第47話 放置プレイ
「放置プレイには慣れている…」
もはや月イチ更新となったのか…。
ジャポンに、ほど近い離島に辿りついてからの、まさかの放置プレイ。
エドモンドは頭を抱えていた。
アホ毛のように額の生え際から生えた触覚2本がピクリと揺れる。
「アレよ…なんかアニメのキャラみたいよエディ」
プリンセス天功が人差し指で突いたり、揺らしたり、弄ばれているエドモンド。
「主人公には個性が必要なのよ、シルエットで解らないとキャラデザ失敗らしいわよ」
燻製肉の作成に取り組んでいるB・Bとオヤジ、総指揮はHALである。
「ダンナ、香草が足りないんでヤンすが~」
HALの膨大なメモリーから、本格的なソレが導き出されたらしい。
3つの一斗缶が並べられ、フレーバーに、こだわっている。
「行けばいいんだろ…」
ちょっとふて腐れ気味に答え立ち上がるエドモンド。
「その触覚で探しなさいな」
B・Bがうちわで煙を燻しながらエドモンドにサラリと言い放つ。
「そんな機能が、これに備わっているものか…」
「そうなの?」
プリンセス天功がギュッと触覚を掴む。
「なんのために生えたんだか、いやはやまったく見当がつきやせんな、ダンナ」
肉を針金に刺しながら、ぶら下げていくオヤジ。
「DNAが混ざってきている…いえ、馴染んできている証拠ですマスター、気になさらずに…今はハーブを探してください」
「気にするだろ…俺、昆虫化してるんだぞ…」
「ゲホッ…ゲハッ…いいじゃない、ゴキブリとかじゃないんだし」
B・Bが煙そうに顔をしかめる。
「カミキリムシだったっけ?…はいコレ」
プリンセス天功がメモ帳を渡してきた。
なかなかのデッサン力でハーブの絵が何種か書いてあった。
「変なモノ取ってこないでくださいねマスター」
「カミキリムシもゴキブリも、そう大差ないんじゃないだろうか…」
ブツブツ言いながら森に入るエドモンド。
しばらく歩くと、崖から視えるジャポンシーその水平線に横たわる島国ジャポン。
「あれが…ジャポン」
伝説の地を目の前に、なぜか上陸するでもなく燻製肉を作っているわけだ…。
「俺は何をしているんだ…」
大きな声で叫びたいような気分に駆られるわけだが、実際に海に向かって叫べる奴は数少ないと思われる。
少なくてもエドモンドは、そういうタイプではなかった。
「俺はー…」
叫びかけたが、声が喉に引っかかるように言葉が続かない。
「何をしてるんだ…」
力無く呟いてハーブを探すのだ。
同時刻。
「カニでは勝てんかったのー」
ドクターアナハイムが、培養液に浸されたリッパ―を眺めて悩んでいた。
「今度は何にしようかな…」
お手製あみだくじに指を這わせていた。
「ムムム…コレか…」
ゴボッ…意識の無いはずのリッパ―の身体が震えた…嫌な予感を感じ取ったのかもしれない。
エドモンドがUFOレプリカに戻る頃には日は傾いて綺麗な夕日がトプンと沈む時刻になっていた。
ジャポンを背中に、夕日を眺める御一行。
オレンジの空が薄闇に変わる、夕食はラーメンである。
「変わった色のスープだな…」
「豚骨ラーメンでさぁダンナ」
「豚の骨…臭そうだな…不気味だし」
「あらぁ、美味しいわよコレ」
プリンセス天功は気に入ったようだ。
「紅ショウガがポイントね」
B・Bは替え玉している。
この2人がスープを掻きまわしている姿は、魔女が怪しげなクスリを調合しているようだ。
「じっくり煮込みやしたぜ、ダンナ、どうぞ」
喰えば美味いのだが…どうも製造過程が気になる。
「ハーブも捕ったし、燻製出来たら上陸ね」
B・Bがドンブリのスープを飲み干してジャポンを眺める。
「里帰りですね」
HALがズルッとミミズ(ナノマシーン)をすする。
「ん~故郷ね~、まぁそうなるんだけどね…」
「リリスはまだ…」
何事か言いかけたHALを笑顔で制したB・B。
「ノアの子孫が元気なんだから…ソレにアレに寿命なんてないわよ」
「そうですね…」
「変な里帰りになったわね、ノアの子孫と、その子孫が造ったアンタと、リリスの子共が一緒に帰ってきたんだから…」
「迷いましたね…随分と…」
「そうね…やっぱりね…躊躇したわね…この島でマゴマゴしちゃった」
「明日、上陸しますか?」
「えぇ…おかしな連中もいるしね、なんとかなるわよ」
「時は動き出します…」
「そう…止まった時間に留まり続けるリリスに時間は動いているのだと教えてあげないとね」
満点の星空に半月が白く浮かぶ海岸、エドモンドには2人の会話が聴こえていた。
聴覚も鋭くなっているのだ…。
(なんの話だ…さっぱり解らんが…燻製造りはなんだったんだ…)
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