第23話 話し相手
野宿である…。
そもそも迷っていたのだ、来る時でさえも、帰り道に迷ったとしても、なんら不思議なことではない。
むしろ必然と言えよう。
「便利なライトだ…虫よけにもなるとは、優れものだ…」
野うさぎを仕留めた後、ライトで火を着ける。
そのまま地面に突き刺すと…ライトになり、虫が近づくと、ジッ!と音を立てて焦げ落ちる。
十得ナイフみたいなライトだ。
「サバイバルグッズなのだろうか…」
眠る頃ライトの明かりが弱くなった気がした。
「難点は電池の消耗だけだ…しかも単2とは…」
「ライトセイバー…ジェダイナイツ?」
どこからか声がする…。
落ち着きのある女性の声だ。
「マスター…ジェダイなのですか?」
「俺に言ってるのか?」
「YES…周囲200m圏内に知的生命体はあなただけです」
「俺はエドモンド・ナカムラだ」
「マスターエドモンド…あなたが私のマスターですね」
自然に話してきたので、普通に受け答えしたが…声の主はサッカーボールである。
いや、正確にはサッカーボールではないのだが…。
自立行動・自己学習型・人口AI搭載の球形アンドロイド通称
エドモンドの凄いところは、ソレをサッカーボールと認識しながら、普通に話せるコミュニケーション能力であろう。
思えば緑の子供とも見た目を気にしない大らかさ…彼の度量の深さなのかもしれない。
眠いのだが…HALは、よくしゃべる、隣のボールは、よくしゃべるボールなのである。
やれ宇宙とは…地球とは…ジェダイとか…カエル型の宇宙人とか…寿司・すきやき・芸者…富士マウンテンなど、話題に事欠かないボールである。
いつしか眠りこけるエドモンド。
枕は固い派のエドモンドにとってHALは丁度いい枕でもあった、戯言のBGM付きの…。
暗い山中に、緑の光…吸い寄せられるのは羽虫だけではないようだ。
悪い虫を招く目印にもなっていた。
足音を殺して…数名の訓練された兵士が等間隔でエドモンドを取り囲んでいた。
気づかないほどマヌケではないエドモンド、ある距離からは気づいていた…右手はすでに白雨の柄を握っている。
緊迫した空気のなかで、カチャッと銃器を構える音が合図となった。
体を返し低い姿勢から逆袈裟に一閃、刀を一度鞘に戻し真横に飛び退き、真一文字に一閃。
数秒で2人を大霊界に送り届けるエドモンド。
(後…何人いる…)
「3名の生存を確認…マスターエドモンド」
HALが周囲をサーチした結果をエドモンドへ伝える。
(3人…1人だけ気配を感じない…)
トトトトトトッ!
エドモンドの横を銃弾がかすめた。
光った方向へジグザグに走り込むエドモンド足元で銃弾が弾ける。
転がる様にライトなセイバーを握り、身体を回しながら兵士の腕を斬り落とす。
肘から先の腕が空中で四方へ銃弾を撒き散らしながら地面へ落ちた。
ライトなセイバーを兵士の顔面に突き刺したまま、暗闇に身を潜めるエドモンド。
緑の光に向かって銃弾が飛んでいく、敵の位置を察したエドモンドが落ちた自動小銃を撃ちまくる。
ボスッボスボスッと、くぐもった音でHITを確認したエドモンドが近づくと、兵士は倒れていた。
(最後の1人は…どこだ)
「マスター!後ろです!」
HALの声に前方へ飛びながら身体をひねって後方を確認する。
「お前は…仕事人!」
「顔は覚えてくれてたみたいだな、少尉!」
「すでに少尉ではない!」
悲しい現実を自ら吐露する切なさときたら…もう…。
「なぜ俺を狙う?」
「知れたこと…依頼だ!」
「誰の?」
「お前さんは、軍の機密事項に触れちまったのさ」
「俺は…秘密を知っているのか…軍の?」
さっぱり見当のつかないエドモンドであるのだが…軍はエドモンドの都合など知ったことではないようで…。
ただでさえ追われてるのに、遺物と行動してるエドモンド…機密を引き寄せる男。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます