秘薬
基本美徳
秘薬
俺は今、酒の入ったツボを小脇に抱え路地裏を走っている。
ツボは持ち主を殺して奪った。万が一追われている事を考え、なるべく裏や表を出入りし攪乱し走る。
「ふぅ、とりあえず追っ手は来て無い様だ。」
俺は乱れた息を整えるため、「ふー」と大きく息を吐く
「少し休みたいな…。」
口にだした途端、どっと疲れが全身を駆け巡り張りつめた緊張がすこしほどける。
それから休むために選んだ公園は最悪逃げ込む時を考え交番の近くにした。
「ついに手に入れたぞ!」
小さく拳を握りしめ、柄にもなくガッツポーズをする。
俺が手に入れたのは不老不死になる秘薬だ
中身は普通のお酒であると元の持ち主から聞いている。この酒の持ち主は冴えない中年男性であった。
しかし年齢なんて見た目ではかれない程かもしれない、まして不死の体ださぞや…ん?不死?
おかしい、ありえない、何故だ!!
俺は確かに相手を殺して酒を奪った!何故やつは死んだんだ!?
物を間違えたのか?しかしやつはこのツボしか荷物らしい荷物はなかった!
どういうことなんだ!!?
巡る思考を落ち着かせ考える。
もしかしたらこの薬は、飲んで不老不死になっても体のダメージは無視できないのかもしれない。
俺は思い切り頭を殴りつけた、普通の人なら即死だろう
だが不死であれば耐えて脳震盪を起こし、あたかも死んだように見えたんじゃないか?
ならば早くこの酒を飲まねば、相手が目を覚まし追ってきて殺されるかもしれない!!俺だって問答無用で殴りつけたんだ、殺されたっておかしくない!!
大きく深呼吸をする。
ゆっくり味わいたかったが考える時間はあまりなさそうだ、俺はつぼを傾けぐいっと酒を飲んだ。
「やあやあ、上手くいったなこんな若い体が手に入るなんて。しかしこんな若者が不老不死を望むなんて嫌な世の中になったもんだなぁ。」
秘薬 基本美徳 @moch
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