第40話 プリンヨーグルト

「つまり…B・Bは人魚を食って、死なない身体を手に入れたってことか」

「正確には違います。口から摂取したのではありません、強制的に融合させられたというのが正しい表現です」

「融合?」

「ダンナ、アレですよ、アレ、プリンとヨーグルトを混ぜると甘味と酸味のコラボで旨さが増すってヤツですよ」

「プリンス…それは邪道よ! プリンの甘さを消してしまうわ」

「いやいや…消えるわけじゃないんでヤスよ、変化するんです、進化するんですよ プリンセス」


 プリン馬鹿達のどーでもいいプリン談義は続いているが、今は放っておきたいエドモンド。

 ちなみにエドモンドは、混ぜるのもアリ派である。

(混ぜるって…勇気と好奇心)


 プリン談義が終息を迎えても、強化ガラスの向こうでは、人魚が相変わらず暴れている。

「なぁHAL、B・Bは死なないってことか?」

「死なないといえばそうです。正確には、時間を止められているという表現が近いです」

「時間を…」

「そうです。アダムス・ペインと呼ばれてました…」

「呪いよ…」

 B・Bがエドモンドの脇に並んで人魚を睨む。

「『ダレカ』をお前たちの祖先は『アダム』と名付けた、『ナニカ』を『リリス』と呼び、アダムのコピーに『イブ』の名を与えた…」

「最初の人間ってアダムじゃないのか…」

「アダムは人じゃない…神に似せて造られた『ダレカ』だ。イブはアダムの肋骨から造られた

 アダムのコピー、ヒトの祖先は『ノア』だ」

「お前は…何者なんだB・B」

「私は…リリスとアダムの72体の子供、そのひとり『ベリアル』」

「ベリアル…悪魔の名ね」

 プリンセス天功がカップ蕎麦をすすりながら部屋から出てきた。

「よく知ってるわね」

「堕天使ベリアル…無価値なもの 惡 反逆者 そして闇の子供を指導する者」

 HALの説明が入る。

 オヤジとエドモンドが置いて行かれるからだ…。

「闇の子供?」

 エドモンドが呟く。

「お前ら、ノアの末裔のことだ」

「ベリアルさん…なんでB・Bなんです?」

 オヤジがB・Bに尋ねる。

「フッ…正確には、ビヨンド・ベリアル 惡の向こう側という意味らしい」

「悪の向こう側…」

 エドモンドが最もらしい顔で呟く。

「ダンナ…解ってるんですか?」

「……さっぱりだ……」


「いいのよ、今は…それで」


 なんだか小難しい話が続いた同時刻。

「これを食えというのか?」

「プロフェッサーアナハイムの命令です」

「あのジジイ…なにを考えてやがる…」

「お気持ちお察しします」

「せめて調理出来なかったのか?」

「それが…斬ろうが、焼こうが、どうにも…」

「油断したら、逆に食い殺されそうなんだが…」

「これを」

 差し出されたナイフとフォーク。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁー」

 皿の上で縛られて暴れる人魚を前に、叫ぶリッパ―であった。


「ジャポンには何があるんだ?」

「さあね…」

 エドモンドの問いかけに子供のように笑うB・B。

「で?ジャポンには、いつ着くの?」

「その前に行くとこがあるのよ、HAL エヴァまでは後、何時間くらい?」

「はい…本日14:38到着予定です」

「エヴァ…ってなんだ?」

 エドモンドがプリンセス天功を見る。

「闇の獣…だったわよね…HAL」

「その通りです、博識ですねプリンセス」

「闇の獣…」

「ダンナ…いい予感はしませんな~」

「あぁ…嫌な予感しかしないな…できれば引き返したい」

「ダンナ、コレを…」

 オヤジがエドモンドに差し出したもの。

 右手にプリン、左手にヨーグルト。

 フッと笑って受け取るエドモンド。

「冷蔵庫にな、2つあれば、こうやって食うのが俺の食い方だ」

 そういうと、エドモンドはプリンとヨーグルトを半分づつ食べて、プリンをかき回してヨーグルトの中に混ぜた。


 同時刻…。

 縛られたリッパ―の口に人魚をねじ込もうとプロフェッサーアナハイムが苦戦していた。

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