、では、休憩にするとしよう」

 二人は向き合って礼をした。門下生は、やっと終わったかとため息ついた。



「なんだい、マークの修業が終わったの?」


 違うの、今日は、ミーシャの結婚式の日取りが決まったから報告よ。後、ガンゾがお願い有るんですって


「おれもさ、水中で水を足場のようにできないかって聞いてほしいんだ」


 一人で、海人さんと戦う気?


「海人さんの勧めなんだ。体力的にできないことは、技術で補えって言うんだ」


 分かった、言っとくね。ミーシャの結婚式は、2週間後よ。でも、ゴウが大変なことになっちゃったでしょう。いろいろと。確認したいし、試したいことが有るんですって。付き合ってあげて


「なにするのかな」


 それが、剣術らしいの。二人が言うには、チャンバラだって言ってたけど。遊びだと思わない方がいいわよ。ゴウなんだけど、たぶん、体力は、海人さんと同じぐらいになっちゃったのね。だけど、反応速度が異常に早いみたいなのよ。怪我しないでね


「へー、面白いかも。海人さんで慣れているから大丈夫だよ。マークは使えるようになった?」


 ひどいのよ。また、MG2に言って、オートの記憶装置を作らせたのよ。昨日は、ジョンと、ずっとファイターの話をしていたし。遺跡探査は、出たとこ勝負になるわよ


「仕方ないよ。戦争になったんだから」


 ナオミは順調よ。二人で、マークをフォローしてね


「分かった。早めにそっちに行くよ」



 海人が門下生に、練習の指示をして帰って来た。


「神官様は、何と言ってきた」

「マークが、遺跡探査の修業をさぼって、困っているそうです」

「だろうな」

「それから、ゴウさんの体力測定に付き合ってほしいそうです。たぶん、動体視力が機械で測り切れないから、オレに様子を見てもらいたいんじゃないかな。オレと、チャンバラして欲しいそうです。ゴウさんの体力は、海人さんと同じぐらいだそうです」


「なんだって、オレも参加したいぞ」

「暫くは、火星を離れるわけにはいかないのでしょう。その内ゴウさんに来てもらいましょう」

「海母様を守る使命があるからな。海王様に聞いたぞ、雷龍王と同じ資質なんだって。立ち会うのなら気を付けろ、我々の想像をはるかに超えるかもしれん」

「そうか、ゴウさん弱いけど魔力も使えるから」

「と、言うことは、龍族の剣士対策をしないといけないな。それじゃあ、もういっちょ行くか。オレと、ガイは、その心得がある。クリスタルソードで良かったよ。魔力を受け止めることが出来る」

「お願いします」


 こうして、アリスが考えたより、1日遅れてアランがネビラに到着することになった。

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