第17話 生きてるだけで丸儲け

「ダンナ…自慢の居合でナントカなりませんかね~」

「オヤジ…ナントカって、どういうことだ…」

「ですから…バカデカいトカゲを斬るとか…カメの首を刎ねるとか…ズバッと解決的な…」

「ズバッと、どう解決するんだ?」


 あんなもの…人間の手に負えるわけないだろう…。

 エドモンド少尉は心底そう思った。

 明らかに自分の体積を超えたメガ盛り丼を出されたフードファイターの気持ちだ。

(馬鹿じゃないの…)

 正直な気持ちである。


 仮にだ…もし、刀で傷を負わせることが出来たとしても…蚊に刺された程度に違いないくらいの体積差があるのだ。

 イラッとさせるくらいで、エドモンド少尉達にメリットは、まったくあるまい。


 もう…観ていることしかできないのだ。

 ライブで…最前列かぶりつきで…。


 もう…近づくと、黒い壁にしか見えないトカゲ。

「ダンナ…地面が…傾いてませんかーーーーー」

 オヤジが転がって後方の木に引っ掛かる。


 経験したことがあるだろうか?

 想像していただきたい。

 アナタの足元が90度傾くのだ…。


 エドモンド少尉は木にしがみ付いた。


 どうやらカメが立ち上がったらしい。

「2足歩行できるのか…このカメ…こんなカメ見たことない…」


 小島だと思っていたのは甲羅。

 これだけでも見たことないのに…立ち上がるカメって…どっちかひとつに絞ってもらいたいものだ。

「火まで噴きやがる…」

 もう個性が多すぎて…処理しきれない。


 火と稲妻で牽制しあうトカゲとカメ…中距離戦ではお互いに致命打には至らないようだ…。

 しばしの沈黙の後、トカゲが吠えた…。

 ANGYAAAAAAAAAAA!!!

 応えるようにカメも吠える。

 UGAAAAAAAAAAAAA!!!

「カメって鳴くんですね~ダンナ…」

「そうらしいな…こんなデカい声を出すなんてなぁ~今まで知らなかったよ」

 木に腰かけて、ロープで身体を固定した2人。


 大きく揺れたと思ったら…がっぷりと組み合っているトカゲとカメ。


(死ぬかもしれない…)

 エドモンド少尉が、ようやく…『死』を意識したころ…。

 天空から金色のナニカが飛来する…。

 金色のナニカが羽をばたつかせると、台風のような強風が2人を襲う。


「ダンナ…増えましたぜ…なんでしょうねアレは…トカゲとニワトリを足したような…」

「オヤジ…アレはトカゲでもニワトリでもないな…まずフォルムの問題だろ…頭が3つ付いてる…あんな生き物見たことない…」


 空から飛来したナニカは金色の身体に首が3つ付いていた。


「もう…どうにでもしてくれ…」

 エドモンド少尉は『死』すら諦めた…。



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