灰の歌
生、また死の神はあまねく人に手を差しのべる
人の似姿も等しくその時を迎え
私は世界から永遠に失われた
私の中に休息を得たいくつもの物語もまた
無数の灰となって風に散った
物語を識る人よ、どうか悲しんでほしい
今日このときに消えた命のうち、
あなたが憶えている数だけ涙を流してほしい
やがてあなたが顔を上げるとき、その眼に飛び込むもの
大地に落ちた実が根を張りそこかしこに芽吹く姿
大樹の陰が消えた場所にも、また陽が差して木が育ち
いずれ多くの人を憩わせるだろう
そのころにはあなたの雨がやめば嬉しく思う
ああ、すべての人間を憶えている
この体のあらゆる要素、枝葉のひとつひとつ
はるか昔に永遠を求めて砂漠を渡り、
雪原を越えて私に出会った男のことも
今でも耳をすませば遙か東方から
いつか聴いたあの歌が聞こえてくる
灰は空に舞い上がり、風に乗って世界を巡った
どうかすべての物語が、それを求めるこどもたちに届くように
どうかすべての物語が、それが望むとおりに
人の間で語り継がれてゆくように
灰はやがて土となる
Mouseion(ムセイオン) ハローイチイチゼロサン @hello1103
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