第46話 同化
「ここがジャポン…」
「正確には離島ですが」
「なぜ、離島へ?」
「ジャポンに入るには、色々と手続きが必要でして…」
「観光じゃないからねー」
「観光は受けつけてませんしね」
「泳いで行けそうな距離なんですがねー」
「じゃあ、オマエ泳げよ…泳いで行けよ」
「いやぁーアッシはちょっと」
「エディが行けば?虫に化けてさ~」
「変身した姿でか?問答無用で撃ち殺されそうな気がする…」
「案外、仲間がいるかもよ?なんせ、そのベルトの生産地なんだから」
「スイカの名産地みたいな言い方するなB・B、それを言うなら、オマエの故郷じゃないのか?」
「故郷…そんないいものじゃないわよ…」
クルッと独りでUFOレプリカに戻るB・B。
「まぁ…里帰りって雰囲気じゃないんだろうな」
「人に歴史あり、触れられたく過去もあるわよ~」
「まだ幼いのに…おいたわしや」
「その感情の一欠けらでも俺に向けてくれないかオヤジ?」
「ダンナはアッシのお得意さんでやすからー」
「だからなんだ?」
「その、客からは搾り取れってのが家訓でしてね」
「オマエの家は代々、そういう感覚で生きて来たのか?」
「さて、とりあえずバーベキューと行きますか?」
「オヤジ…準備が良いな」
「えぇ、慣れってヤツですな」
「海の幸にも飽きたし、俺が肉を探して来よう」
かくして、エドモンドとHALが山へ肉探しに、オヤジと天功がバーベキューの準備にと別れた。
「この島は昔、USAの基地があったんですよマスター」
「なんだ、ジャポンじゃないのか?ここは?」
「いえ日本です」
「じゃあなんで?」
「政治的な理由ですね」
「ふ~ん、で今はジャポンなのか」
「USAの
「
「いえ、ここの基地には何もありませんよ、ただの基地です」
「オマエの居た基地は、ただの基地じゃないんだな…」
「もちろんです」
感覚がマヒしているのだろうか、ただの基地って言葉に安堵する自分がいる。
「マスター、高確率で採取したキノコは人体に悪影響を与えますが…どうなさいますか?」
「えっ?」
袋いっぱいに獲りまくったキノコの大半が食用ではない。
その事実を受け止められない。
(この綺麗なキノコが食べれないだと…)
お菓子の様な赤やら黄色やら、なんなら甘いんじゃないかと思えるキノコがだ。
目の前で、ミミズを貪り食うサッカーボールに全否定とは…。
「別に止めませんけど…マスターは少々、人離れしてきましたから、もしかしたら大丈夫かもしれません」
夜は盛大なバーベキューであった。
野戦食と海鮮に飽きていたところに、野良豚が手に入ったのだ。
「さすがエディね~」
軍隊時代では大した成果は上げられなかったのに、逃亡してから成果を上げるとは皮肉なものである。
「いやぁーたまたまだよ…こうヒュッとね」
などと得意気に話すエドモンド。
特に、自身の境遇を嘆く様子は見受けられない。
どこまでも前向きだ。
なかなかに波乱万丈な人生を、しっかりと受け止めている、いや受け流している。
ちなみにエドモンドがいうヒュッとは、思いのほか足の速かった豚を、確実に仕留めるべく「変身!!」しちゃったのだ。
通常時でも身体能力は向上している。
あまり本人が自覚していないだけで…常人に比べれば遥かに優れているのだ。
残念ながら比較対象が乏しい環境が災いしてまったく気づかないだけである。
「そのキノコ食うんでやすかダンナ?」
「エディ…それは怪しい色をしているわよ?」
「食べたらわかるんじゃない?」
「マスター、繰り返しになりますが…」
「額がムズムズするんだが…」
「えっ?胃を飛び越えて、脳みそにダイレクトなの?エディ…」
「ダンナ…アッシは止めやしたぜ」
「ここからが見ものよね」
「マスター録画準備はOKです」
「なんか額が痒いんだよな」
ボリボリと額を掻きはじめるエドモンド。
「血が出てるわよ…エディ」
「ダンナ!! この薬は、その昔…」
「なんかキモいわ」
「マスター顔をカメラに向けてください」
「あっ!!」
「エディ…気を落とさないで…」
「ダンナ、引っ張ってみましょうか?」
「もう…笑うしかない…」
「マスター、触覚が生える瞬間は完璧に収めました」
「触覚?」
エドモンドの額から昆虫のような触覚が2本生えていた。
「いよいよ…同化が進んでるのね、あのベルトが廃棄されたわけが解ったわ」
どうなるんだエドモンド…世界一大きなカミキリムシになってしまうのか?
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