第48話 まずは馴染め

「忘れ物ないわね~」

 B・Bが全員に確認するようにUFOレプリカに乗り込む。

「忘れ物…というより、痕跡は消したわねではないのか…」

 呟くエドモンド、最もな意見ではあるが、そんなもの残してあろうがなかろうが意味の無いことなのである。

 てっきり隠密に上陸するかと思いきや、真っ直ぐに昼間から海を疾走しているのだから…。

「堂々と入国するんだな…」

「隠れる意味が無いのよ、全部知ってるの…筒抜けなのよ、あの女にね」

「あの女?誰の事だ?」

「アタシじゃないわよ」

 クリームソーダを飲みながら、手を横に振るプリンセス天功。

「ダンナ、アッシはピーン!ときましたぜ…ヒントは…3文字で『ヒ』から始まるあの方ですぜ」

「ヒから始まる…あの方?」

(ヒ…ヒ…ヒ…)

「まったくダンナの勘の悪さには辟易しますぜ…最後の言葉は『コ』ですぜ」

「コ?…コ…ヒーコー?コーヒー?…いや…ヒ…コ…はっ!」

「ソレです!!」

「ヒヨコか!!」

「ヒロコでさぁダンナ…」

「ヒミコよ…バカ…」

 B・Bが呆れたように会話を遮る。

「誰よ…ヒロコって?」

 プリンセス天功がHALに小声で聞く。

「とりあえず卑弥呼のほうから説明しましょう…ヒロコに関しては説明いたしかねます」


「ジャパンのシャーマンです…」

「シャーマン…」

 エドモンドがはて?といった顔をする。

 すかさずオヤジが話に割って入る。

「人面魚のことでさぁダンナ、喋るんですぜ」

「ほぉ、人面の魚か…面妖な…」

「黙れよ!! バカ2人」

 B・Bの眉間に深いシワが刻まれていたので、2人は黙ることにした。

(それはシ―マンよ!!)

 心の中で突っ込む、プリンセス天功であった。


 天候を操れただの、オカルト臭い話を散々聞いて、エドモンドの顔には胡散臭いな~という表情が駄々漏れ、オヤジがコクリコクリと眠りだし。

 プリンセス天功は星を眺めていた。


 話を聞きながら淡々と時間は進んでおり、UFOレプリカは本土へ上陸。

 日本海の砂浜でバーベキューの準備が進められていた。

 緊張感のない潜入であった。

「カニが獲れるのよココいらはね」

 B・Bがライトを頭に取り付け海岸を歩く、時折、シャバッと音がするので獲っているのであろう。

 後ろからオヤジがバケツを持って付いていく。

「ダンナ~カニですぜ、今夜はカニ鍋ですぜー」

「なんでもいい…もう月が出ているんだ、何でもいいから早く食おう」

「なんでもいいなら、コレ食べる?」

 プリンセス天功が木の棒を差し出した先にデローンとぶら下がっている生物…。

「なんだソレ?」

「さぁ?カタツムリの変種か…ナメクジの亜種か…」

「アメフラシですね」

 HALが答える。

「アメフラシ?」

「なんだソレ?」

「突くと雨が降るらしいです」

「さっきの卑弥呼とかいうシャーマンの話か?」

「いえ関係ありませんけど…ソレは突くと紫の体液を出しますよ」

「見た目に負けないグロイ技を持ってるな…コイツ」

「毒なんじゃない?」

「毒はないですけど食べて美味いかどうかは定かではないですね」

「とりあえず…焼いてみるか」

「エディ…アンタ火を通せば何でも食えると思ったら間違いよ」

「じゃあ、揚げるのか?」

「こんな水分たっぷりのブヨブヨを油に放り込んだら大惨事よ」

「そもそも、食うために獲ったんじゃないのかオマエ?」

「違うわ…自分だけが、こんな気持ち悪い生物を見つけたのが癪に障るので、みんなで気持ち悪さを共有しようと捕獲しただけよ」


「ダンナ~カニ獲れましたぜー」


「しかし…随分地味というか…毛深いカニだな…ここいらのは」

「モズクガニっていうらしいわ」

「詳しいな、さすが故郷」

「ん~ん…アソコの爺さんが教えてくれた」

 B・Bがライトを照らす先に網を持った爺さんが1人。

 照らされて、手なんか振っている。

「陽気な民族なんだな」

「あのさ~今さらなんだけど…こんなに堂々とカニ鍋なんか作ってていいのかしら?」

 プリンセス天功が首を傾げる。

「うん…なんだろう…なんかこう…イメージが違うというか、コレじゃない感が凄いんだが…」

「いいの!! どうせバレてるんだから、こうして鍋でも突いていれば、向こうから迎えを出してくれるわよ」


 30分もしないうちにそうなったのである。

「ほらね」

「捕まったんじゃネェか!!」

「いや~カニ鍋に盛られているとは思わなかったわ」

「さっきの爺さんか?」

「親切にカニを分けてくれたと思ったのにー!!」

 悔しがるB・B。

「コレが目的じゃなかったのか?」

「そうだけど、騙されたという事実に腹が立つのよー」


 なんでもいい…話が進みさえすれば…そう思うエドモンドであった。




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