第41話 南の島のカメハメハ

「ヤシの実って…固いのね…」

「イメージ通りと言えば、まぁそうでしょうな…」

「バカなことしたわね」

「思えば不幸な事故でしたね」


 B・Bがヤシの実を欲しがり、オヤジが高枝切りバサミを持ち出し、プリンセス天功が伐採を試みるも失敗し、エドモンドが、ならばと名刀『白雨』で一閃…久しぶりの上陸で日本刀を抜いたせいで、いささか調子に乗って、斬りまくっているうちに頭上へゴンッと…。


「えぇい…当たり所が悪いとこんなものか!」

 と言ったか言わないかは、さておいて…現在、絶賛脳震盪のうしんとうの真っ最中である。

 とりあえず、プリンセス天功が錆びると悪いということで、『白雨』は船内に持って帰った。

 砂浜で海水パンツ姿のまま寝転がるエドモンド。

 遠目に見ていればバカンス以外のナニモノでもない。

 なにしろビーチチェアにビーチパラソルの日陰の下で強制的に寝ているわけで…。


 その周りでは、やるべきことはやった。

 とばかりに、ビーチを満喫している御一行である。

 B・BとHAL、プリンセス天功は、ハイレベルなビーチバレーを繰り広げている。

 もはやスポーツというレベルすら超えて、小さな戦争の様相をみせている。


 鉄板を持ち出して、ひたすら焼きそばを焼くオヤジ、禿げた頭に鉢巻を巻いているが、どこで学んだ文化なのだろうか…。

 焼きそばとは、こう焼くべき! という信念が、そう見せるのだろうか、心なしか男前である。


 エドモンドが目を覚ましたのは昼を回った頃であった。

 焦げた焼きそばの残りを、目覚めの直後に食わされて、岩場の隅で鉄板を洗っているわけである。

 アロハのボタンをキチッと閉めているのは、B・Bがエドモンドの両胸に貝殻を置いたせいで、恥ずかしい日焼けが出来上がっていたからだ。

「まったく…うっかり気絶もできやしない…」

 ブツブツと文句を言いながら亀の子タワシを器用に使うエドモンド。

 普通は、うっかり気絶する機会なんて、そうそう無いのだが…この世界では文字通り、命取りに繋がるわけで…悪戯で済んでいることはラッキーなのである。

「やはり…タワシは亀の子に限る! 食洗マミーレモンとの相性は抜群だ」


「海を汚すでなーい!」

 不意に頭頂部にいい音と同時に痛みが走る。

 奇しくも、ヤシの実で出来たタンコブにクリティカルヒットした。

 再び、エドモンドは気を失ったのである…。


「ダンナー、どこでやすかー」

「まったく、洗い物が嫌で逃げ出すとは呆れるわね」

「反対側の海岸にはアイツラも居るってのにね~」

「居るのはUSAだけではありませんしね」

「はっ?」×3

 HALの一言で一同絶句である。

「誰?誰がいるっての?」

「無人島じゃないのココ?」

「住みやすそうな島ですからな~」

 ザクッ!

 オヤジの足元にヤリが刺さる。

「ん?」

 鬱蒼とした草の陰に松明たいまつの灯りがボッ、ボッ、と灯る。


「貴様ら…このカメハメ王国に何用だ?」

 ヌッと姿を現したのは、絵にかいたような南国の原住民、その長と御一同様であった。


 ………相手が悪かった……。

「いやぁ~それならそうとおっしゃっていただければ…」

 酋長っぽい人が、B・Bにお酌している。

 ヤリとかで勝てる相手ではないのだ…。

「いやもう…あの化け物を引き取っていただけるのであれば、もう…協力は惜しみません」

「で…ウチの若いのが世話になっていると思うのだが…」

「あっ、お連れ様…いやぁ~海岸で倒れていたところを、はい…さらって、いや…保護しております、おい!」

 簀巻すまきにされたエドモンドが丁重に運ばれてくる。

 打ち所が悪かったのか、未だ目を覚ましていないようだ。

「1日に2度も気絶されるとは…さすがダンナ…」

「変わった体質よね~持病か何かかしら…」

「マスターの生存を確認、生命に異常なしです」

「よし、万事OK、今夜はココで騒いで飲んで、明日は魔物狩よ!」

 B・Bが乾杯の音頭をとり、その夜は盛大な宴会が行われた。


 一方その頃、対岸では…。

「では行くかの」

 ドクターアナハイムが新兵器(リッパ―)を引き連れ、謎の洞窟へ潜入を試みようとしたいた。

「焼きそばはタッパ―に詰めといてくれ、後で弁当代わりに食うからの」

 年の割に食欲は旺盛、元気なじい様である。

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