第24話 睡眠学習

「しかし…ちょっと見ない間に、随分と戦い慣れしたもんじゃねぇか」

「………」

 エドモンドは仕事人に言われるまで意識しなかったが…躊躇なく殺している。

「結構、結構、何があったか知らないが、いいぜー…強くなった、剣に迷いがねぇ!」

 仕事人の刀がエドモンドの左肩をかすめる。

(見切れる)

 この間、対峙した時には、仕事人の体さばきに翻弄されて剣筋を見切れなかった。

 受けに回る一方だったのだ。

 しかし、今は剣を見切れる…。


 エドモンドは仕事人の刀を脇にすり抜け、首筋に切っ先を突きつけた。

「ハハッ…これまでか…」

 仕事人は刀をカシャッと地面に落とした。

 エドモンドは落ちた刀を足で蹴り飛ばし仕事人から遠ざける。

「何をしたかしらないが…いや…相手を殺す気で刀を振れば…ってことか…殺れ」

「………」

「何を躊躇う、どうせ俺はしくじったことが知れれば、別の仕事人に始末される身だ…情けがあるなら、この場で…闇に落ちても、侍として死にたいのでね…頼む」

 エドモンドに最後の「頼む」は聞こえなかった…。

 首を刎ねたのだ…一瞬で…。


『侍』という言葉に反応した…言葉を聞いた瞬間に右手がピクッと動いた刹那…名も知らぬ男の首を刎ねていた…。


 ビュッと刀の血を払ってチンッと鞘に白雨を収める。


「周囲1Km圏内に人型の生体反応はありません…兵士5名沈黙です。お疲れ様でしたマスター」

「うるさい!」

 エドモンドが珍しく声を荒げた。

「俺に…何をした…」

 エドモンドは解っていた…このサッカーボールがただの、おしゃべりボールではないことに。

 恍けていただけ…現実から目を背けただけ…。

 あの女兵士が命を賭して自分に託した遺物…起動させてはいけない遺物…。


「アドレナリンの分泌量が一定値を超えたとき本能を解放しやすくしました」

「本能…解放…」

「解りやすく咀嚼しますと…アナタの高い身体能力を、ほぼ100%殺意に向かうようにしただけです」

「俺に何をしたんだ…」

 エドモンドは押し殺すような声でHALに、もう一度訪ねる。

「日本刀を使用した戦闘パターンを脳に投影しただけです」

「脳に…それだけ…」

「そうです…この結果は、マスターの潜在能力が産んだ成果です…素晴らしい能力です」

「……そうか…」

 その夜、それ以上エドモンドが口を開くことは無かった。


 夜が明けて、山を下りる。

 HALの案内に従って無言で歩を進める。

(便利なものだ…)

 なんだかおもしろくないエドモンド、憮然とした表情でHALの後ろを歩く。

「マスターエドモンド、私を日本へ連れて行ってください」

「はっ?」

「日本ですジャパン」

「ジャポンのことか?」

(発音の問題か…)

「私の映像解析をお願いします」

「なに?」

「プロテクトが掛けられているメモリーがあるのです。この内容は私も知りません、このデータのプロテクトを外せる施設が日本にあります」

「なんで俺が?」

「あなたはジェダイではないのですか?」

「俺はそんな者じゃない…なんだジェダイって?」

「JEDI…Japan日本がEndorsement保障するDelivery配達Individual構成員、つまり運び屋です」

「俺はそんな者じゃない! 俺は 米国陸軍 食糧調達部隊 特殊素材調理斑 X-1 通称 吸血部隊(元)の少尉(元)だ…った人だ」

「では、そのライトセイバーレプリカは?」

「ん?これか…ある人から貰った」

「あなたは、その方のパダワンだったのですね」

「パダワン?いや…その人も貰ったと言っていた…確か…」

「そうですか…剣技と能力はJEDI並に優れているのに…勘違いでしたか…」

「そのジェダイってのは何なんだ?」

「宇宙のいかなる場所へも依頼品を運ぶ運び屋の集団です。彼らは下手な武装はせず、ライトセイバー1本で窮地を脱する術を身につけた、多種族混合の剣客集団です」


「なんだソレ?」

 エドモンド…フォースを感じることはできるのか?

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