少女主人公の異世界転生冒険譚です。
成人するまでのストーリーは省略されていますが、孤児院で育ち、独力で魔法を学び、転生児にあるあるな言動が遠因で地域社会で差別されてきたことが語られています。
戦術的には現ストーリー上で最強主人公だと読者からは推測できるほどの腕前です。
ただし、それを当人は知ろうともせず、また周囲も最低限の人間しか知りません。
もちろん差別してきた社会には逆えず、また権力にも逆えませんし、思慮深さから対立しようともしません。
冒険者といえば食い詰め者が転がり込むヤクザな職業というのが本作品での冒険者の位置付けですが、主人公は辺境のそこそこ大きい冒険者ギルドの支部長にすら遠慮してロクな交流もできない、と言えば権力の底知れなさと彼女のスタンスが分かるかと思います。
自身への差別の解消や、社会的地位の一足飛びな向上など出来るはずもなく、社会問題の解決も当然ままならない。時にホゾを噛みながら、手の届く範囲の人間を救い、時に権力者に振り回されながら、世界を回り知見を深めていく。骨太な冒険譚が読める作品です。
地域の特色ある描写や、魔導に関する奥深い設定など、世界設定がしっかりと構築されていて、まさに世界は広いを実感できる作品となっていますので、腰を落ち着けて浸ってみてはどうでしょうか。