第55話 ゴロ合わせ

「さて…会議を再開します」

 プリンセス天功メインの『エディの変身後の呼び名を決めなきゃね』会議が再開されようとしていた。

「モチーフはカミキリムシ=ロングホーンビートル感を残しつつエドモンドの『ド』を残しマスクドライダー風のジャポンに馴染みある親近感をも内包することを条件とします」

「長いわ…要するにナントカ『ド』ドウトカにすればいいのよ」

「いやぁ~響きは大事ですぜ」

「そうね、言い難いのはNGよ」

 3人を他所にエドモンドはカミキリムシから戻る途中であった。

(地味に痛い…)

 HALだけはジーッとその様子を観察している。

 記録の必要を強く感じているのだ。

(今度はどう混ざるんだろう…)

 すでに髪の毛から2本触覚がアホ毛のように生えている。

 今度はどこにロングホーンビートル感が前に出てくるのだろうか…。

「ハァ…ハァ…」

 息が荒いエドモンド、HALの期待を裏切るように、その外見に大きな変化は現れなかった。

(息苦しい…)

 変身を解除したエドモンド、どうにも息が、しにくいというか息苦しい。

 首を上に伸ばして顔を上に向ける。

 ギーッ…。

 皆が振り向く。

「な…なんだ?」

 視線を独り占めしているエドモンド。

「ダンナ…今、変な声だしましたか?」

「いや…そんな覚えはない」

「声というか、鳴いた?エディ」

 プリンセス天功が首を傾げる。

「ちょっと、もう一度首を大きく動かしてみて」

「なに?こうか?」

 下から上へゆっくりと首を垂直に動かす。

 ギーッ…。

「ほら、鳴いた」

「俺なのか…俺は鳴けるのか」

「これですねマスター」

 HALが後ろからコロコロ転がってくる。

「どれどれ」

 B・Bがエドモンドの後ろへ回ってエドモンドをしゃがませて首筋を見てみる。

「アハハハハ…コレ…ウケる」

「なんだ?何があったんだ」

 オヤジとプリンセス天功がエドモンドの首筋を覗き込みに近寄ってくる。

「ダンナ…首の後ろが」

「なんだ?」

「コレはどう表現していいかしら」

「どうした?」

「マスター…首にですね、なんかこう、節が出来てるというか、どうもこの節が伸縮する際に音が出るようです」

「アハハハハ」

 足をバタバタさせて笑い転げるB・B。

「ダンナ、気を落とさねえでくだせぇ…そのうち良いこともありますぜ」

「エディ、隠密捜査とかでき無さそう、隠れてもいきなりギーッじゃねぇ、ウフフフ」

 自分はこの先、どうなっていくのか?

 先の視えない自分という名のトンネルでエドモンドは考えていた。

 行き着く先はカミキリムシなのかと…。

「しかし、後ろから見ると目立ちますな~ダンナ」

「そうか?自分では解らないというか、違和感もないのだが」

「そりゃ、変態している張本人には解らないことなのかもしれないけど…ちょっとキモいわよエディ」

「気持ち悪いのか?」

「虫嫌いにはたまらないかもね、フシフシしてて、アタシは大丈夫、許容範囲よ」

 B・Bが目を逸らしながらフォローする。

「マスター、調べましたところ、昔の人はコレを着用していたようです。映像が見つかりました、壁に投影します」

 HALが再生した映像には、バッタと思しき改造人間がトカゲっぽい怪人と戦っていた。

「なるほど…バイクとマフラーか」

「そうゆうことよ、マフラーならさっきの土産物屋で買ったわ、きっと」

「赤いマフラーよB・B」

「任せてちょうだい」

「なにを任せるんでやすか?」


 適当な会話の後、B・Bが高々と掲げたもの、マフラーというか手ぬぐい…。

「白いわ…」

「変な模様がイラッとしますな」

「セットで付いてる口の尖ったお面はなんなのかしら」

「ひょっとこというらしいですね」

 HALが説明する。

「とりあえず、コレを首に巻いてればエドモンド」

「うむ…こうか?」

「…似合うわよ…」

「あぁ…なんかリラックスしてるなって感じがしやす…」

「ドンマイ、エディ!!」

 一同、エドモンドから目を逸らしている。

「ドンマイってなんだ?」

「次が在るさって意味よ」

「それは知ってるが…そうすると今はダメなのか?」

「ネイキッドより葉っぱ一枚の方がマシってことね」

 B・Bが親指をグッと突き出す。

「ドンマイ!!」×3


「さて、問題は解決したし、次に行くわよー」

 充電を終えた電気自動車に錆びたママチャリを括り付けて、一同は次を目指す。

(次ってどこなんだ?)

 エドモンドが首を傾げて考えているが車はスイスイと進んでいく。

 きっと誰も考えてない『次』を目指して…。

「次のドライブインでは、何が食べるのだろう?」

 一同、そんな程度のことしか考えていないなか、エドモンドはママチャリに黒いマジックで書かれた『DAサイクロン号』の文字を眺めていた。

(ダサイクロン号?)

 そして思うのだ、俺はアレに乗るのだろうなと…。

 窓を開けると手ぬぐいがハタハタと風になびく夕刻であった。

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