第19話 フロムジャポン
「死ぬかと思いましたな~ダンナ~」
「幾度か死んだと思ったな…」
「死なないもんですな~ダンナ~」
「死ねないもんだな…意外と…」
艦上で日光浴を愉しむエドモンド少尉。
レモネードが美味しいアフタヌーンを満喫している。
あれから4日…現在、USAへ帰路の最中である。
「少尉、運が良かったな」
温泉まんじゅうを差し出しながら、艦長が話しかけてきた。
「救出ありがとうございます中佐」
海パンで敬礼するエドモンド少尉。
「かしこまらんでいいぞ、少尉…X-1の少尉殿だ…我々より2階級うえの特権が与えられているエリートではないか」
「恐縮であります」
「
「お恥ずかしい限りで…ところで中佐、この艦は、任務の帰路とのことですが、任務とは?」
「あぁ…ジャポンへ行っていたのだよ…」
「ジャポン…ですか…」
「そうだ…一般には伝説の島国としてあるが、ジャポンは実在する。崩壊を免れた島国だからな…旧世界の文明が色濃く残る稀有な国さ…」
「行き来しているとは…知りませんでした」
♨マークの饅頭を繁々と眺めながらエドモンド少尉が難しい顔をする。
「少尉の剣も、ジャポン製なのだろ?」
「はい…代々受け継がれた剣で、ニホントウと呼びます」
「うん…銃弾をも切り裂くのだそうだな…」
「私の腕では、無理ですが…」
「ハハハ、謙遜するな、相当の腕前と聞いているよ」
「いえ…鉄板も切り裂けませんよ、自分では…」
「一度見てみたいものだな。まぁ大陸までは休暇だと思って、くつろいでくれ少尉」
「はっ!ありがとうございます」
この時代を生きる人類は強い…数日前まで、超巨大爬虫類の争いに巻き込まれていたとは思えないほどのくつろぎよう…緩みきっている。
緩みきったまま、本国へ戻ったエドモンド少尉と骨董品屋のオヤジ。
オヤジなんて倉庫に置いてあった温泉まんじゅうを、しっかり拝借して、街まで送ってもらう。
気のいい二等兵に『骨董品グラスホッパー』まで送ってもらい、店内でオヤジとお茶を飲む。
「いや~良い船旅でしたな、ダンナ」
「一応…任務なんだが…お土産貰うとな~楽しかったな~」
死にかけたことなど、ほぼ忘れかけている。
温泉まんじゅうを一つ手に取るエドモンド少尉。
「なんだコレ?」
「これは!ダンナ!ジャポンの通貨ですぜ」
「通貨?
「えぇ…たしか小判とかいう
なぜ饅頭の下に小判が…。
謎めくジャポン文化。
「なんだか…ヤバイものを持ってきてしまったような…気がしやす…一瞬、喜んじゃいましたが」
「オヤジ…オマエって奴はー!」
「ダンナ、不可抗力ですぜ」
「どうすんだコレ?今さら返せねぇぞ!」
「もともと…ちょっと拝借してきたものですからね…返すってのも違うような~」
「俺は知らない…見てない…食べてない」
「食べてますよ…ダンナ、今まさに…言いにくいんですが…ダンナから上手いこと言って返品していただくわけには~」
「参らない」
「参りませんかね?」
「参らねェよ!」
「絶対ヤバイ金だって…解るんですよ!長年の勘が囁くんです、ヤバイ金だって」
「それくらい、俺だって解る」
と言いながらも、饅頭を食う2人。
「いや~…ぜんぶで12枚…きっちり敷かれてましたな~」
「隙間なく並べてあったな~…なんか気持ち悪いよ…俺」
「饅頭6個食べましたからね~」
「美味しかったかい…饅頭?」
ドアの方から男の声がする…。
「いらっしゃい!いいもの入荷してるよジャポンの通貨、1枚どうだい」
「1ダースだ…12枚すべて頂く…そういう依頼なんでね」
言うが早い…オヤジの眼前に刃が振り下ろされる。
カィーン!
硬い金属音が響く、男の刃を受け止めたのは、エドモンド少尉の愛刀『白雨』。
「日本刀…」
男が呟く…。
エドモンド少尉が受け止めた刃は…まぎれもない日本刀。
男が、少し驚いたようにエドモンド少尉を見据える。
「貴様もな…」
エドモンド少尉が男の刀を払い2人は対峙した…。
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