7.ライトノベルとの出会い

 私の「本」の歴史でファンタジーと同じくらい大きな出会い、それがライトノベルとの出会いである。忘れもしない小学5年生、思春期の入り口に足を突っ込んでいた私は、友達からの勧めもあって講談社X文庫ティーンズハート(残念ながら2006年で廃刊になっている)の本にドはまりした。


 一番好きだったのは折原みとさんの「アナトゥール星伝」シリーズ。これ、ラノベの元祖異世界トリップものなんじゃないだろうか。私のラノベ好きの原点はここから始まったといっても他言ではない。

 「あたし」を一人称とした、主人公が話しかけているような口語の文体。改行が多く空白が多いページ。文体としては、携帯小説に近いかもしれない。今までほとんど三人称の小説しか読んでこなかった自分にとって、いろんな衝撃が走った本だった。だが年齢が近かったこともあってか、友達に勧められてあっという間に既刊分は読んでしまった。


 ただのキラキラ青春ものと違い、戦争もあるし、人も死ぬ。またヨーロッパや中近東、モンゴル、東欧に北欧、南欧、アステカ帝国、アフリカなど、様々な国が下敷きになっていて、民族の争う様子や、文化の違いによる争いなど、様々なテーマがちりばめられた本だった。描かれる人々が魅力的だったのはもちろん、最後まで読み続けられたのはこのような点もあったのだろうと思う。


 ちなみに、ラノベ的な表現方法をいろいろと知ったのもこの時期だ。たとえば、瑠璃姫を瑠璃姫ラズリアとよむ。あるいは、「勘解由小路緋華璃かでのこうじ ひかり」みたいな、小難しい感じで名前をこねくり回してつけてみる。古文書のような文章を登場させる。中学生が闇の力を手に宿してしまう感じに近いんだろうか。あたらしい手法を知って、「なんだこれかっこいい!!」と自作に反映させてみる。振り返ってみれば黒歴史になりそうな感じの小説をいろいろ作っていたと思う。 


 このシリーズは今でも本棚に全作そろっている。たまに読み返すととても恥ずかしい気分になるが、懐かしさにひかれてたまに読んでしまう作品である。




 もう一つはまっていたラノベは、小林深雪さんの本「高野沙保 」シリーズをはじめとする一連のシリーズだ。こちらは現代の中学生が主人公のべたべた恋愛もの。現実世界では本が恋人といってもいいくらい、色気も異性との交流もない毎日。この本はそんな私にキラキラした世界を疑似体験させてくれるものだった。


 ストーリーは、本が1巻進むごとに主人公の年齢も上がっていき、20歳になったところでゴールインしてハッピーエンド、そしてその子供がまた中学生になって――というもの。私ももう少し大きくなったらこんな恋愛ができるのかなあ、なんて、まだ見ぬ中学生生活に思いをはせていた。そうして未知の世界である高校生、大学生の自由な生活にあこがれ、結婚を夢見る。現実を知った今となっては、なんとまあ甘酸っぱいというか、口がとろけそうなくらい甘い綿菓子並みに甘いというか……今読んだらかなり身もだえするぐらい恥ずかしいと思う。


 そう考えると、私が読んできたほとんどの主人公の年齢は追い越してしまったんだなあと、ちょっと切ない気分になる。子供時代にどっぷりはまった本を以前と同じ視点で楽しめないのは成長して視点が広がったのだなと思う反面、少しさみしい。

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