第37話 甲殻類最強決定戦

 渋々、甲板に出ていくリッパ―。

(何が試して来いだ!)

「リッパ―大尉、こちらに足を置いてください」

 なにやら甲板で慌ただしい船員たち。

「あっ?これ?なに?ココに立てばいいのか?」

「はい……カタパルト設置OKです!」

「カタパルト?」

「カウントダウン、スタート…9…8…」

「おい…まさか…」

「3…2…1…発艦!」

 リッパ―の下半身が、とんでもねェ速度で持っていかれる。

「GYAAAAAA――」

 リッパ―が空へ向かって飛び立った。

「Drアナハイム、大尉は飛べるのですか?」

「ん…そんな改造してないが…カニの甲羅に張り付かないことには勝負にならんじゃろ」


 ビターンと硬い甲羅に叩きつけられたリッパ―。

 痛いなんてもんじゃない…。

 カニの甲羅の上だ…黒いボツボツが気持ち悪い。

(ボツボツもデカいな…気色ワル…あれヒルの卵じゃなかったっけ?)


 しかし…この発育過多なカニをどうしろというのだろうか、あの声のデカい老人は…。

「聞こえるか?リッパ―くん」

 鼓膜に直接、じい様の声が響く。

「なんだ?」

「リッパ―くん、左手じゃその左手には、今回は小型のミサイルが装備されておる試してみてくれ」

 どうでもいいが、寝ている間に、じい様が取り付けた機能は起動するたびに痛みが走る。

「どうゆう仕組みで、耳に直接じい様の声が響くんだ…」

 ぼそりと呟いたつもりだったのだが

「それはのー頭蓋骨に直接、骨振動で伝えるためにスピーカーを埋め込んでいるんじゃ」

 なんだか大雑把すぎて解らんが、どうやら自分の頭に色々埋め込んでくれたらしい。

「それはそうと早いトコ、ミサイルをぶち込んでみてくれんかな」

「あー解ったよ」


 リッパーは、足元の甲羅めがけて左手を構える。

 ガパッとハサミが上下に開くと、なんか左肩のあたりまで熱が伝わってくる…なんか熱い。

「熱ッ!」

 と思った矢先、左手いや、左ハサミからボシュシュシュシュッ…とどこに入っていたんだ?ってくらいの小型ミサイルが飛び出す。

 半信半疑で足元にぶっ放したのがリッパ―の不幸であった。

 甲羅が割れて、カニの内部へ落下する。

 カニみそで溺れかけるという、カニ好きの夢をリアルに体験しているリッパ―。

「リッパ―くん、ミサイル全弾発射後はただのハサミじゃから、今ね、交換用のハサミ飛ばすから、上手い事キャッチしてくれ」

 ほどなく、パラシュートでゆらゆらとハサミが降ってくる。

 カニみそまみれの右手でキャッチして付け替える。

「今度は何だ…」

 左手をとりあえず、正面に向けて構えてみる。

 ボワッと炎が噴出される。

「なるほど、火炎放射器…だから熱ぃんだよ!」


 リッパ―が孤軍奮闘すること15分…あたりにいい香りが漂いだすと、カニの動きは止まっていた。

「巨大カニ…完全に沈黙」

 テンプラ艦内で歓声が騰がる。


「さぁて…今夜はカニパーティじゃ、フェハハハハ」

 Drアナハイムの高笑いが響く。


 テンプラでカニパーティが盛大に行われている。

 リッパ―は独り自室にて携帯食をボソボソと食っていた。

「俺は…カニが大嫌いだー」

 立派なハサミを震わせて叫ぶリッパ―が咆哮した同時刻。


 テンプラの後部に括り付けられた巨大カニの足を1本切り取らんと、B・B達に促されエドモンドがライトセイバーで焼き切っている最中であった。

「なんで俺が…」

 上手に焼切るエドモンド、さすがである。

 海面に落ちたカニの足を、手際よくUFOレプリカに縛り固定するプリンセス天功とオヤジ。

「ダンナ、早くこちらに」

「あぁ…」

 ロープを伝い、UFOレプリカに戻る。

「エドモンド回収成功、HAL! 緊急離脱」

「ラジャッ」

 巨大なカニの足を積んだ円盤は、テンプラから遠ざかっていく、ステルス機能ってヤツである。

 オーバーテクノロジーをフルに活かした食糧強奪。


 追う者と追われる者、同じ月夜の下でカニなべを堪能しているのであった。

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