第11話 チョコとバナナで縁日で
ツアー参加から無事帰還したエドモンド少尉。
蒸し暑い夜、溶かしたチョコをバナナに塗って冷蔵庫で冷やして食べる。
「コレは美味い」
緑色の子供は元気だろうか?
ふと思い出し、人差し指を月にかざしてみる。
光るわけもないのだが、なぜか物悲しくなるのである。
指に付いたバナナとチョコ、美味しいのだが上手に手を汚さずに食べる方法は無いものだろうか?
アレコレと考えている。
真剣に考える
1週間後、軍の宿舎を一部開放しての縁日があるのだ。
『食糧調達部隊 特殊素材調理斑 X-1』普段の活動を広く認知してもらう格好の場でもある。
エドモンド少尉は、溶かしたチョコに様々な食材を付けて食べさせる屋台を用意している。
冷しバナナはその目玉となる食材なのだ。
「バナナが一番相性がいい」
エドモンド少尉の主観ではあるが、なんとなく見た目もしっくりとくるのだ。
しかし提供するにあたり、どうにも気になる問題がある。
バナナの皮を剥いて、チョコに浸けるのが難しいのである。
バナナをひっくり返すと皮がベローンと垂れ下がる。
そこで皮を剥いたバナナにチョコをかけてみたのだが、これだと手にチョコが付く。
いい案はないものかと頭を悩ませているのである。
蟻が
黄色い三日月がバナナに見えてきた頃、窓を叩く音がする。
「ん?なんだ…」
窓を開けると、緑色の細長い指が…。
「お~ぅ、緑の子供」
昨日振りである。
相変わらず会話は成立しないが、互いに敵意はないことは解る。
そして指が触れ合えば光る。
緑の子供を部屋に入れるエドモンド少尉、どうも軍宿舎ということを忘れてる。
友達をアパートに招く感覚だ。
緑の子供が部屋を見回す、バナナとチョコが散乱する部屋、エドモンド少尉がバナナを1本差し出すと、嬉しそうに皮を剥く緑の子供。
そして……その手があったか!
緑の子供はバナナを割りばしに刺しチョコを付けて食べ始めたのだ。
「これはいい……めっちゃ売りやすいじゃないですか」
思わず敬語まじりで緑の子供の手を握る。
2人はチョコバナナを片手に月を眺める。
緑の子供が何事か身振り手振りで、星を指したり月を指したりしながらエドモンド少尉に話しているのだが……。
うんうんと笑顔で頷きながらも
(ごめん…全然解んない……)
翌日、目が覚めると緑の子供はいなかった。
どうやら帰ったらしい。
部屋に見慣れない青い玉が転がっている。
地球儀である。
だが…エドモンド少尉には解らない。
この時代の地球の姿は、海の向こうは滝となって落ちているはずなのだ。
象と亀に支えられる世界、それが地球だ。
縁日は大盛況であった。
『食糧調達部隊 特殊素材調理斑 X-1』の活動成果を屋台で披露する大胆さ。
うな重というか、どじょう飯も振る舞われる。
なにより2年間圧倒的な人気で揺るぎない売上首位をキープしている焼き物屋台。
焼き物3点セット屋台、たこ焼き・お好み焼き・焼きそばという屋台の定番を1プレートに、まとめた屋台。
鉄板+ソース=無敵である。
エドモンド少尉は密かに今年、首位を狙っている。
そう『チョコバナナ』で。
「時代を変える…バナナでね」
結果…2位でした…。
負けたのだ…『新』焼き物3点セットに。
目玉焼きを乗せやがっただとー!
焼きそばに目玉焼きって…それだけで最強だろ!
ていうか、4点セットだろソレ。
「秋祭りは勝つ!」
エドモンド少尉の手にはバナナがしっかり握られていた。
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