第43話 ジャポンのお家芸

「ちょっと見ない間に大分、人間離れしちゃったわね~彼」

「イメチェンってやつじゃない、まぁ…アイツには監禁された借りがあるのよ」

「エロい目にあったんだっけ?」

「エライ目よ…エロい目には合わなかったわ」

 B・Bとプリンセス天功の緊張感の無い会話が続く。

「とりあえず少尉…いや元少尉、どうだい俺とサシでやってみないか?」

 リッパ―がエドモンドを挑発する。

「カニ男!! アンタとの因縁はアタシが先よ」

「ん?コソどろ風情に用はないんだが、準備運動程度に相手してもいいぞ?俺は」

「ナメんなよ!! カニ風情に大口叩かれる覚えはねェんだよ!!」

 ガンッ!!ジャリーン!!

 プリンセス天功の右手にはハンドガンが握られていた、その銃口から白煙が立ち上る。

「なっ?」

 抜いたと同時に発射された弾丸は、リッパ―の胸で弾かれていた。

「お前が言ったんだぜ…俺のことをカニだと…」

 ボシュッ!!

 リッパ―の腕から、無数の針が放出される。

(ニードルガン!!)

 プリンセス天功は後方へB・Bが横に飛び退る。

 2人が立っていたあたりの岩がボコッと窪み、辺りに針と小石が飛び散る。

「お前の相手は俺のはずだろ?」

 エドモンドが白雨を抜いてリッパ―の前に立つ。

「おうおう、そうだったね、元少尉」

(面白うなってきたのー)

 洞窟の隅でニタニタと笑うプロフェッサーアナハイム。

「浮かれたベルトなんか巻いて…似合わないぞ元少尉」

「似合わないのは百も承知…外れないモノはしょうがない…」

「気持ちは解るがな…俺の腕や身体も…まぁ、どうでもいいや、お前のせいだしな」

「逆恨みというんだ、そういうのを…」

 リッパ―とエドモンド、双方に緊張が走る。

 エドモンドの白雨をリッパ―のハサミが弾く。

 離れれば、ニードルガンの餌食だ、エドモンドには近接戦しか勝機は無い。

「さすがだねー、元少尉、近接戦闘のスペシャリストだとは聞いていたが、なかなかどうして…想像以上だ」

「口を閉じないと舌を斬り落とすぞ」

 押しているのはエドモンド、だが、リッパ―の甲羅を貫く一撃が与えられずにいる。

(クソッ…硬い)

 エドモンドが白雨を鞘に納め、ライトセイバーレプリカに持ち替える。

 ブンッ…という重い音と緑の光が洞窟を照らす。

「面白そうなモノ持ってるじゃないか」

「面白くは無い…が便利ではある」

 セイバーがリッパ―のハサミに食い込む。

(イケる)

 だが、力では改造人間リッパ―のほうが上だった。

 ブンッ!とハサミを振り回してエドモンドを吹き飛ばす。

「非力だね~元少尉、メシは食ってるのかい?随分と軽かったが?」

「大きなお世話だ…お前こそ、変なモノ食って食あたりはどうした?」

「思い出させるんじゃねぇよ!!」

 リッパ―のニードルガンがエドモンドを捉える。

「死ね…」

 そのときHALがリッパ―のハサミに体当たりした。

「マスター、変身です」

「はっ?」

「ベルトに手をかざして、変身と叫ぶのです」

「はっ?」

「早く!!」

「いよいよね…目には目を…改造人間にはお約束よね」

 B・Bが楽しそうに笑う。

「ダンナー、ジャポンには怪人と戦う孤高の戦士の伝説がありやしてね…」

「今、いるのかその情報…」

「いや、それがベルト巻いて変身するらしいんですわ」

「怪しい人と戦う…孤高の戦士…えぇい、変身!!」

 …………。

「イテェー!!!」

 突然、もがき出したエドモンド。

「えっ?なんか聞いてた話と違うわ…痛いって話は聞かなかったわ」

 B・Bが首を傾げる。

 なんか、エドモンドの身体が不気味に変貌していく…。


「なんだありゃ?」

 プロフェッサーアナハイムが首を傾げたのも無理はない。

 リッパ―なんかカクンと顎が外れかけているのだ。


「なんかちょっと…生体兵器感が強いわ…想像以上に」

「ちょっとヤダ…昆虫っぽい…キモい…触りたくない感じ」

「ダンナー、ドンマイですぜ」


 俺は…何になったんだ?

 鏡が無いのが悔やまれる。

 解る事…5感が異常に研ぎ澄まされている。

「マスター、記録してありますから後で再生しますので、とりあえずチャチャッと片づけてください」

 視える範囲でよく解る。

(俺は…今、見た目、確実にリッパ―より人類からとんでもねェ速度で離れている)


「もういい…行くぞリッパ―」

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