第26話 呪われた大地
「俺…必要ないんじゃないだろうか…」
エドモンドが足元を転がるHALを見ながら呟いた。
(俺…この派手なサッカーボールより弱いんだ…)
考えてみれば、銃弾を弾く装甲に覆われた自立学習型AI、例えるなら核シェルター並の強度を誇る金庫が歩いて、しゃべるのだ。
(中にナニが入っているのやら…)
もともと、託された時点では処分を…ということだったが実際、破壊不可なのだ。
(やっぱり海に沈めるか…)
起動しちゃうんだもん。
実際、HALが起動しちゃえば、ほぼ無敵なのだ。
歩き、考え、破壊不可。
(ジャポンに連れてけってもさ~自分で行けるんじゃないだろうか…)
エドモンドは護衛のつもりだったのだが…どちらかというと、HALに護衛されているのはエドモンドのほうである。
軍から追われるエドモンドを守るHAL…。
ガックリと
エドモンドの頭で誰かが囁く…
『暗黒面に魅入られておるぞ…エドモンドよフォースの囁きを聞くのだ!フォースと共にあれ』
「うるせぇよ!」
「どうしました?マスター(仮)エドモンド?」
HALが不思議そうな顔でエドモンドを見る、実際は顔などないのだが…そんな気がした。
とりあえず温泉宿をとり、温泉でカポーンと疲れを癒す。
身体に付いた砂ぼこりやらミディクロリアンやらを洗い流す。
『おいでやす エリア51 天然原子力温泉』
どうやら不思議な力で自然と湯が沸くらしい…。
名物は夜になると青白く発光する露天から見る月。
草木が邪魔しない大展望。
注意書きがある…身体が青白く発光しだしたら速やかに温泉から出て、隣のカプセルにお入りください。
「いい湯だ…コイツさえいなければ…」
「いやぁ~奇遇ですな~ダンナ」
頭に手ぬぐいを乗せてエドモンドに近づくオヤジ…『骨董品グラスホッパー』の店主。
「なぜ?こんなところに居るんだオヤジ」
「仕入れに決まってるじゃないですか、ここは昔から出所の妖しい…ゴホン…遺物が採掘される場所でしてね~」
「ほぉ~、ここからガラクタを拾って俺に売りつけていたんだな…」
「そんなダンナ~、ガラクタだなんて…」
エドモンドも学んではいるのだ…幾度もヒドイ目にあっているのだから…どうも、このオヤジの言うことは半分程度に聞いておかねばならないと…。
「ところでダンナ、コレ飲みましたか?」
とオヤジが茶色い瓶を差し出す。
「なんだソレは?」
「あっ!すぐ飲んだほうがいいですぜ…500円です」
「また騙そうとしているのか!」
「違います!売店で売ってるんです、コレは聖水です、魔除けです」
「なんだ?
「この地はね…昔、神の怒りで呪われた大地なんでさぁ…神の雷で草木の生えぬ不毛の大地に変えられたんです。」
剥げ頭を手ぬぐいでキュッキュッと磨くオヤジ。
(オマエの頭も不毛の地…)
「ところが、この地で暮らす人達が居たんです、その名も『オロナ民』」
「オロナミン?」
「そうです、彼らは人の住めぬ、この地で暮らしていたのです」
「ほぉ~」
「その『オロナ民』が飲んでいたのが、この液体」
「ソレを飲まないと呪われるとか?」
エドモンドがゴクッと唾を飲み込む。
「…呪われないとか?」
オヤジの曇ったメガネがキラーンと光る。
「とりあえず1本貰おう!」
「毎度あり!」
湯上りの聖水は甘く、シュワッと爽快で体内からナニカが浄化されたような気分になった。
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