小説編

1.本との出会い


 私は本を読むのが好きだ。本の虫といってもいいくらい、常に活字に飢えている。



 昔の記憶をさかのぼってみると、保育園の年中(5歳ぐらい?)の時には字の本を読んでいた気がする。小学生に入るまでにひらがなは読めるように、というのが母の方針だった。

 といっても無理やり叩き込まれたわけではなく、日がなひらがなパズルで遊んでいただけだ。母曰く、カタカナは同じく年中の時、年長のお姉さんお兄さんに教えてもらって、1日でほとんど覚えてきたらしい。


 ひらがなを覚えて本が読めるようになった私は、時間があれば保育園で本を借り、何度も何度も同じ本を読んでいた。

 その時好きだった本は「おしいれのぼうけん」、「エルマーのぼうけん」シリーズ、「いやいやえん」。冒険ものばっかりだ。


 特に「エルマーのぼうけん」は食べ物(様々なお菓子やみかん、レタスなど)の描写がとてもおいしそうだったのをよく覚えている。作中に出てきたももいろのぼう付きキャンディー、チューインガムなどは食べたことがなかったので、いったいどんな味なんだろうと空想にふけったものだ。




 小学校に上がると、学校の図書室はとても魅力的な場所だった。休み時間になるたびにそこへ入りびたり、やっぱり本を借りまくっていた。

 今でも印象に残っているのは「ひげよさらば」だ。NHKで放送された人形劇を本にまとめたものだったと思う。小学1年生が読み漁るような本ではない気がするが、主人公が人間ではなく動物だったところにひかれたのかもしれない。


 私は物心ついた時から生き物が大好きな子供だった。当時テレビで放送されていた「生き物地球紀行」は毎週録画してひまさえあれば見ていたし、ジブリのトトロも大好きだ。

 椋鳩十むくはとじゅう全集(ほとんどが人と動物のかかわりを描いた話)は親に漢字を訊きつつ読み進めた覚えがある。小学生の教科書に「大造じいさんとガン」がのっているので、そこから名前を知った人も多いかもしれない。


 はたから見れば、ちょっと、いやだいぶ変わった子供だっただろう。実際1年生の時、母親は懇談で先生から「変わっている子だ」と言われたらしい。理由は「校庭でアリの巣を観察していたから」だそうだ。母は「そのまま本人に好きにさせてください」と言い切ったという。

 「興味のあることは何でもさせる」母の方針は、その後私の人生を大きく支えるものになった。


 小説を書き始めたのもまた、小学2年生ぐらいだったように思う。クラスの女の子に同じようにお話を書くのが好きな子がいて、お互いに見せ合いっこしながら書いていたのだ。

 ノートに3ページほど手書きで書かれた物語は、主人公のコアラとたくさんの動物たちのお話だ。最後は主人公のコアラが銃に撃たれて死ぬという、衝撃的な結末だったことを覚えている。絵本で好きだった、「ごんぎつね」の印象があったのかもしれない。


 そういえば、最近読んだ「ごんぎつね」に関するニュースで衝撃的なものがあった。「うちの子を主役にしてほしい!!」という要望が多数出された結果、主人公のごんが増殖したのだ。その結果、なんと劇の最後にがみな撃ち殺されてしまうという悲劇的な結末を迎えたという。安易に主役を増やすのも考え物である。




 3年ぐらいのお気に入りは「シートン動物記」「ファーブル昆虫記」だ。それぞれ一番印象に残っているのは狼王ロボの話と、フンコロガシの話である。私の犬・狼好きはここから端を発しているに違いない。このころはじめて犬を飼い始めたことも無関係ではないだろう。


 もうひとつ。狼好きに関しては、ジブリのアニメ「もののけ姫」の影響も大きい。作中に登場する山犬の一族に心を奪われ、彼らと共に暮らすサンが心底うらやましかった。おかげでこのころのごっこ遊びは、作中でサンがかぶっていたお面を模した手作りの耳付き仮面と、毛皮(に似せた白い布のベール)をかぶって家を走り回るというものだった。親からしてみれば、かなり迷惑だったに違いない。

 

 

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