第44話 誕生 改良人間
「あら~、とんでもねぇ姿になったものね~」
プリンセス天功は柔軟に現実を直視した。
「なんのDNA撮りこんだのかしら?」
B・Bが首を傾げる。
「昆虫であることは間違いないですね…後で調べてみましょう」
HALはエドモンドに興味深々だ、自己学習プログラムが、いい具合に機能している。
「ダンナ…人の面影が見当たらない姿になっちまって…」
「確かに、共通点の少ない姿になっちゃったもんよね~」
「歩いて喋るだけで充分よ」
「偏見なく付き合えるかどうか…アッシは不安です…」
「はっ…化け物が…」
リッパ―がエドモンドに突っ込んでくる。
「もういいんだ…」
「あっ?」
エドモンドは振り下ろされたハサミを片手で受け止め、リッパ―の顔面に拳を叩きこむ。
ダンプに跳ねられたようにリッパ―の身体が宙を舞う。
「おぉうー」
御一行の面々から感心の歓声があがる。
「いける!! 甲殻類最強決定戦はエドモンドよ!!」
B・Bが拳をグッと握る。
「当然です。改造人間と改良人間では融合のレベルが違います」
HALの興味は戦いにはすでに無いようで…ひたすらオヤジと使えそうな遺物を回収している。
「やはり…勝てんか…撤収準備だ急げ、ワシは先に引き上げるが、リッパ―くんの回収を忘れるなよ、頭だけでも持ち帰れよ」
舌打ちする、プロフェッサーアナハイム、警護の兵と洞窟を後にする。
湿った地面に這いつくばるリッパ―。
「くそっ…こんなはずじゃ…」
「まだ動くのか…カニ男、お前も大概、不死身だよな…」
「とどめってことか…」
「そういうことだ、正直、もう会いたくはないのでね」
「そうか…そうだろうな…確実に息の根を止めろよ、俺は…今、自分の意思で強化を望んでいる、オマエを殺してやりたいと思っている」
エドモンドは真っ赤な複眼でリッパ―を見ていた。
足でリッパ―を真上に蹴り上げ、宙に浮いたリッパ―に回し蹴りを叩きこんだ。
リッパ―の身体が『く』の字に曲がり、洞窟の壁にめり込んだ。
すでに意識は途切れているであろうリッパ―。
ライトセイバーレプリカを拾い、リッパ―に近づくエドモンド。
そのまま、リッパ―の心臓に突き立てた。
ビクッと身体が震え、リッパ―は前のめりに地面に倒れ込んだ。
ジジジッジ…。
ライトセイバーレプリカの電池切れが近い。
「ふうぅー」
大きなため息を吐いて、エドモンドは膝から崩れるように倒れた。
「よし、撤収!!」
オヤジが風呂敷を担ぎ、いち早く出口へ走る。
HALとプリンセス天功がエドモンドを引きずるように運び出す。
最後にB・Bが洞窟の出口から手りゅう弾を放り投げ、UFOレプリカへ戻った。
とどめと証拠隠滅は抜かりは無い。
寝かされたエドモンド、その姿は未だ昆虫人間のままだ。
「さて、HAL、調べるのよ」
「はい…すでにDNAサンプル解析は終わってます」
「よし、ベルトの説明からよHAL」
このベルトは人間が他の生き物のDNAを摂取するためのツールです。
つまり、登録されたDNA情報をもとに、自らの身体を強化するための兵器です。
装甲歩兵とは違い、体一つで輸送・派遣・投入できるので、コスト面で大変有意義なシステムです。
このベルトは、エドモンドのDNA情報を捕り込んで、音声によって起動します。
「ポーズはなんでもよかったのね~」
「で?なんのDNAを捕り込んだの?コレ?」
「はい…カミキリムシです」
「また微妙なものを捕り込んだわね…」
「言われてみれば~まぁ立派なアゴよね~」
「ダンナ…カミキリムシって…なんかもっとこう…どうにかならなかったんでやすか?」
「ベルトにくっ付いたのかしらね…なんか…そういう運命なのよね…で?戻るの?コレ?」
B・Bがエドモンドを指差す。
「意識が戻れば、自分で解除できます」
「そう…それだけでも安心だわ」
「依頼は果したと解釈していいんでしょうかね~」
「依頼?」
「だって、化け物退治に狩りだされたわけだし~」
「OKよ!! 化け物は多分、このベルトの持ち主、これはエドモンドが引き継いだから問題ないし、カニ男まで退治したんだから」
「そうですなー、洞窟も爆破しやしたし…」
「ややかしいことにならないうちに、退散よHAL」
UFOレプリカは、気絶したままのエドモンドを乗せジャポンへ進路を向けたのである。
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