狭界の剣姫
プロローグ
視界の隅に撤退を告げる信号弾が上がる。
街が今、燃えていた。瞳に炎が揺らいで映る。
「今日もまた、何もできなかったよ……兄さん」
自分の背中にそう
首から下を包む、鋼の鎧。
翼持つ者達が乱れ飛ぶ、狭界の海は荒れていた。
「よくも首都を……諸君、
それらが天へと吸い込まれるより早く、ミウトは四肢を広げてダイブ。かき混ぜられた視界にはもう、敵の
「!? 背中に……注意されたし! 敵は――」
「い、いや、よく見ろ。
完全にミウトは囲まれた。
「オーケェ、ケツを取った! まだガキだ、女みてぇな
肩越しに振り返れば、背負う
しかし、追っ手の
「
同時に、
三、二、一……
「殿下を、シズル殿下を見なかったか? 少年。ん、君は確か……」
舞うように次々と敵騎を
「故郷の海に散るか? 命を
一際強く
「
「アギキタ領領主が
真っ赤な少女は静かに
皆が皆、ミウトを追うのを忘れたかのように息を飲んでいた。
「ツルガ公国軍
それが紅蓮の
名乗るやカナデは、己が
「<
「御相手しよう、ナルヒコ殿。<
<
カナデは目の前で、手にする
相手の
「一つ
「ハッ、あの
必死に眼で追う、ミウトの胸中を去りし
「皆の者っ、何をしておる! 兄様に奴は任せて、早くあの逃げ遅れをっ!」
幼い声に周囲は、
短い
思わず叫んだのは、兄の名だったが……不意に
「タクトはもうおらぬぞ? ふむ、あまり似ておらぬな」
翼が
そうして、まるで太古の鳥のような姿は、真っ直ぐ
「殿下!? よもや
「クッ、水入りかっ!? あ、
激しく斬り結ぶ、ナルヒコとカナデの
「バッ、バケモノ……」
「その言葉、二度目じゃな。さらばじゃ、
「殿下、
手にする
その姿は本来、この場所に……非情の
「はて、どこから話したものかの。とりあえず……まずは帰ろうぞ。我等がツルガの地へ」
のう、と同意を求めるように、
それがカナデとシズル、二対の
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